【コウゾウノハナシvol.002】 〜構造デザインのススメ〜

20131203

建築デザインと構造(2)

構造デザインのススメ


20131203 構造デザインとは、自由に発想を広げ、その建築にもっとも適合する材料を選定し、空間構成にもっとも融合した架構システムを提案する創造的な仕事である。ここでは、難しい理論や数値解析はほとんど必要としない。必要なのは力学的な原理と基礎的な工学の知識、そして建築に対する知識と経験である。手近にあるもので構造デザインを説明するとき、椅子はよい例題となる。椅子がもつ機能は「座る」という単純なものだが、人の重量を支えるための構造が必要だ。支えるといっても人には動きがあり、悪いくせのある人は、椅子の後方の支えにすべての重みをかけたりする。また貧乏ゆすりをして振動させて、水平の動きを加える。地震や風が建築に加える動きと同じような現象が起きる。なぜ、椅子は4本足なのか、もっとも合理的に考えれば3本足でもよいと思われるが・・・。そういった現象にどう対処するのか、おそらくここに計算はないが、力学的な原理の知識と経験が必要だ。素晴らしいデザインの椅子もすぐ壊れてしまってはなにもならない。そこにはデザインとストラクチャーをどう融合させるかという思考が存在する。力学的にも合理性があり、デザインとしても美しいシステムとプロポーションを立案することが「構造デザイン」そのものである。これからは理性の時代だといわれ、技術と経済性、そして環境を配慮したデザインを重視する気運が見受けられる。

 一方、極度に進行する情報化社会や環境問題は、建築に快適さと自然への優しさを求めている。

 次世代に向けて建築はどのような方向に進むのであろうか。
おそらく、社会性、機能性、技術性、そして芸術性が理性的にインテグレートするという方向に進むことになろう(私たち構造家はそう望んでいる。)建築家たちは美的な追求とは別に、機能上や環境上の新たな発見を、現代社会の多様化の波の中で模索している。建築の機能や形態に大きくかかわっていく構造にとって、これまでの禁欲の時代(安全とコストだけの時代)から解き放たれる絶好の機会だと思う。

 構造の美しさが価値のあるものとして認められる時代になりつつある。デザインと技術の融合が建築にとって重大なテーマとなり、美しさや快適さと技術をどう結びつけ経済的にバランスさせるか、構造には技術的な論理性を多少犠牲にしても美しさや快適性を達成するといった柔軟な姿勢が求められている。構造の興味深いところはそこにあって、構造的な美しさがデザイン的に価値のあるものと認められているか否かは、構造家たちの力量にかかっている。

これまで自分勝手な合理性の世界にいたエンジニアたちが構造の「アート」という付加価値を目に向け、建築の空間構成を担う一員として建築雑誌の前面に名前が載るようになれば、学生たちの「構造離れ」の流れを止める一助になるかもしれない。


 

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