【コウゾウノハナシvol.005】 〜木の復権〜

20140114

建築デザインと構造(5)

木の復権


20140114

近ごろ、建築界で木が再び注目されてきている。「なぜ、今また木造なのか」。貿易摩擦による外国からの圧力。戦後の植林による国産木材供給能力の増大という国内事情などの政治背景によって建築基準法が改正され、大規模木造建築物が可能になったことが、直接的な要因であろう。
約30年のあいだ、建築物の不燃化施策によって、木造が置き去りにされてきたのは、木が「燃える」ことにあった。
北米では、ご存知の通り木材資源が豊富で、どうしたら有効に木を活用できるかを、長い間研究してきた。大断面の木は、火災時に表面が炭化して内部は燃えないこと(燃えしろ設計法)、木造の構造部材を厚手のプラスターボードで覆えば内部からの火災に対処できるという考え方(木造耐火被覆法)で、防災面をクリアしている。
アメリカは、この考え方で、木造でも十分耐火性能を有する大規模な構造ができるとして、日本政府に法改正を求めたのである。
燃えしろ設計法は、工業化された集成材輸出を促進し、木造耐火被覆法は日本に木造3階建ての共同住宅を普及させようと意図した技術的な方法である。
このような政治的な背景のほかに「より人間の存在に重点をおいた情緒と完成」が求められる社会的背景、そして、日本人の木に対する愛着を感じとった建築家たちがスチールやコンクリートといった冷たい素材から木のもつ暖かさ(温もり)、柔らかさに注目し始めたからであろう。
構造の視点から、木という素材を見ると、軽くて繊維方向には強いが、繊維と直角方向に引張やせん断を受けるともろく、横方向にはめり込みが生じやすい性質をもつ、極端に異方性のある欠点の多い材料である。しかし、品質管理された引き板を接着した集成材には、これまで欠点とされた品質のバラツキ、収縮、割れを大幅に改善し、大断面材や長尺材を自由に作りだすことができる工業製品として位置づけられた構造部材である。また、デザイン的にも人間にやさしい、温もりのある新しい空間を創出できる材料である。
しかしながら、集成材といえども、先にの述べた木材特有の性質は変わっていない。木を用いた構造を試みる場合、その性質の長所を活かした使い方と接合のディテールが構造的な課題となるが、架構のデザインとして見せる「構造デザイン」を展開していく上で、非常に可能性のある材料である。
デザイン的にも、これまでにない新しい建築空間を創出できるのではなかろうか。きっと今までと違った世界が見えるはず…………。


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