~メンテナンスできない家は築年数で評価される~【3匹の子ぶたvol.039】

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第2章 あなたの家の値段はいくらですか?


あなたの家の値段はいくらですか?(6

~メンテナンスできない家は築年数で評価される~

 

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京都の町並みを見たことがあるだろうか。
そこでは「築何年ですか?」という問いかけは、尊敬の念を表す質問となる。

古くからある伝統を守り、そこで丁寧に生活している人々に我々は文化を感じ、
また、美しさを感じる。

一〇〇年以上大事に保存し住みつづける人々へ畏敬の念さえ感じるのは、
私だけではないはずだ。 一方、東京で築年数何年ですか?

という質問は、家の価値がないことを確かめるための質問となる。
古い家は価値がない。しかし、両者を比較してみてほしい。

古い家に価値がないのではなく、
最初からメンテナンスできない家を建ててしまった東京の家に問題がある。

経年劣化がはっきりとしてしまうプラスチックやセメントの外壁は、
新しいものと古いものとでは違いがはっきりとしている。

古い町並みを構成する漆喰の壁や羽目板の壁は、
古くなると落ち着いて味が出てくる。

大量生産でつくられた塩化ビニール製のドアや建具は古くなると黒ずんできて嫌な感じになるが、
本物の木でつくられた京の建具は、古くなっても美しい。

築年数はそれほど大きな問題だろうか?
五年前に建てられた家と一〇年前に建てられた家にそんなに違いがあるとは思えない。
しかし、日本の不動産評価の方程式では約三〇%の評価の違いが出る。

この評価式が諸悪の根源である。住宅の耐久性の算定や、
構造計算をすることで本当の価値を測ってこなかった日本の木造住宅業界は、
築年数で判断することが公平かつ簡易な方法としてしまった。

住宅を「住まい」として正しく評価できない購入者と不動産業者にとって、
この方程式は便利な言い訳となっているのだ。 不動産鑑定の方程式には、
もう一つおもしろい指標がある。「屋根・外壁の仕上げ」である。

ここでは「Aランク=タイル張り・レンガ張り」「Bランク=セメント系サイディング」
「Cランク=モルタル拭き付け・その他」となっている。

木造住宅なのに外壁だけでもタイルやレンガのおうちは長持ちする、という誤解がここにある。
ここでも「レンガが一番よい」という三匹の子ぶたの誤解のようなことが起こっているわけだ。

外壁を重くすると、同じ構造ならば耐震性は落ちてしまうという物理的根拠を知っていれば、
もう少し違う評価ができるはずなのに、
日本の家はメンテナンスしないことが大前提となっているために、
メンテナンスが必要な外壁材は、それだけで駄目なのだ。

アメリカでは外壁は木製のサイディング(外壁材)を使用することが多い。
なぜならば、彼らは数年に一度ずつペンキ塗装する。
そのことで耐久性を維持し、美観も新築時と同じに保つことができるからである。

アメリカでも住宅を販売する際はもちろん築年数を正しく表示して販売することになっているが、
彼らはどんな家でも住まい手が愛情をかけている家は長持ちするということをよく知っている。

新築時に無駄なお金をかけても、手入れできない家は高く売れない。
だから、塗装をかけることが困難な日本のようなタイル張りの家はほとんどないのである。

また、アメリカでは、日本のように合板に木目の薄い板やビニールを張ったフロアは
ほとんど販売されていない。床は無垢の板(本物)かカーペットである。

理由は、本当の木でなければメンテナンスができないからだ。

本当の木の床は古くなったら表面を削り(アメリカでは大きな掃除機のようなサンダーで削る)、
ワックスを塗ることで新品同様に変えることができるが、
ビニールや薄い板を貼った合板は張り替えなければならなくなってしまうため、
かえって高くつく。フロアを張り替えたことがある人ならご存知だと思うが、
フロアを張り替えると壁も張り替えなければならなくなるから、
結局大規模なリフォーム工事となってしまうのだ。 現在の日本の家づくりは、
基本的な部分を大きく取り違えてきた。伝統的な日本の家には、
メンテナンスできないプラスチック製品(塩ビ製の建材類など)は一切使用していない。

戦後の大量生産・大量消費のなかで、トタン板に木目の塗装をしてみたり、
塩化ビニールに木目の塗装を施してみたり、
その場限りの材料をふんだんに使ってきてしまった歴史があり、
いまだにその呪縛から抜け出していないのが日本の家なのだ。

今日も新築工事で塩化ビニール製の建材が使われている。

 


このコラムは、2007年に発刊された「家、三匹の子ぶたが間違っていたこと」【ダイヤモンド社】の内容から、 弊社代表取締役田鎖郁男の記事を抜粋して掲載しています。詳細については、書籍をご覧下さい。 ………………………………………………………………………………………………………………………………

sanbiki「家、三匹の子ぶたが間違っていたこと」 田鎖郁男・金谷年展(共著)

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