~「質より量」を目指してきた「持ち家政策」~【3匹の子ぶたvol.040】

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第2章 あなたの家の値段はいくらですか?


あなたの家の値段はいくらですか?(7

「質より量」を目指してきた「持ち家政策」

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ある日突然、あったはずの家がきれいになくなってしまい、更地が売りに出される。

しばらくすると新しい家やビルが建ちはじめ、
いつしかそこにどんな家があったのかを思い出すこともできなくなってしまう……。
容赦なくスクラップ&ビルドが繰り返されるこの国はどうなっていくのだろう……。

この短命な日本の木造住宅を欧米並みに資産化しようというと、
「欧米の住宅は耐久性のあるレンガや鉄筋コンクリートづくりが多いのに対して、
日本は木造だからそんなことはできない」という人がいるかもしれない。

しかし、それは違う。アメリカの家は、実はほとんどが木造住宅なのである。

では、なぜ日本の住宅は短命なのか? 短命の家ばかりになってしまったのは、
いまから五〇年ほど前、第二次世界大戦後の政策に原因がある。

戦争によってほとんどの都市が空襲で焼け、全国で五分の一ぐらいの住宅が失われた。

そこに外地に出かけていた兵士や一般市民が大量に帰国したため(その数六〇〇万人といわれている)、
終戦直後は四二〇万戸の住宅が不足したといわれている。

住宅の整備は急務だったが、財政が破綻状態にあった政府には解決することができなかった。
そこで一九五〇年代以降に推進されたのが「持ち家政策」である。

所得税減税や住宅金融公庫の長期低利融資で持ち家を援助する一方で、
自治体が建設する低所得者向けの公営賃貸住宅とサラリーマン向けの公団住宅を供給したのである。

端的にいえば、どんな家でもいい、「雨露がしのげて寝るところが確保できる家」が必要だったのだ。

一九五〇年に建築基準法が制定されたときに「在来木造構造」の記述がなかったのは、
いち早く国民に住居を与えなければならないからでもあった。

耐震性なんていっている暇もなかったのである。

まさに安全性よりも住宅の確保を優先したのだ。あまり知られていないが、
いまでも木造住宅を工事するのに資格はいらない。大工さんには国家資格がないし、
設計業務も一〇〇平方メートル以下の二階建て木造住宅なら建築士の資格もいらない。

これも当時の法律の名残である。 その後も基準がないままつくられた木造住宅は、
住宅金融公庫の仕様書によってのみルールを与えられていた。

「融資を受けるには、このルールを守った住宅にしてください」ということだ。
日本の住宅の安全性は、金融機関のルールによってのみ成り立っていたのである。

一時期「日本の住宅はウサギ小屋」と欧米諸国から揶揄されたこともあったが、
それは家の大きさだけでなく、
住宅のつくり方がウサギ小屋をつくるかのように粗雑だったからではないかと思う。

現在では日本の住まいは欧米並みの広さになったが、質のほうはどうであろうか。
もう一つ、日本の住宅が短命な理由としては、日本人の核家族化とライフスタイルの変化もあげられると思う。

かつて、日本の住宅が田の字の和室群で成り立っていた時代は、襖で仕切り、
襖を取り外すことで多様な可変性を持ち合わせていた。

もともと和室はフレキシブルな空間だから、家族構成の変化に耐えうるつくりだったのだ。
しかし、高度経済成長期以降に日本人の住まい方は劇的に変わった。
生涯のなかでも家族数がピークの時期に住宅を新築し、子どもに専用の居室を与えるようになった。

敷地の狭さにもかかわらず浸透していった洋室志向、個室志向によって、
壁で細かく仕切られた一室一室は一つの用途でしか使えなくなった。

そして、その壁には筋交いが入れられた。耐震性を考え、よかれと思って筋交いを入れたわけだが、
それは将来、間取りを変えるために間仕切りを壊すことをまったく想定していなかった。

家族構成の変化、生活様式の変化が生じたとき、間取りを変えていくことが困難となってしまった。
私はこのことが日本の住宅の寿命を短くする一因になったと考えている。
戦前に建築された住宅の寿命のほうが長いことからも、それはうかがえるのではないだろうか。


このコラムは、2007年に発刊された「家、三匹の子ぶたが間違っていたこと」【ダイヤモンド社】の内容から、 弊社代表取締役田鎖郁男の記事を抜粋して掲載しています。詳細については、書籍をご覧下さい。 ………………………………………………………………………………………………………………………………

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