~フランク・ロイド・ライトの言葉~【3匹の子ぶたvol.061】

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第3章 つくる住宅から、しつらえる住まいへ


つくる住宅から、しつらえる住まいへ(1

フランク・ロイド・ライトの言葉

住宅を取り巻く技術は、ここ三〇年ほどの間に飛躍的に向上した。
戦後のバラック、文化住宅……三〇年前のプレハブ住宅といったら、
本当に鉄板で囲われた箱を組み合わせたものだったから、
夏は暑く冬は寒かった。
しかし、見るからにプラスチックだったドアや造作材も本物の木と、
一見、見分けがつかなくなり、プレハブと大工さんがつくった木造住宅も見分けがつかなくなった。
木造住宅も大きな進歩を遂げている。隙間風に悩む家はなく、断熱性能も飛躍的に性能が向上した。
設備の進歩もすさまじく、風呂桶にお湯が満タンになるとチャイムで知らせてくれるようになり、
ボタン一つでお風呂のお湯が沸くようになった。
キッチンはIHクッキングヒーターが全盛になり、
火を使わないで料理ができるという、昔の人には信じられないようなことになっている。
さらに、屋根の上のソーラーパネルで発電できて、電気代が節約できるようにもなった。
二〇年間住宅業界にいて、いま改めて振り返ってみると、住宅の性能が向上したことは認めざるを得ない。
しかし「新しい家を購入した人たちは、二〇年前より幸せになったのだろうか?」
という疑問もまた抱かざるを得ないのだ。
近代建築の三大巨匠の一人、フランク・ロイド・ライトにこんな言葉がある。
「住宅の本質は壁と屋根にあるのではなく、その生活の営みにある」(『ライトの生涯』彰国社)
一八九〇年代から一九五〇年代にかけて活躍したライトは、
二〇世紀を代表するアメリカの建築家として有名である。
一九一六年から五年間、旧帝国ホテルの建築のために日本にも滞在したことがあり、
ライトが目指した自然と融合する建築の考え方は日本人にもっとも愛される建築スタイルとして定着し、
現在でもたくさんのライト風の住宅や建物が建てられつづけている。
そのライトが、自分の弟子たちが集う場所(タリアセンと呼ばれる)の入り口に彫り、
常に忘れることがないようにしていたのがこの言葉である。私自身もその場所に立ち、
ライトの弟子に同じように教えられた。
ライトのこの言葉は、日本美術院の創設者であり、
ボストン美術館東洋部長を務めた岡倉天心の『茶の本』からの引用という説がある。
過去、日本の家づくりは世界から尊敬され、世界的な建築家からも尊敬されていた時代があったのだ。
ところが、現在は住宅を建てるときに設備や性能ばかりに目をやってしまい、
本来の目的を失ってしまったのではないかとも思う。
ライトの言葉は「家とは、そこに住むあなたとあなたの家族の生活を表現していくことである」
ということではないか。 そうなのだ。住宅の本質は、人が幸せに暮らすことを目的としている。
その空間でどのようにすごし、どう暮らすかが最大のテーマなのだ。
耐震性や資産価値はあくまでもそのベースとなる前提に過ぎない。
では、私たちの住宅の空間は豊かになっているのだろうか?


このコラムは、2007年に発刊された「家、三匹の子ぶたが間違っていたこと」【ダイヤモンド社】の内容から、 弊社代表取締役田鎖郁男の記事を抜粋して掲載しています。詳細については、書籍をご覧下さい。 ………………………………………………………………………………………………………………………………

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