~住宅におけるクオリティ・オブ・ライフ~【3匹の子ぶたvol.063】

~住宅におけるクオリティ・オブ・ライフ~【3匹の子ぶたvol.063】

第3章 つくる住宅から、しつらえる住まいへ


つくる住宅から、しつらえる住まいへ(2

住宅におけるクオリティ・オブ・ライフ

人々の生活を物質的な面から量的にのみ捉えるのではなく,
精神的な豊かさや満足度も含めて質的に捉える考え方がある。

「クオリティ・オブ・ライフ(Quality of Life)」といい、
「生命の質」「生活の質」「生きることの質」などと訳され、QOLともいわれる。

このクオリティ・オブ・ライフという言葉にあまりなじみのない方は多いと思うが、この言葉は医療や福祉の分野では非常に重視されている言葉である。医学の進歩は二〇世紀以降目覚ましい発展を遂げた。
昔なら絶命してしまうほどの重傷の患者に対しても、現代の医学は、延命させることが可能になった。
「医療は人を見るものであり、医学は病気を見るものだとする考え方」があるが、医療の科学的側面が強くなると、
「病気は治ったが患者は死んだ」という状態が問題となってきた。

これに対して、「患者自身がより尊厳を保つことができるような生活を実現できるよう、患者に援助を与えることが必要」という考え方が生じたのである。
これを「QOL(生活の質)を維持する、向上させる」などというようになった。
突然、医学の話が出てきて突拍子もないことに聞こえるかもしれないが、
私が毎年数百件の新築住宅を見ているなかで、
家づくりにもっとも必要なコンセプトであると感じた言葉がQOLなのである。
日本の住宅業界も医学界と同じように、
クオリティ・オブ・ライフに対する見識を深める時期に来ているのだと考えるからだ。

すでに書いたように、日本の住宅はいま「量から質」への転換の時期に来ている。
しかし、そこでいう「質」とは何かという議論はそれほど行なわれているわけではない。
量から質を、単純に「ローコスト住宅から高級住宅へ」と思っている業界関係者もいるくらいだ。
私は住宅に求められている「質」とは、クオリティ・オブ・ライフのことではないかと考えている。
テレビや映画を通して入ってきた暖炉の上に家族の写真を並べ、大きいソファに座ってコーヒーを飲む、
芝生の庭、ピックアップトラックとキャデラックの二台の車があるといったアメリカの生活を、
私たち日本人は豊かな生活だと思い込んできた。
いまだにそうした豊かな生活を小さな家のなかで追求しつづけている人たちもいる。
しかし、むしろこれからの豊かさは、アメリカ的な物質至上主義の世界から、
日本人がいにしえより持ちつづけてきた美意識─たぶんそれがライトの建築にも流れている─を取り戻すことではないかと思うからだ。

 

 


このコラムは、2007年に発刊された「家、三匹の子ぶたが間違っていたこと」【ダイヤモンド社】の内容から、 弊社代表取締役田鎖郁男の記事を抜粋して掲載しています。詳細については、書籍をご覧下さい。 ………………………………………………………………………………………………………………………………

sanbiki「家、三匹の子ぶたが間違っていたこと」 田鎖郁男・金谷年展(共著)

大地震のたびに繰り返される悲劇の本当の原因は何か?本書に、その答えのすべてがある。「日本の二階建て木造住宅の97%以上が構造計算されていない」という事実を知っていますか?“家”の考え方が180°変わる目からウロコの書。 単行本 213ページ 発刊:2007年11月 発行:ダイヤモンド社 →書籍のご購入はこちらから