~サッカーの精神を持った建築業者~【3匹の子ぶたvol.069】

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第3章 つくる住宅から、しつらえる住まいへ


サッカーの精神を持った建築業者

耐震偽装事件のさなか、姉歯元建築士は善意で成り立っていた建築業界のルールを悪用したという批判があった。
そのため建築基準法は「性善説」から「性悪説」に変わったともいわれている。
性悪説になったことで、これまでしていなかったことをしなければならなくなったため、
全体が底上げされることは間違いないし、悪徳業者が減ることも期待される。
しかし、最低のルールを守っていればそれでいいと考えてきた業者と組んでも、本当によい家づくりはできないだろう。
家づくりの舞台では、ルール(基準法)にないルール(規範)を持つことが不可欠である。
それは私に昔教えられたサッカーの精神を思い起こさせる。
ご存じのように、サッカーのルールは競技場やボール、競技者の数、競技時間、反則の種類など17しかない。
ゲームをするための最低限の規則だけだ。

だから、サッカー選手にとっていちばん大切なことは18番目のルール「紳士たれ」ということ。
言い換えれば「フェアであること」だといわれている。ルールブックにはなくても非紳士的行為は罰則がある。
「激しいプレー」と「乱暴なプレー」の違いはわかる、というのがサッカーの精神だ。
だからこそ「サッカーは子どもを大人にし、大人を紳士にする」といわれるのである。
この国と業界は、悲しいことだが事件が起こるたびに法律が増え、罰則が決まると途端に厳しくなるのが常である。
人間として「フェアであること」などどこかに忘れてしまったかのようだ。
こんなとき、私は昔読んだドストエフスキーの小説『罪と罰』を思い出す。

罪とは法律に違反することなのか?
罰とは懲役や罰金のことなのか?
罪と罰は決められないと守れない法律のことではなく、もっと私たちの内面にあるもの、
たとえば「施主のために安全な家をつくること」ではないのだろうか?
それは青臭いことなのだろうか?

たとえ「建築基準法」になくても、自分が建てた家に住む人たちの安全と安心を考えて家を建てる人を、
重量木骨の家の会では「プレミアムパートナー」と呼んでいる。
いわば、自主的に・余計なこと・をやる工務店である。
それは決して青臭いことではない。
「プレミアムパートナー」は単に「よいつくり手」の集まりであるというだけはなく、
「よいつくり手」でありつづけられるような制度設計、ユーザーから見ても「よいつくり手」であることを保障する仕組み(規約)をつくっている。
プレミアムパートナーの三つの義務
このプレミアムパートナーが本当の意味で「よいつくり手」であることは、
以下の三つの義務が課せられていることからも証明できると思う。
・第三者検査をいつでも100%受け入れること
・構造計算を全棟で行なっていること
・「重量木骨の家」の保証制度を必ず利用すること 第三者検査をいつでも受ける用意をしているというのは、大変勇気がいることである。

欠陥住宅がはびこっている昨今、まだまだ一般的とはいえないが、住宅インスペクターを雇って建築中の自宅の検査を依頼する施主が増えている。
しかし、こうした検査は、普通の工務店も、大工さんも、ハウスメーカーであっても嫌がる。
アメリカでは建築主に雇われた建物の施工状態を検査する建築専門家を置くことが法律で義務づけられているが、
そうした制度がない日本では、不正をしていなくても職人としての誇りを傷つけられたような気になるし、自分の職場に他人に土足で踏み込まれることを嫌うからだ。
しかし、プレミアムパートナーはいつでも外部の検査を受け入れなければならない。
受け入れなくてもほとんどの業者は不正をしないが、いつでも受け入れなければならないという制度によって保証されているのである。
さらに、「構造検査」を自主的に行ない、構造検査報告書の審査を受け、その性能報告書は住み手(ユーザー)に届けるようにもなっている。
「重量木骨の家の会」のネットワークは、地域工務店の社員の技術研修や情報交換の場にもなっているが、
この仕組みは阪神淡路大震災後に業界内で指摘された「構造や木材に対する施工者の知識が不足している」という反省から考えられたものであるという。
こうした技術者のなかから、専門的な知識と経験をもとに、
ユーザーそれぞれが求める欲求に導いてくれる家づくりのプロフェッショナルをプレミアムパートナーと呼んでいるのだ。

 

sanbiki「家、三匹の子ぶたが間違っていたこと」 田鎖郁男・金谷年展(共著)

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