~ あなたの近くで家を守るパートナー「家守り」~【3匹の子ぶたvol.071】

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第3章 つくる住宅から、しつらえる住まいへ


あなたの近くで家を守るパートナー「家守り」

家を資産に考えるとき、大切なのはメンテナンスであることは、第2章で触れたとおりである。家はできたときが終わりではない。
その後も細かい修理や改修が必要になる。
窓の位置やちょっとした造作の改修、家族の変化による間取りの変更などなど細々としたメンテナンスが必要になる。
それを担うのは設計時から一番よくその家のことを知っている人が手を入れるべきだろう。
ちょっと病気になったからと大病院に行って、そのたびに違う先生にかかるのではなく、近所のホームドクターにかかるようなものだ。

私たちは100年、200年も受け継がれる高い価値のある家をつくりたいと考えている。
そのためには家をつくるだけではなく、家を守り、育てていく仕組みがなければならない。
ちょうど1300年前の法隆寺がいまも偉容を誇っているのが、たくさんの宮大工の手によって適切な補修・修理が施されてきたからであるように、あなたの家をずっと見守ってくれる人が必要なのである。
100年間、あるいはその家が壊れて完全に利用できない状態になるまで、誰かが直したり保証したり、維持する仕組みだ。
手を入れるから機能が維持でき、住みやすくなる。
保証するから安心して住み、他人に売買できる。
保証があるから買う人は安心して高く買える。
そうなるには、あなたの家ができてから、いままでの情報が必要になる。
家の図面、メンテナンスの履歴……あなたの家の情報が蓄積された「カルテ」があるからこそ、その家に適切なアドバイスができる。
その役割を担う人が必要になる。
私は、そうした役割を担う人(工務店)を「家守り」と呼んでいる。
世界遺産になった岐阜の白川郷の合掌づくりの家並みに代表されるように、日本の民家には必ず家づくりのルールやメンテナンスのルールがある。
そのルールは、かつてはその地域の誰もが共有していたルールだった。
たとえば、何十年かに一度萱葺きの屋根を葺き替えるとき、萱を刈ることから葺き替え、後始末まで、地域総出で行なうことでそのルールは世代を超えて継承されていた。
三重県の伊勢神宮では、よく知られるように1300年前から20年ごとにまったく同じ建物を建て直す「式年遷宮」が行なわれている。
建て替えられたあとの古い建築材は、神宮内の他の社殿や施設に使用したり、日本各地の神社に譲り渡されたりして再利用されているのだが、こうした仕組みは、永年受け継がれてきた神宮建築技術を次代に継承することに役立っている。
私は、代々家を守り、住宅の価値を維持しながら孫の代、さらにその次の世代にまで継承していく仕組みをつくりたいと考えている。

家はつくっておしまいではない。
資産になる住宅とはものづくりだけでなく、ものの維持にも責任を持つということにほかならないからだ。
欧米の家づくりには、全国規模の大手ハウスメーカーという存在はない。
大きくても年間200棟クラスの工務店である。
全国規模で同じ家をつくる必要がないからだ。
地域の街並みは地域で守られているのである。

資産価値を上げることを大事にしている人々は、その町の風景をしっかり守ってくれる地元の業者が大切なのだ。
また、建てたときよりもその後のメンテナンスのほうが重要だから、その家のメンテナンスや改築の履歴も保管されている。
個人の住宅は、基本的なメンテナンスは自分で行ない、近所の大工さんやペンキ屋さんなどの小さな業者に定期的にメンテナンスしてもらい、その記録はその家がある限り保存される仕組みがある。
地元にいる業者は、何十年にもわたってその家を見守っている。
たいていの場合、住宅は売りに出され、また別の人がオーナーになるが、その家自身は、その地域の同じ会社で面倒を見てもらう。
これが理想的な姿だと思う。 日本の家づくりも資産価値を求める時代が来ている。
日本の住宅の寿命が100年になったとしたら、家は住みつづけられても、その家をつくった人はもういない。
作業した大工さんもいない。そのときには、その家を施工した工務店が何代にもわたって継続して地域の住宅を守っていく。
自分の会社がしつらえたものは、誇りを持って守っていく。
そんな会社が全国にたくさんできるとき、日本の住宅やコミュニティに本当の資産価値が生まれ、それぞれの地域に合った環境がつくられていくのではないだろうか。

今後もそんな人々を支援しつづけていきたいものである。
「よい住み手」と「よいつくり手」。
それらがうまくまわっていく「仕組み」ができあがったとき、日本の家はまったく変わっていくだろう。
あなたが「構造計算」をして家を建てる四番目の・賢い子ぶた・であることを祈って筆を置くことにする。

 

sanbiki「家、三匹の子ぶたが間違っていたこと」 田鎖郁男・金谷年展(共著)

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