~家、三匹の子ぶたが間違っていたこと【あとがき】~【3匹の子ぶたvol.072】

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家、三匹の子ぶたが間違っていたこと


あとがき

第1章では、構造計算されていない木造住宅の現状。
第2章では、家の資産価値について、第3章では、クオリティ・オブ・ライフ──生活の質と住宅について書き進めてきた。
三匹の子ぶたの時代より多様化した現代では、オオカミはもっとパワーアップして、あなたの住まいを狙っている。
オオカミならぬ大地震に負けない家を手に入れるには、手間暇惜しまずしっかりと材料を吟味して構造計算をして備えること。
今だけの満足を考えるのではなく、将来にわたって思考をめぐらし、しっかりと相談して自分の家をつくることである。
ある意味で、三匹目の子ぶたの家づくりの、将来も幸せに暮らすための家づくりという教訓は、正しいのかもしれない。
今日も、営業マンという名の腹を空かせたオオカミが、なるべく簡単に住宅を売りつけようとあなたの住宅ローンを狙っている。
私が20年木造住宅に携わってきた結果わかったことは、よい住宅を手に入れるには施主(購入者)が正しい知識を持つことが一番の早道であるということである。
法律や規則は、最低限のことしか決めていない。
他人任せにした家づくりは後で必ず後悔することになる。
本書では、建築業界にいる者ならすべからく知っていて、でも誰も言わなかった事実を赤裸々に述べた。
談合の是非がいまだに釈然としないこの業界でタブーを破ったことになるのだが、私は、この「人を幸せにしない日本の住宅づくり」を根本から変えるときが来た、変えなければならないと考える。
暗黙の了解や馴れ合いの中で成長してきた住宅産業には、真実を知らずに地震の被害に遭う人々、資産価値がなくなる家のために無駄な住宅ローンを払い続ける人々、押しつけの間取りに我慢しながら使い続けなければならない人々の犠牲がある。
そのことに多くの消費者が目覚めなければこの業界は永遠によくならないとの思いで、あえて厳しく語りつくしたつもりである。
今から約80年前に書かれた名著『耐震建築問答』田辺平学著の一節をご紹介したい。
日本の耐震・耐火建築の研究家として活躍され、東工大学教授であった田辺平学先生の悲痛ともいえるこの叫びを聞いていただきたい。

大工の手からのみを奪え 「大工職の人々の中には、『筋違を入れねば保てぬような家は建てぬ。』などと啖呵を切って、筋違を入れることが大きな恥であるかのように考えている人がありますが、これはとんでもない心得違いであります。(中略)
筋違の完全な入れ方を知らぬ者はこれからの大工職としては資格がない者と心得て自由に且つ有効に筋違を使いこなすことができる腕を誇るようになって欲しい。
柱と梁の類との仕口を『ほぞ差し』とすることは極めて危険である。
昔から地震や台風で多くの人を殺したのは、極言すればこの『ほぞ差し』のためである。
柱や梁の類に穴をあけたり削ったりすることをできるだけ避けなければならない。
なるべく太い柱を用いること。
柱と梁の接合部は、危険な『ほぞ差し』とすることを避け、方杖、金物を用いた丈夫な仕口とする。
商店の店先にもなるべく数多くの柱を立てるようにする。
接合部さえ丈夫に造っておけば柱が折れたり、梁が落ちたりすることで死傷者をだすようなことは決して起こらない。
ほぞ差しのために壊された家を復興するのにまたしても、セッセとほぞを削りだしている。
こんな馬鹿なことを繰り返していてはいつまでたってもわが国の建物が地震や風に対して安全になる日が来ようがないではないか! 一刻も早く・殺人的構造であるほぞ差し・の仕口を止めてこれに替わるより安全にして進歩した仕口を用いるようにすること。

将来の我が国の木造建築は、その構造は現在の和風でも洋風でもなく、また、勿論和洋折衷でもなく強度計算をする・力学的木造建築・とするべきである。」(田辺平学『耐震建築問答』初版 昭和八年より抜粋)
これは、80年前の文章である。田辺先生は戦後の復興期に全国を行脚し、「耐震・耐火建築の普及」を訴え続けた。
一九五四年、高度経済成長へ向けて住宅の大量生産が始まる年お亡くなりになっている。
もし、彼が阪神淡路大震災・新潟中越沖地震の木造住宅の惨状を見たらなんと言うであろうか。
いまだにつくられているほぞ差しの在来木造建築に歯噛みするに違いない。
そしてこの言葉は、70年後SE構法を開発した播繁先生、その事業化に尽力された杉山恒夫会長から私に語り伝えられた。
地震に強い家を普及させる活動の中で、この田辺先生の言葉に背中を押されて10年が経った。
人の命と財産を守る家をつくろう。
その問いかけに対し賛同し、構造計算した家づくりの普及に愚直に取り組んでくれている「重量木骨の家プレミアムパートナー」の方々に心より感謝申し上げたい。
第3章に登場したフランク・ロイド・ライト氏は、一九三七年ユーソニアン住宅の開発時にこんな言葉を残している。
「自由の国アメリカでは、全ての国民は、良質で安価な住宅に住む権利を有している。」 二一世紀、技術は進歩している。
技術大国・地震大国である日本では「100年に一度の大震災に見舞われても、何事もなかったかのように生活できる木の家」
「100年経っても、また誰かが住みたくなるような木の家」「100年後も変わることなく建ち並ぶ美しい街並み」、
そんな未来がつくれるかもしれない。 そのためには、消費者が正しい知識を持ち、きちんと家づくりに参加すること。
その第一歩は、構造から始まるのである。時間をかけて大事につくって大切にメンテナンスをした家は、必ずその人を幸福にしてくれるはずである。
2007年10月 田鎖郁男

 

sanbiki「家、三匹の子ぶたが間違っていたこと」 田鎖郁男・金谷年展(共著)

大地震のたびに繰り返される悲劇の本当の原因は何か?本書に、その答えのすべてがある。「日本の二階建て木造住宅の97%以上が構造計算されていない」という事実を知っていますか?“家”の考え方が180°変わる目からウロコの書。 単行本 213ページ 発刊:2007年11月 発行:ダイヤモンド社 →書籍のご購入はこちらから