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吉村靖孝インタビュー vol.004

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たくさんの家をみんなでつくる

― 「アプリの家」は具体的にどのような家になるのでしょうか?

吉村 アプリをつくるにあたって、柱や梁のような主要構造部材だけでなく、間柱や根太などの2 次部材(小梁や間柱など)も点数を減らし極力シンプルにすることを考えました。その結果、柱や梁が間柱や根太を兼ねるカゴのような構造体が生まれました。平面的(縦横)には在来木造と同じ910㎜のグリッド、立面的(高さ)には1200㎜のグリッドです。柱や梁が多いと効率がよくないように見えるかもしれませんが、大きなフレームを使うと2次部材が増えます。小さな格子モジュールを採用することで部材の種類を減らすことができ、コスト削減にもつながります。部材も軽くなるので施工時の負担も減らせます。

― 床や壁は、どのように決めるのでしょうか?

吉村 アプリの家は、このグリッドに合わせて床・壁のパーツを選んで家をつくっていく仕組みになっています。まず、2間×3間から3間×7間までの長方形平面で広さを選びます。2 階の床の面積は、好きなように決められます。床は、2400㎜、3600㎜、4800㎜に設置可能で、たとえば、1.5 階分の天井高さ(3600㎜)を持つ部屋や、0.5 階分の天井高さ(1200㎜)の小屋裏収納など、さまざまな場所をつくることができます。スキップフロアも簡単になります。窓もグリッドに合わせて好きな位置・高さに配置します。壁面をすべて窓にすることも可能です。ただし、柱を取り除くことはできないので、全面大開口にはなりません。

 ここまでの流れを一般ユーザーがアプリ上でシミュレーションするのです。ユニット家具のパーツを選ぶように、住宅パーツを組み合わせて自分の家をバーチャル設計します。その過程で価格が表示されるため、ユーザーは価格を把握しながら、どこで(どういうカタチで)設計をとめるかを自分自身で決めることになります。アプリを介して、ユーザーと家が直結するといえます。

― このアプリがあれば、私でも設計できるような気がしてきました。

吉村 最終的につくった家はSNSなどを使って、みんなで共有できるとよいと思っています。デザインのノウハウを蓄積していくためのプラットホームのようなものです。そうすることで、同じ構造体でも少しずつデザインが変わって展開されていきます。こうしてできたアプリの家が建ち並べば、単に統一感があるだけでなく、各住宅の個性を賑わいと感じられるような、活き活きとした街並みができるでしょう。たくさんの住宅を、建築家に頼らず、みんなでつくる――そんな住宅のつくり方があってよいと思います。

 

自分で設計できる。すぐに値段が分かる。吉村靖孝さんの「アプリの家」は、アプリを使って住み手が家づくりに参加できる新しい仕組みの提案です。
構造部材のパーツ化によって、これを可能にしています。
住み手の知識レベルの底上げができれば、木造住宅の質の向上にもつながっていく――そんな期待が寄せられます。

<インタビュー/文:木藤阿由子(建築知識ビルダーズ編集長)>