「カフェロワン」の誕生と解体〜「あなたの残したい建物コンテスト」開催にも繋がった、本当の物語【耐震住宅100%】

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建物の記憶が街の歴史になる。ふるさとへの思いを形にしたい。


loin_2 「あなたの残したい建物コンテスト」を企画するにあたって、そのきっかけのひとつになった建物がありました。それは、宮城県松島町に存在していた「カフェロワン」。誕生から、東日本大震災による解体まで、わずか数年間の歴史しかありませんでしたが、そこには「残したい」と願う人々の思い出と、未来への希望が込められていました。その物語の一部をご紹介します。

 

 

この町ならではの文化を発信したい


日本三景のひとつ、松島。仙台市から車で30分ほどということもあり、1年を通じて多くの観光客で賑わっています。 そんな松島湾の景観を見下ろす高台に、かつて「カフェロワン」というカフェがありました。もともとは昭和40年代に建築された展望ドライブイン。その後、すっかり寂れていたこの建物に目を付けたのは、地元・松島町で松華堂菓子店を営む千葉伸一さん。管理する松島町から古ぼけていた建物を借り受けて、2007年、フレンチスタイルの「カフェロワン」へと再スタートさせることに。 「松島って有名な観光地なのですが、生まれ育った私にとってはふるさとでもあります。観光地としての松島町だけじゃなく、自分たちの日常の中の、この町ならではのよさというものを私たちは知っている。そんな思いを発信する場にしたかったんです」。 「カフェロワン」で供するのは、牛タンやずんだもちなどのいわゆる「名物」ではなく、コーヒーとタルトタタン(焼きリンゴのタルト)。観光スポットではなく、街中で普通に立ち寄れるような感覚のカフェを目指しました。 最初はいぶかしげに様子を見ていた町の人も徐々に常連に。20代のカップルもいれば、年配のおじさん、おばさんも。桜の時期には、地元の農家に声をかけて青空市も開催。仙台からアーティストを呼んでコンサートを開くことも。そこに立ち寄る人との会話やつながりから、いくつもの取り組みが自然と立ち上がっていきました。 「カフェロワンは、そんな人が集まる場にしたかったんです。豊かな景観や地場の食材、人材がこの町にはあるのに、これまで生かされていなかった。都会とはまた違う、この町ならではの文化のようなものが、この場を通じて育っていくといいなと思っていました」 と千葉さん。

 

町の思い出や歴史を、未来に伝える建物に


loin_3  しかし、2011年3月11日に東日本大震災が発生。松島町も、地震と津波によって大きな被害を受けました。高台のカフェロワンは津波からは免れたものの、地震によって営業不能の状態に。 「過去に地震や津波に見舞われてきた地域なので、普段から自然災害の危険性については意識していたつもりでした。しかし、やはり被害を目の当たりにしたときはショックでしたね…」 桜の時期のカフェロワンの定例となっていた、青空市の企画をまとめていた最中の出来事でした。 震災後、復興に向けて動き出す松島町。その中でカフェロワンの常連さんからは「いつ再開するの?」「直すなら柱の1本でも寄付するよ」という声も千葉さんにしばしばかけられたと言います。しかし、建物は松島町のものであり、営業再開に必要な耐震改修には町の許可と予算が必要。千葉さんを始め、カフェロワンに思い入れのある人々が役所と粘り強く交渉を重ねたものの、結局、建物は2013年10月に解体されてしまいました。 解体前にはフランスの著名なアーティスト、ジョルジュ・ルース氏を招聘し、アートプロジェクトを実施。解体予定の建物で絵を描き、写真を撮り、空間の記憶を残すというもので、カフェロワンという場における、最後の取り組みとなりました。 「廃墟としての記憶ではなく、アートとして記録に残したかったんです。結果的に建物は解体されてしまったけど、気持ちは整理できた部分があります」と千葉さん。 loin_4

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現在、カフェロワンのあった場所は更地となり、その後どうするのか、松島町からは指針が示されていないままです。 「『時間が止まってしまった』という残念な思いは、今でもあります。でもカフェロワンでの数年間を通じて、地元の人、県外の地元出身の人など、多くのつながりが生まれました。また震災に直面してあらためて、地元の中での助け合いも経験しました。経営者としての立場ってそれなりにしんどいところもあって、それまでは”何のために経営しているのか”と自問自答するようなこともあったんですが、”金儲けのためだけじゃないんだ”ということが、はっきりわかりましたね」。 次に生まれるものは、価値。モノやカネではない価値。地元に足りないものは、カルチャー、アート。精神的な生産の場をつくりたい。ローカルとグローバルの接点を設けることで、外からの視点で地元のよさに焦点をあてる。都会に迎合しないで、そのよさを突き通す。「それが松島町ならではの価値観、文化になっていくんじゃないかな」。千葉さんはそんな手応えを感じています。 現在、千葉さんが営む松華堂菓子店の社屋では、併設されたカフェで、地元産の卵をたっぷりと使ったカステラが人気となり、多くの人々が集まる場に育ってきています。 「震災後の復興に向けて、松島町に必要なのは、高さ6mの防潮堤やカジノなどのような、即物的、近視眼的なものではない。この町の思い出や歴史を未来へ伝えていく建物や場を、ひとつでも多く築いていくことが大切なのだと思っています」。 千葉さんが残したかった建物、「カフェロワン」は残念ながらなくなってしまいました。しかし、震災によっていったん途切れてしまった「カフェロワン」での試みは、千葉さんの心に確かな思いを残しました。松華堂菓子店の5代目として、ふるさとの歴史や文化を未来へつなげる役目を果たす。その使命感は、3月11日に止まった時間を動かそうとする、千葉さんのエネルギーになっています。 旧耐震住宅をなくすためには、「建て替える」のもひとつの選択肢です。しかし、長い歴史やたくさんの思い出が積み重ねられ、地元の人々の生活と密着している景観については、耐震性を確保しながら「保存」に努めること。これもまた、大切にしたい選択肢です。 「あなたの残したい建物コンテスト」では、そんな建物を募集しています。千葉さんや地元の人々が愛してやまなかった「カフェロワン」のような建物を、解体することなく、未来へと受け継いでいくために。

 

「耐震住宅100%キャンペーン」についてline_litebanar01banar02banar03banar04banar05

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