耐震構法SE構法はより耐震性能を高める構造計算が可能な理由
住宅の分野では社会やユーザーのニーズにより耐震性への関心が高まり、住宅性能表示の耐震基準である「耐震等級」を上げることで建築基準法以上の性能を確保する動きが加速しています。非住宅である中大規模木造は用途が「住宅」ではないので、耐震等級を用いることはできません。SE構法の場合であれば、地震力を割り増した構造計算などにも対応できますので、建築基準法以上の耐震性能を実現することが可能です。
<このコラムでわかること>
・建築基準法で定められている構造計算
・SE構法の構造計算は許容応力度計算
・SE構法は地震力を割り増した構造計算も可能
建築基準法で定められている構造計算
建築基準法に定められている構造計算の項目は、大きくは次の2つになります。
<A>軒高9m以下の建築物の場合
許容応力度計算、層間変形、偏心率
<B>軒高9m以上の建築物の場合
許容応力度計算、層間変形、偏心率、剛性率
「軒高」とは、屋根を支える梁の高さです。屋根の形状により位置や高さが異なります。
SE構法の構造計算は許容応力度計算
構造計算は「建築物にかかる重さのすべて」を想定して調べる「許容応力度計算」から始めます。地球の重力に対して耐えられるかどうかはもちろん、地震の時に建築物にかかる力は建築物が重いほど大きくなるので、最初に建築物の重さを調べることが重要なのです。
<1>建築物自体の重さを調べます。
<2>建築物の床に載せる人や家財道具の重さ(積載荷重)を想定します。
<3>雪が積もったときに屋根にかかる重さ(積雪荷重)や、ピアノや水槽などのように特に重量のあるものの重さ(特殊荷重)を考慮します。
<4>上記<1>~<3>を合計します。
さらに、「建築物にかかる重さが力としてどのように伝わるか、そしてその力に耐えられるか」を調べます。地震や台風に持ちこたえられる建築物かどうかがわかります。
<5>建築物にどのように重さ(下向きの力)が伝わるかを調べます。
<6>伝わった重さに、建築物に使用されている材料が耐えられるかを調べ、地震や台風が来た場合を想定して強さを検証します。
<7>地震が来たときにかかる力を、建築物の重さから計算します。
<8>台風が来たときに、建築物にかかる力を調べます。
<9>地震や台風のときに建築物にかかる力(横向きの力)に、材料が耐えられるかを調べます。
<9>までの一連の流れが「許容応力度計算」です。さらに、地震と台風それぞれの場合に、建築物がどのくらい傾くのかを計算する「層間変形」、建築物の重さと硬さが偏っていないかを確認し、バランスよく重さを支えられるかを調べる「偏心率」を計算します。
軒高9m以上になると大規模建築物とみなされ、これまでの計算に加えて建築物の上下階の硬さのバランスを調べる「剛性率」も必要になります。
SE構法は地震力を割り増した構造計算も可能
SE構法では非住宅の構造計算においては、発注者や設計者から「建築基準法の規定以上の耐震性能を確保したい」という要望があれば、上記の構造計算のプロセスの中で地震力を割り増した構造計算を行うことも可能です。
例えばですが、住宅の耐震等級の考え方に準じて、建築基準法よりも地震力を1.25倍に割り増す(住宅の場合は耐震等級2)こともできますし、建築基準法よりも地震力を1.5倍に割り増す(住宅の場合は耐震等級3)こともできます。
耐震性能をより高めるために、耐力壁の構造用合板の枚数が増えるなどの要素もありますが、全体の予算と工事費とのバランスを構造材の見積り内容を検証していただきながら、最終的に構造計算の条件を決めていただくこともできます。
まとめ
世界一の地震国である日本で建築を造るということは、耐震性の確保が大前提になります。木造の場合、鉄筋コンクリート造や鉄骨造と比較すると耐震性が弱い印象もあるかもしれませんが、「建物が軽い=地震などを受ける力が少ない」という利点もあります。中大規模木造においても、SE構法で地震力を割り増した構造計算を行うことで、住宅の場合と同様に建築基準法以上の耐震性能を実現し、社会や発注者の要請に応えることもできます。
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