自社ビルこそ木造化!SE構法登録施工店の木造ビル事例まとめ
自社ビルの建設を検討中の企業において、注目されているのは「木造化」です。
持続可能な社会の実現が求められる中、脱炭素や環境負荷低減を実現する木造ビルが注目を集めています。
特に、SE構法を採用した木造ビルは、耐震性や大空間設計を可能にする点で、従来の鉄骨造やRC造と比較しても劣らない性能を持ちながら、デザイン性や温かみのある空間を実現できるのが魅力です。
本記事では、SE構法登録施工店による実際の木造ビルの事例を取り上げ、木造化のメリットやSE構法の構造設計について詳しく解説します。
コストパフォーマンスの高さや減価償却の優位性、企業イメージの向上といった木造化ならではの利点を、具体例を交えてご紹介します。
本記事が、貴社の建設計画のヒントになれば幸いです。
<このコラムでわかること>
・【自社ビル】SE構法の木造ビル(悠悠ホーム大野城本店)
・【自社ビル】SE構法の木造ビル(TOAHOME新社屋)
・【自社ビル】SE構法の木造ビル(the workspace)
・【自社ビル】SE構法の木造ビル(フタガミホーム&ガーデン薊野オフィス)
・【自社ビル】SE構法の木造ビル(ハウステックス東京本社ビル)
・大規模木造に最適なSE構法の実務ポイントまとめ
・まとめ
【自社ビル】SE構法の木造ビル(悠悠ホーム大野城本店)
SE構法登録施工店の木造ビルの事例として「悠悠ホーム大野城本店」があります。
悠悠ホーム大野城本店の概要
・事務所の平面計画は、東西19,370mm、南北16,380mmのほぼ矩形です。
・硬質なオフィスらしい外観へのこだわりもあり、南東の2面は全面ガラスのカーテンウォールとなっています。
・3階の執務スペースは特に開放感のある空間となっています。屋根は北下がりの片流れで、天井は最も高い部分で4,570mm、低い部分でも3,600mmあります。そこに910mmピッチで成600mmの梁が架かります。
悠悠ホーム大野城本店のSE構法の構造設計
・柱の断面寸法に関しては、基本は120mm角で、一部に特注材を使っていますが、構造材のほとんどがSE構法の標準材です。
・南側に広い執務スペースを配し、東西17,290mmに対し、奥行は1階が5,460mm、2階が6,370mm、3階は最大で10,010mmの大空間を無柱で実現しています。
・東西方向に2箇所、910mm幅の耐力壁を設けて固め、さらに南面の合わせ柱の梁行方向の通り芯上に耐力壁を集め、かつ中央部にも耐力壁を集めることで、建物の重心と剛心のバランスを取っています。
【自社ビル】SE構法の木造ビル(TOAHOME新社屋)
TOAHOME株式会社様は、注文住宅事業を主に展開している企業で、SE構法登録施工店(重量木骨の家プレミアムパートナー)です。
TOAHOME新社屋の概要
・騒音などを考慮して国道側の開口部を最小限にし、南側の前庭を囲むように変形L字形に棟を配置しています。
・南面には植栽を施し、その奥をロッジアにして吹き放ち、それらを介してホールラウンジへのアプローチを形成しています。
・1階が接客ゾーン、2階がオフィスとなっており、ホールラウンジは9,100mm×5,460mm、2層吹抜けで天井高6,100mmの大空間です。
TOAHOME新社屋のSE構法の構造設計
・この事務所は、基本的には住宅スケールで使用する構造用集成材の規格材を基本に構造躯体を成立させています。柱の断面寸法に関しては、基本は120mm角で、一部に平角柱(120×240mm・120×360mm)を使っていますが、いずれもSE構法の標準材です。
・大空間を実現するために、一部の柱・梁は大断面材を使用しているように見えますが、実際には平角柱や梁を抱き合わせにするディテールとなっています。特注材を使用しないことでコストを抑えた構造計画となっています。
・この事務所は変形L型の平面形状のため、耐震性を高める構造計算は難易度の高いものです。SE構法の平面斜辺の場合には、梁受け金物をその平面斜辺の角度に合わせて特注で製作します。柱の面に梁受け金物を取り付けるディテールは同じですが、梁を受けるプレートが平面斜辺の角度に合わせて曲げられています。
関連記事:SE構法の事務所の事例紹介「TOAHOME新社屋」
【自社ビル】SE構法の木造ビル(the workspace)
株式会社コプラス様は、山口県下関市を本拠とする土木系建設会社です。
コプラス様の新オフィス「the workspace」が、木造(SE構法)で建設されました。
the workspaceの概要
・SE構法による事務所「the workspace」は、下関市の長府地区に位置しており、南下りの斜面地に建ち、南側には住宅地が広がり、北側に本社屋が建っています。
・南西側には縦繁格子を設けて外部からの視線を調整しています。その格子を建物本体から1,820mm離して、通り土間のような空間をつくり出し、そこにエントランスを設けて、かつ本社屋からのアプローチにも利用されています。
・説明会などを催すためのセミナールームは、床を階段状にして視認性を高めると共に、リラックスして交流できる雰囲気を高めています。
the workspaceのSE構法の構造設計
・建物全体の平面計画は、25,935mm×11,830mmの矩形平面です。
・オフィススペースは7,280mm×20,020mmの無柱の大空間で、天井高は3,150mmとなっています。
・南西側に大空間を配置しているため、耐力壁は北東側に集中する構造計画となっています。そこで120mm×240mmの平角柱を水平力を担う方向に配置しています。
関連記事:SE構法の事務所の事例紹介「the workspace」
【自社ビル】SE構法の木造ビル(フタガミホーム&ガーデン薊野オフィス)
フタガミ様は、住生活分野の事業を幅広く展開する企業です。
フタガミ様の建築事業部の新オフィス「フタガミホーム&ガーデン薊野オフィス」が、高知市内に木造(SE構法)で建設されました。
フタガミホーム&ガーデン薊野オフィスの概要
・平面は、16,380mm×9,100mmの矩形の北西側に8,190mm×5,460mmの矩形を接続させたL字形です。
・北西側の1階部分は軽自動車4台分の駐車スペースで、無柱の大空間を実現しています。
・ミーティング/セミナールームは、社内利用だけでなく、顧客を集めてセミナーなどを開催する計画があります。そのため階段幅を1,365mm、通路幅を1,820mmと広く取ってホールとし、カウンターテーブルを設け、簡単な打合せや接客、個人作業などが行えるようになっています。
フタガミホーム&ガーデン薊野オフィスのSE構法の構造設計
・事務所の開放的な空間を実現すべく、SE構法の構造用集成材の柱・梁で形づくるフレームが連なる空間構成となっています。階段室を介して2階まで空間は連続しています。
・架構は外周部に平角柱と耐力壁を集めて、内部は南側に5,460mm幅で事務系諸室を、北側に3,640mm幅で動線や水回りを集め、東西は中央で8,190mmずつに区切ったいわゆる田の字プランに沿って壁を配置して、バランスのよい架構を実現しています。
・この事務所は基本的には住宅スケールで使用する構造用集成材の規格材を基本に構造躯体を成立させています。2階へ上がる階段からセミナールームへ至るまでの動線は、スキップフロアを採用して、ダイナミックな空間構成とし、構造体を意識的に見せています。
関連記事:SE構法の事務所の事例紹介「フタガミホーム&ガーデン薊野オフィス」
【自社ビル】SE構法の木造ビル(ハウステックス東京本社ビル)
株式会社ハウステックス様(以下、ハウステックス)は、SE構法登録施工店でもある工務店です。
ハウステックス東京本社ビルの概要
・敷地は二等辺三角形の形状をしている変形敷地です。そのため、建物形状は三角形の平面形状となりました。防火地域の3階建であることから木造による1時間耐火建築物です。耐震等級3(相当)を確保し、緊急時の避難所となることを想定しています。
・自社の本社兼ショールームであると共に、地域の交流の場になることを意図しています。1階にはギャラリー、地階にはイベントホール、屋上にはBBQ施設を設けて、周辺地域のコミュニケーションの場を提供しています。
・耐火建築物でも仕上げ材には木を積極的に利用しています。木を使用することで、木質感あふれる事務所、オフィスを実現しつつ、カービンニュートラルにも貢献できる建築になっています。
ハウステックス東京本社ビルのSE構法の構造設計
・SE構法では平面斜辺による平面計画が可能です。SE構法の平面斜辺の場合には、梁受け金物をその平面斜辺の角度に合わせて特注で製作します。柱の面に梁受け金物を取り付けるディテールは同じですが、梁を受けるプレートが平面斜辺の角度に合わせて曲げられています。
・この事務所は延床面積が大きく、耐火建築物として荷重も重くなる大規模木造ですが、基本的には住宅スケールで使用する構造用集成材の規格材を基本に構造躯体を成立させています。柱の断面寸法に関しては、最大で1階の170×240mmの平角柱、2階は170mm角、3階は120mm角です。
・建物中央部に配置したエレベーターをコアとして、外周部とエレベーター周りに耐力壁を集中させることで、室内になるべく壁や柱を出さない設計となっています。
関連記事:SE構法の事務所の事例紹介「ハウステックス東京本社ビル」
大規模木造に最適なSE構法の実務ポイントまとめ
大規模木造に最適なSE構法の実務ポイントは主に下記です。
<システム>
耐震構法SE構法は大規模な木造建築物の技術を基に開発された技術です。耐震構法SE構法は耐震性の高さ、設計の自由度、コストパフォーマンスの良さ、ワンストップサービス等で高い評価を受けており、さまざまな木造建築の実績が増えています。
関連記事:大規模木造から生まれたSE構法を徹底解説(システム編)
<事例>
SE構法は特に低層建築物である店舗、事務所、倉庫、幼児施設、高齢者施設等の非住宅建築を中心に、さまざまな木造建築の実績が増えています。耐火建築物や準耐火建築物への対応も可能です。
関連記事:【解説】大規模木造の可能性が大きく広がるSE構法の事例紹介
<構造設計>
SE構法の構造設計プロセスは、「構造計画」「構造設計」「構造計算」の3ステップで進めていきます。
関連記事:【解説】SE構法の構造設計が大規模木造で評価される理由
<プレカット>
SE構法は大スパン・大空間が求められる大規模木造において、構造設計、材料加工、施工、コストパフォーマンスの良さを高い次元で成立している工法です。SE構法は徹底した品質管理と、構造計算から部材加工まで一貫したCADシステムにより高精度のプレカット加工を実現しています。
関連記事:【解説】大規模木造で構造設計とプレカット加工が連動するSE構法
<施工>
SE構法は、基礎構造から構造体施工に至るまで厳しい品質を追求しています。SE構法は独自の施工管理技術が必要なため、どの建設会社でも施工できるわけではありません。試験に合格したSE構法施工管理技士が在籍し、一定の技術水準を有すると認められた「SE構法登録施工店」がSE構法の建物を施工します。
関連記事:【解説】大規模木造で使いやすいSE構法の施工ポイント
<構造用集成材>
構造用集成材は「科学された木材」と言われ、製造過程でひき板一枚一枚の節の大きさや曲げヤング係数を計測・選別して集成材化しており、表示通りの性能が発揮されるので構造材として安定しています。構造の安全性を保証するSE構法は部材の信頼性を重視し、全て構造用集成材を使用しています。
関連記事:【解説】大規模木造に適した構造用集成材をSE構法が採用する理由
<SE金物>
SE構法は独自のSE金物により、集成材、耐力壁、床合板それぞれの強さを活かしています。一般的な木造は、接合部に柱や梁をホゾ継ぎするため、地震時に断面欠損をまねき、構造材本来の強度を低下させてしまいます。そこでSE構法は、大きな揺れに対して接合部が破損しない技術を追求し、独自にSE金物を開発しています。
関連記事:【解説】大規模木造で様々な設計に対応できるSE構法の強さの理由はSE金物
まとめ
都市部を中心に、大規模木造の計画が活性化しています。
木造は都市建築の選択肢の一つとなっており、発注者は環境重視の姿勢を強めています。
設計者には、木の材料特性を引き出し、流通する製材を活用して、都市部の建築の木造・木質化の実現が求められています。
SE構法の構造スペックをうまく活用すると、木造では実現が難しい高層化、木造耐火などを実現することができます。
都市部の厳しい敷地条件の中、鉄骨造ではコストや施工に問題がある場合においても、木造(SE構法)が有効な選択肢となります。
NCNは構造設計から生産設計(プレカット)までのワンストップサービスが強みです。
計画段階からご相談いただくことで、構造設計から材料調達までを考慮した合理的な計画が可能です。
集成材構法として実力・実績のある工法の一つが「耐震構法SE構法」です。
SE構法は「木造の構造設計」から「構造躯体材料のプレカット」に至るプロセスを合理化することでワンストップサービスとして実現した木造の工法です。
また構法を問わず、木造の構造設計から構造躯体材料のプレカットに至るスキームづくりに取り組む目的で「株式会社木構造デザイン」が設立されました。
構造設計事務所として、「⾮住宅⽊造専⾨の構造設計」、「構造設計と連動したプレカットCADデータの提供」をメイン事業とし、構造設計と⽣産設計を同時に提供することで、設計から加工までのワンストップサービスで木造建築物の普及に貢献する会社です。
株式会社エヌ・シー・エヌ、株式会社木構造デザインへのご相談は無料となっておりますので、ウッドショックでお困りの方もお気軽にお問い合わせください。