中大規模木造は地震や火災に弱い?木造の誤解を正す
日本の都市は、鉄筋コンクリート造や鉄骨造で建てられた建築物が目立ち、木造は戸建住宅を建てるときの工法と思われがちです。日本の古い寺社仏閣を見れば、木造でも大きな建築を建てることは昔から可能です。現在では技術が進歩しているため、地震や火災に対する安全性も向上しています。木造は地震や火災に弱いというのは、大きな誤解です。このコラムでは、木造に関する誤解を解いていきます。
<このコラムでわかること>
・中大規模木造は地震に弱くない!耐震性を決めるのは構造設計
・木造は火災に弱くない!木材は燃焼で強度低下するが進行は鉄より遅い
中大規模木造は地震に弱くない!耐震性を決めるのは構造設計
木造は構造体に木材を使用することもあり、木造は鉄筋コンクリート造や鉄骨造と比較して強度が低い印象があるかもしれません。事実として鉄筋やコンクリート、鉄骨と木材では材自体の強度も違いますし、部材同士の接合部も木造よりも鉄骨造ほど強固なものには技術的に対応できません。
法的に定められている耐震性能レベルは、構造種別に関わらず同じです。基準にしたがって建てられた建築物は、木造でも鉄筋コンクリート造や鉄骨造と同等の耐震性能を有しています。
建築の耐震性を決めるのは、使用する部材を決め、複数の部材をどう組み合わせ、構造体を作り上げるかという構造設計です。各部材の強度を前提に地震や風の揺れに対する安全性を構造計算を基に検証していきます。
自然素材でもある木材でも、構造用集成材やCLTなどのように建築部材として安全性、安定性も増してきたため、そうした材の強度に基づく構造計算による検証も可能になっています。
木造は鉄筋コンクリート造や鉄骨造と比較して、地震の揺れに対して逆に有利と言える点もあります。それは木造の構造体そのものの荷重が軽いということです。
木造の構造体を地盤上で安定させる基礎に関しても比較的小さい断面でつくることができるのでコストダウンにもなります。地盤改良においても、木造は建物重量が軽いことで必要な地耐力が小さいので、地盤改良工事が必要な場合においてもコストを抑えることができます。
木造は建物重量に占める構造体の割合が小さいため、効率よく耐震性能を上げやすいことに加え、耐震性能を向上のためのさまざまな手法もあります。
地震の揺れによって構造体が受ける外力は、建築物の重さと揺れの加速度で決まります。鉄筋コンクリート造や鉄骨造など荷重の重い建築物ほど、大きな外力を受けることになります。
大地震など想定外の大きな揺れに見舞われたとき、大きな外力を受けるリスクは、木造のほうが小さくて済みます。
木造は火災に弱くない!木材は燃焼で強度低下するが進行は鉄より遅い
木材は燃えるという事実はありますが、その燃え方は「燃え進むのがとても遅い」という特徴があります。木材は大気に触れた表面が炭化するため、燃え進もうにも酸素の供給が妨げられます。
木造においては、この燃え進む速度が遅いという特性が大きな意味を持ちます。
火災時における建築物の安全性とは、人の命を守ることです。その建築物で活動している人たちが、火災時に余裕を持って逃げられるだけの時間を確保できるかどうかです。
建築物に求められるのは、コンクリートのように燃えにくいということではありません。逃げられる時間的な余裕を確保できるかどうかが問われます。木造は燃え進む速度が遅いという特性があり、加えて耐火建築物や準耐火建築物の仕様を満たしていれば、避難時の時間的な余裕を確保することができます。
鉄骨は熱によって強度の低下が急速に進行します。木材はゆっくり燃えながらも強度を保つのに対し、鉄骨は燃えないものの強度は落ちます。そのため、鉄骨は耐火被覆を行うことで火災に対する安全性を確保します。
木造で耐火構造とする部材が開発、実用化され、鉄骨造や鉄筋コンクリート造と同等の火災安全性が確保できるようになっています。また、ゆっくり燃える木の特性を生かした木造の準耐火構造技術の開発・普及が、木造建築の実現拡大に寄与しています。
まとめ
建築物の耐震性を決めるのは構造設計です。木造だと建築物の軽さがプラスに働くこともあり、「木造=地震に弱い」ということにはなりません。木材は火災環境で強度は低下するものの進行は金属よりもゆっくりなため「木造=火災に弱い」ということにもなりません。木造でも、木材の特性をきちんと理解した上で設計、施工することで、地震や火災に対する安全性はしっかり確保できます。
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