木造と鉄筋コンクリート造の混構造を徹底解説
木造で建築物を計画するときに、立地条件や建物用途、建物規模により、全てを木造で成立させることが難しい場合があります。そのような場合、木造と非木造(鉄筋コンクリート造、鉄骨造等)を組み合わせた混構造として、それぞれの構造の長所を併せ持つ建築物を整備することが可能です。このコラムでは、混構造の意味、木造と鉄筋コンクリート造の混構造について説明します。
<このコラムでわかること>
・混構造とは?
・木造と鉄筋コンクリート造の立面混構造
・木造と鉄筋コンクリート造の平面混構造
・混構造で地下室を作る場合の注意点
混構造とは?
混構造とは、異種の構造を組み合わせた形式のものです。混構造は多種多様で、大まかに分類すると下記があります。
・高さ方向で構造が異なるもの
・屋根と、それ以外の構造が異なるもの
・平面的にX,Y方向の構造が異なるもの
混構造の代表例として、屋根とそれ以外の構造が異なるものがあります。体育館などに多い形式です。屋根を立体トラスにして木造や鉄骨造で計画し、それ以外を鉄筋コンクリート造とします。
混構造は単一の構造形式の利点を活かし、弱点が補える構造です。但し、構造的に難しい面も多く、設計の難易度は高いため、構造設計者と基本計画段階から打ち合わせが必要です。木造の混構造であっても、告示593号第四号イ等の規定に従えば、適合性判定が不要です。
木造と鉄筋コンクリート造の立面混構造
下階を非木造(鉄筋コンクリート造、鉄骨造等)とし、上階を木造とする構造形式として、高さ方向に異なる構造種別を組み合わせたのが立面混構造です。
大臣認定を受けた耐火部材は、現在(2019年3月段階)、1時間耐火のものしかないため、耐火建築物とする場合の木造部分は、最上階から4階までに限られます。
ルート1の構造計算によって安全性が確かめられる鉄筋コンクリート像と木造の構造を併用する建築物については、1階を鉄筋コンクリート造、2階を木造として、かつ木造部分への地震力を割り増した構造計算等を行う場合に限り、延べ面積3,000m2まで非耐火建築物で建設が可能です。延べ面積500m2以下であれば、1階及び2階を鉄筋コンクリート造、3階を木造で計画することも可能です。
木造と鉄筋コンクリート造の平面混構造
立面混構造と同様に、平面的に木造と非木造(鉄筋コンクリート造、鉄骨造等)とを組み合わせて、構造的に一体でつくるのが平面混構造です。
階段、設備室、エレベーター、水回り、貴重資料や重量物等を保管する倉庫等のコアの部分を平面的に鉄筋コンクリート造とすることで、必要な性能を確保しつつ、木造部分は比較的容易に構造設計することができます。
鉄筋コンクリート造や鉄骨造等を平面的にバランスよく配置することにより、木造部分の水平力を全て非木造部分に負担させることができます。木造+鉄筋コンクリート造の場合、述べ面積500m2、高さ13m、軒高9m以下であれば、構造計算ルート1で設計が可能です。
混構造で地下室を作る場合の注意点
地下室付きや傾斜地で地階ガレージ付きの混構造など、地下室を計画する際には注意点があります。一般に建築基準法上は、床が地盤面下にある階で、床面から地盤面までの高さがその階の天井の高さの1/3以上が条件ですが、「構造計算上も地階となる条件」に注意が必要です。
多くの自治体や審査機関では「日本建築士事務所協会連合会:建築基準法改正に基づく構造設計Q &A集」に基づいて、以下の条件を満たす場合に「構造計算上も地階」と扱っています。
・地下階の階高の2/3以上が全て地盤と接している場合
・地下階の外壁全周面積の75%以上が地盤と接している場合
以上のどちらかを満たしていればよいので、計画時に配慮しておくと、予想外の計画変更などを回避することができます。
まとめ
混構造は、木造と非木造を構造的に一体化して設計する手法ですが、木造建築物を機能的に分割できる場合、その間に耐火建築物を挟むことにより、各々の木造部分を耐火建築物にしなくてもよい方法があります。混構造は、単一の構造の利点を活かし、弱点を補うことができます。一方で、構造的に難しい点が多いです。特に、異種構造間の応力伝達や剛性の評価などに注意が必要です。建築基準法の運用に関しては念のため行政や審査機関に確認しながら計画を進めてください。
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