耐震構法SE構法と鉄骨造を徹底比較(材料編)
SE構法は木(構造用集成材)、鉄骨造は鉄(鋼材)がその構造フレームを支える材料になります。また建築をつくる納まりも異なることから、断熱性や気密性などにも違いが生じます。SE構法は木を使うことの優位性があり、鉄骨造は木造より音に強いといった特性があります。このコラムでは、SE構法と鉄骨造の主に材料に関する点について比較します。
<このコラムでわかること>
・断熱性能はSE構法のほうが鉄骨造よりも高めやすい
・結露はSE構法より鉄骨造のほうが発生しやすい
・気密性能はSE構法のほうが鉄骨造よりも高い
・強度と重量の比率はSE構法は比重が軽く鉄骨造は比重が重い
・SE構法は鉄骨造より製造時のCO2排出量が少なくCO2固定量も多い
・音環境は鉄骨造はSE構法と比較して床の騒音振動は少ない
断熱性能はSE構法のほうが鉄骨造よりも高めやすい
温熱環境が高い建築物を建てるためには、高い断熱性能が求められます。延べ面積300m2以上、2,000m2未満の中規模建築物を、省エネ基準の適合義務対象になる動きもあります。
SE構法は構造フレームが木(構造用集成材)です。木は鉄に比べて熱を伝えにくいという特性を持っています。木の断熱性は鉄の約350倍となり、木材が高い断熱性能を有しています。断熱材を併用することで、より断熱性能を高めることができます。
鉄骨造は構造フレームが鉄(鋼材)です。鉄は、熱伝導率が高いことが特徴です。
結露はSE構法より鉄骨造のほうが発生しやすい
日本の気候風土である「高温多湿」のなかで快適に使える建築物を建てるためには、湿度対策が欠かせません。
木は湿度が高くなると湿気を吸収し、乾燥すると湿気を吐き出すという調整機能を持っています。また熱伝導率が低く保湿性も良いため、結露が生じにくいです。
鉄は熱伝達率が高い材料なので、外気に近い箇所に使用するとヒートブリッジ(熱橋)になります。ヒートブリッジは特に冬に室内温度を下げる要因になり、また材に結露を発生し錆の原因になるので注意が必要です。
気密性能はSE構法のほうが鉄骨造よりも高い
気密性能が低いということは、隙間が多いということですので、空気の流れとともに熱や水蒸気が出入りし壁内の結露の原因にもなります。気密性は、冷暖房の効率を上げたり、適切な換気を行うために必要な性能です。
鉄骨造は工法としての特性やディテールなどの理由により、気密性能を高めることに限界があります。
SE構法は納まりとしては通常の木造住宅や木造建築と同じですので、鉄骨造と比較して気密性能を高めることは可能です。
強度と重量の比率はSE構法は比重が軽く鉄骨造は比重が重い
一般的に鉄材など重い素材ほど強い素材といえます。木材は軽くて強い自然素材といえます。
木材は軽い割には強い材料です。より少ない材料で強いものを作れるということです。木材が強い理由は、木材の内部が中空のパイプのような細胞が無数に集まってできたハニカム構造になっているからです。
強度と重量の比率としては、SE構法は比重が軽く、鉄骨造は比重が重いということになります。
SE構法は鉄骨造より製造時のCO2排出量が少なくCO2固定量も多い
樹木はCO2(二酸化炭素)を取り入れ、酸素を放出して成長(光合成)していきますが、成長過程において多くの二酸化炭素を吸収した機能は木材になってからも炭素を固定し続けます。つまり、木造建築は地球温暖化の防止にも役立つのです。
農林水産省の環境負荷に関する試算資料によると、建築物生産時のCO2排出量で比較すると、木造を1とすると鉄骨造は約2倍となっています。木材中のCO2固定量は、木材実質重量の約1/2といわれています。
SE構法は鉄骨造と比較して、製造時のCO2排出量が少なく、CO2固定量も多いということになります。
音環境は鉄骨造はSE構法と比較して床の騒音振動は少ない
鉄骨造の床は、デッキプレートの上にコンクリートのスラブを打設するので、下階の騒音振動はSE構法(木造)と比較して少ないといえます。
SE構法(木造)の床は、梁の上に構造用合板を貼り、その上にフローリングなどの仕上材を貼ります。天井仕上げ材との間で太鼓状となりますので鉄骨造と比較すると騒音振動が伝播しやすいです。上階の床の下地材を重ね貼りするなどの対策が必要です。
間仕切り壁に関しては、遮音性能の高い乾式工法がありますので、あまり音の差はありません。
まとめ
SE構法(木造)と鉄骨造を材料で比較すると、材の強さや音に関する面では鉄骨造が優れており、断熱性や気密性ではSE構法(木造)に優位性があります。また地球環境に対する影響についても、SE構法は製造時のCO2排出量が少なく、CO2固定量も多いという利点があります。
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