中大規模木造の法規解説(木造と防火:用途による制限)
近年、環境への配慮やコスト削減の観点から、建築物の木造化が注目されています。
しかし、建築基準法では、用途・規模に応じて防火に関する厳しい制限が課せられており、特に中大規模の木造建築物を設計・建設する際には、これらの法規を正確に理解することが不可欠です。
この記事では、中大規模木造の建築計画で知っておきたい用途による制限について詳しく解説します。
<このコラムでわかること>
・特殊建築物の構造制限
・避難時間倒壊防止構造による建築物(避難時間倒壊防止建築物)
・無窓の居室(法35条の3、令111条)
・特定準耐火建築物+措置
・就寝利用する用途の小規模建築物(特定小規模施設)
・SE構法へのお問合せ、ご相談について
・まとめ
特殊建築物の構造制限

不特定または多数の人が利用したり、就寝に利用したりする建築物(特殊建築物)の場合には、下表の基準に従い、耐火建築物、避難時倒壊防止建築物、火災時倒壊防止建築物、周辺危害防止建築物、または準耐火建築物としなければなりません。

*木三共、木三学の措置が必要です。
※3階建てかつ延べ床面積200㎡未満の特殊建築物(車庫・倉庫除く)は法27条の規制を受けません。ただし、3階を就寝の用途にする場合は特定小規模施設とする必要があります。
※防火地域・準防火地域内では主要構造部を準耐火構造とした延焼防止建築物(外殻強化型)を建てることができます。

避難時間倒壊防止構造による建築物(避難時間倒壊防止建築物)

避難時間倒壊防止構造による建築物は、設計しようとする建築物に特定した避難時間である「特定避難時間」を計算により算出し、主要構造部をその特定避難時間以上となる準耐火性能を持つ構造方法である「避難時間倒壊防止構造」とし、同じくその時間以上の性能を持つ防火設備で区画した建築物です。
特定避難時間は平成27年国交告第255号第1 4項、5項の計算によって求めます。
特定避難時間は、燃えしろ設計の場合は補正固有特定避難時間の計算によって求め、石こうボードなどの被覆による設計の場合は固有通常避難時間の計算によって求めます。
燃えしろ寸法は仕様規定と異なり、計算によって算出します。
被覆による場合は、算出した時間以上の準耐火性能を持つ構造方法を適用します。
適用できる構造方法には以下があります。
・火災時倒壊防止構造(法21条1項に規定する構造方法・認定を受けたもの)
・2時間準耐火構造(令元国交告第193号1 8項)
・90分間準耐火構造(令元国交告第193号1 9項)
・75分間準耐火構造(令元国交告第193号1 10項)
・1時間準耐火構造
・準耐火構造
・耐火構造(耐火性能検証法を適用したものを含む)
特定避難時間防火設備についても同様の構成となっており、計算によって算出した特定避難時間以上の遮炎性能を持つ防火設備を適用します。
屋内からバルコニーや付室への出入り口の戸に適用できる防火設備には以下があります。
・法61条による大臣認定を受けた防火設備
・90分間防火設備(令元国交告第193号第1 11項)
・75分間防火設備(令元国交告第193号第1 12項)
・特定防火設備
・45分間防火設備(令元国交告第193号第1 13項)
・30分間防火設備(令元国交告第193号第1 14項)
外壁開口部には、袖壁やひさしなどにる効果を含めた上階延焼抑制防火設備についても必要遮炎時間の計算によって算出した設計をしたものを設けます。
避難時間倒壊防止構造が適用できる条件は平成27年国交告255号第1 1項1号に次のイ)〜ホ)について定められています。
イ)直通階段の設置
ロ)外壁開口部に上階延焼抑制防火設備の設置
ハ)居室に自動火災報知設備の設置
二)建築物の周囲の通路の設置
ホ)スプリンクラー設備の設置
法21条の規模の規定にも該当する建築物の場合は、火災時倒壊防止建築物とすることで代替可能です。
なお、内装は、適用した主要構造部に応じて制限がかかります。
無窓の居室(法35条の3、令111条)

居室に窓がない場合は特殊建築物かどうかにはかかわらず、その居室を区画する主要構造部を耐火構造とするか、または不燃材料で造る必要があります。
ただし、次の①か②のいずれかとするか、就寝を伴わない小規模な室に警報設備を設けることで、木造とすることができます。
なお、ふすま、障子その他随時開放することができるもので仕切られた2室は、1室とみなします。
特殊建築物では、学校のリスニングルームや音楽練習室などが無窓の居室となる可能性の高い居室です。
①採光に有効な部分の窓の面積の合計が、居室の床面積の1/20以上のもの
②直接外気に接する避難上有効な構造の窓(大きさは②-1か②-2のいずれか)
②-1直径1m以上の円が内接
②-2幅75cm以上、高さ1.2m以上
特定準耐火建築物+措置

木造3階建て共同住宅等、木造3階建て学校等は、それぞれの技術的基準(木三共の措置、木三学の措置)を満たすことで、特定準耐火建築物(特定主要構造部を1時間準耐火構造)で建築することが可能です。
木造3階建て共同住宅等
防火地域、準防火地域以外の区域で、延べ面積3,000m²以下の3階建てで3階部分を共同住宅、寄宿舎および下宿の用途に供する建築物では、次の技術的基準を満たすことにより、特定準耐火建築物(特定主要構造部を1時間準耐火構造)で建築することが可能です(平成27年国交告255号)。
①避難上有効なバルコニーを設置など(第1 3号イ)
②建物の周囲に十分な空地を設置など(第1 3号ロ)
準防火地域内の場合は、延べ面積1,500m²以下の木造3階建て共同住宅の建設が可能で、その場合は上記①②の技術的基準に加え、次の防火措置③が必要となります。
③火災時の延焼拡大防止と避難上の安全性を確保するため、3階の住戸などの外壁開口部に防火設備を設けること。(第1 3号ハ)
なお、内装制限は「特定準耐火建築物」としての制限となります。
木造3階建て学校等
3階建てで3階部分を学校、体育館、博物館、美術館および図書館の用途に供する建築物では、次の技術的基準を満たすことにより、特定準耐火建築物(特定主要構造部を1時間準耐火構造)で建築することが可能です(平成27年国交告255号)。
①建物の周囲に3m以上の通路の設置(第1 4号)
②延焼のおそれのある外壁の窓に20分間防火設備(第2)
③延焼のおそれのある外壁の窓の防火措置、ひさしやバルコニーの設置(第3)
④ ③の防火措置としない場合は、天井の不燃化、窓の大きさ・窓間の離間距離、窓の防火措置による延焼防止(第3各号)
就寝利用する用途の小規模建築物(特定小規模施設)

3階建て、かつ延べ面積200m²未満の特殊建築物(車庫・倉庫を除く)については法27条の規制を受けません。
ただし、共同住宅、高齢者向け施設など就寝利用する用途(令110条の4)の建物については「特定小規模施設*」とする必要があります。
*「特定小規模施設」は総務省令を引用する形で、令元国交告198号に使用されている用語です。国土交通省では「特定小規模特殊建築物」の用語が使われることもあります。
SE構法へのお問合せ、ご相談について

大規模木造をSE構法で実現するための流れは下記となります。
1.構造設計
SE構法を活用した構造提案を行います。企画段階の無料の構造提案・見積りから、実施設計での伏図・計算書作成、確認申請の指摘対応等を行っております。また、BIMにも対応可能です。
2.概算見積り
SE構法は構造設計と同時に積算・見積りが可能です。そのため躯体費用をリアルタイムで確認可能で、大規模木造の設計において気になる躯体予算を押さえつつ設計を進めることが可能です。
3.調達
物件規模、用途、使用材料を適切に判断して、条件に応じた最短納期で現場にお届けします。また、地域産材の手配にも対応しております。
4.加工
構造設計と直結したCAD/CAMシステムにより、高精度なプレカットが可能です。また、多角形状、曲面形状などの複雑な加工形状にも対応可能です。
5.施工
SE構法の登録施工店ネットワークを活用し、計画に最適な施工店を紹介します。(元請け・建方施工等)
6.非住宅版SE構法構造性能保証
業界初の非住宅木造建築に対応した構造性能保証により安心安全を担保し、中大規模木造建築の計画の実現を後押しします。
↓SE構法へのお問合せ、ご相談は下記よりお願いします。
https://www.ncn-se.co.jp/large/contact/
まとめ
SE構法は、その高精度な構造計算と設計自由度の高さにより、安全性とデザイン性を両立した木造建築が実現できます。
さらに、燃え代設計を組み合わせることで、木材を活かした魅力的な空間を提供しつつ、防火性能を確保することが可能です。
これらの特徴により、SE構法は、公共施設や商業施設、教育施設など、さまざまな用途での活用が広がっています。
NCNは構造設計から生産設計(プレカット)までのワンストップサービスが強みです。
計画段階からご相談いただくことで、木構造デザインの木造建築に関する知見をうまく利用していただき、ファーストプランの段階から構造計画を相談いただくことで、合理的に設計を進めていただければと考えております。
集成材構法として実力・実績のある工法の一つが「耐震構法SE構法」です。SE構法は「木造の構造設計」から「構造躯体材料のプレカット」に至るプロセスを合理化することでワンストップサービスとして実現した木造の工法です。
また構法を問わず、木造の構造設計から構造躯体材料のプレカットに至るスキームづくりに取り組む目的で「株式会社木構造デザイン」が設立されました。
構造設計事務所として、「⾮住宅⽊造専⾨の構造設計」、「構造設計と連動したプレカットCADデータの提供」をメイン事業とし、構造設計と⽣産設計を同時に提供することで、設計から加工までのワンストップサービスで木造建築物の普及に貢献する会社です。
株式会社エヌ・シー・エヌ、株式会社木構造デザインへのご相談は無料となっておりますので、お気軽にお問い合わせください。






