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木造4階建てのSE構法の事務所ビルの事例紹介「ヤマサ製菓ビルハピア豊橋」

  • 木造4階建てのSE構法の事務所ビルの事例紹介「ヤマサ製菓ビルハピア豊橋」 -

都市部を中心に、中大規模木造の計画が活性化しています。木造はもはや都市建築の選択肢の一つとなっています。発注者は環境重視の姿勢を強めています。設計者には、木の材料特性を引き出し、流通する製材を活用して、都市部の建築の木造・木質化の実現が求められています。2020年7月にSE構法初の木造4階建てビル「ヤマサ製菓ビルハピア豊橋」が完成しました。SE構法の構造スペックをうまく活用すると、木造では実現が難しい高層化、木造耐火などを実現することができます。都市部の厳しい敷地条件の中、鉄骨造ではコストや施工に問題がある場合においても、木造(SE構法)が有効な選択肢となります。このコラムでは構造躯体にSE構法を採用した木造4階建ての事務所ビルの事例紹介をしながらSE構法の構造設計や木造耐火への対応等のポイントについてお伝えします。

 

<このコラムでわかること>

木造4階建ての事務所ビル「ヤマサ製菓ビルハピア豊橋」の概要

木造4階建ての事務所ビル「ヤマサ製菓ビルハピア豊橋」の意匠設計の特徴

中大規模木造のメリット:減価償却期間が短い

木造4階建ての事務所ビル「ヤマサ製菓ビルハピア豊橋」の構造設計の特徴

木造4階建ての事務所ビルにおける木造耐火のポイント

・まとめ

 

木造4階建ての事務所ビル「ヤマサ製菓ビルハピア豊橋」の概要

木造4階建ての事務所ビル「ヤマサ製菓ビルハピア豊橋」の概要

「ヤマサ製菓ビルハピア豊橋」は愛知県豊橋市の豊橋駅に建つ事務所ビルです。

 

<「ヤマサ製菓ビルハピア豊橋」の概要>

・延床面積261.2㎡

・最高高さ12.9m

・4階建ての木造(SE構法)と避難経路を兼ねた2階建ての鉄骨造の建物との平面混構造

(構造的には分離、エキスパンジョイントあり)

・1階から3階までは事務所用途のテナントスペース、最上階の4階は住居

発注者のCSR(企業の社会的責任)として環境配慮の側面から、都市部の建築にも木造化の流れが進んでいます。

企業の環境経営に対する注目も高まっており、国内の森林保全や林業の育成、地方創生などの視点も重要になっています。そうした面からも木材の需要を伸ばすことが課題であり、木造の戸建て住宅だけではなく、都市部の民間の事業用ビルにおいても木造化が求められています。

都市部での木造化においては、「高層化」と「木造耐火」がキーワードになります。今回の計画では4階建てということで「木造における中層建築」を実現した事例です。

参考ページ:「木造建築は「SDGs」や「ESG投資」でも企業価値を高められる理由」はこちらです。

 

木造4階建ての事務所ビル「ヤマサ製菓ビルハピア豊橋」の意匠設計の特徴

木造4階建ての事務所ビル「ヤマサ製菓ビルハピア豊橋」の意匠設計の特徴

計画地は駅からも近い商業地域、防火地域でもあり、本計画では耐火建築物であることが求められます。敷地は、間口が約8m、奥行きが約13mの長方形に近い形状です。

建物は、間口が約7.1mに対して高さが約13mあります。事業として成立させることが求められる中、法規制や建設コスト、施工、イニシャルコスト等も考慮して考え出されたのが、前面道路側を鉄骨造、敷地の奥側を木造(SE構法)で計画する設計です。

参考ページ:「店舗、事務所、倉庫には鉄骨造より木造が「安い、早い、うまい」理由」はこちらです。

 

平面計画(1〜3階)は、L字型の事務所スペースと、共用部(ロビー、エレベーター、PS)で構成されています。鉄骨造の部分に避難階段を鉄骨階段として設置しています。

共用部の短辺方向の壁に耐力壁をまとめて配置することで、事務所スペースの内部空間を最大限利用できる計画となっています。

平面計画(4階)は、住居スペースとしてLDKを中心に寝室や水廻りがコンパクトにまとめられた計画です。

外壁は木造耐火の告示に準じた仕様で、サイディングとガルバリウム鋼板の張り分けにより、モダンな外観デザインを実現しています。

 

中大規模木造のメリット:減価償却期間が短い

中大規模木造のメリット:減価償却期間が短い

本計画は一般的には鉄骨造やRC造で設計するような建物であり、設計者も当初は鉄骨造で考えていたそうですが、住友林業、エヌ・シー・エヌが開催したセミナーで、木造でも4階建てビルを建築できることを知ったこともあり、このような計画内容になったそうです。

木造は減価償却期間が鉄骨造より短く設定されており、年間の経費をより多く計上することができ、節税効果を得ることができます。

本計画においては、周辺地域の特性をふまえて、20数年程度のごく短期間で収益を上げ、解体工事までを見越す必要があり、減価償却期間の短さや解体時のコスト等を考慮した結果、鉄骨造よりコストダウンができるということで、木造が選択されたという経緯があります。

一方で、耐用年数はあくまで税法上で定められた年数でもあり、現代建築ではメンテナンスを適切に行うことで更に長期に使用することも可能です。

参考ページ:「中大規模木造の建設費の概要とコストを抑えるポイント」はこちらです。

 

木造4階建ての事務所ビル「ヤマサ製菓ビルハピア豊橋」の構造設計の特徴

木造4階建ての事務所ビル「ヤマサ製菓ビルハピア豊橋」の構造設計の特徴

SE構法であれば、木造4階建てかつ木造耐火の事務所ビルで求められるスパンの大きい空間にも対応できますし、架構をシンプルにすることが可能です。

SE構法は、独自のSE金物を使用した断面欠損の少ない構造によって柱と梁とを接合し、優れた耐震性能を実現しています。SE構法は表面にネジ切り加工を施した通常のボルトの約2倍の強さを持つSボルトを木材にねじ込み、高強度のSE金物との組み合わせにより、耐震性の高いラーメン構造を実現しています。そうした構造スペックにより、荷重が重くなる木造の耐火建築物にも対応できます。

SE構法の構造ディテール(構造伏図)

今回の木造4階建ての事務所ビルにおけるSE構法の構造設計の主なポイントは下記です。

4階建ての木造(SE構法)と2階建ての鉄骨造の建物との平面混構造

構造的には分離(縁を切る)し、各々で自立できるように構造計画

 

・狭小地の設計施工で、鉄骨造だと接合部の点数が増えてコストアップにつながってしまう

→木造で計画した結果、逆に材長が6m以下の流通規格の材料を中心に設計することができ、コストダウンが可能

 

・鉄骨造と比較して重量の軽い木造でも木造耐火による被覆を行う事によって重量が重くなり、かつ4階建てなので一般的な在来軸組工法では計画すること自体が困難

→SE構法では耐力フレーム・耐力壁を効率的に配置でき、難なく計画することができ、必要な開口も確保することが可能

 

・SE構法の構造躯体の強みを活かした構造設計により、コスト減、納期短縮、施工性向上を実現

→構造的に応力や荷重が集中する部分には、短辺方向に平角柱、大梁を抱き合わせにするディテールを用いることで、特注材を最小限に抑える

SE構法の構造ディテール(軸組図)

中大規模木造の構造を検討する際に、SE構法をうまく使うコツは下記です。

・計画段階からNCNの特建事業部に相談することで、木造建築に関する知見をうまく利用する。ファーストプランの段階から構造計画を相談することで、合理的に構造設計を進められる。

・SE構法は構造用集成材の中段面部材(柱は120mm角、梁は120mm幅)が標準なため、住宅と同等の部材寸法でスパン8m程度までの空間を構成できるコストパフォーマンスをうまく活用する。スパンが10mを超える空間は、特注材やトラス、張弦梁などを活用する。

 

木造4階建ての事務所ビルにおける木造耐火のポイント

木造4階建ての事務所ビルにおける木造耐火のポイント

都市部で木造で計画する際には、まず耐火要件を確認する必要があります。木造は耐火建築物・準耐火建築物・その他建築物と要求される耐火性能によって、意匠性、コスト、工期等に大きく影響してきます。計画の初期段階より、木造の耐火要件を押さえておくことによって、以後の計画をスムーズに進めることが可能です。

木造4階建ては1時間耐火構造が要求され、今回の計画では2018年に告示化された耐火構造(国交省告示第472号)が採用されており、建物の主要構造部を21mm(一部は25mm)の強化石膏ボードの二重貼りで被覆しています。

木造耐火構造を計画する場合、内部を石膏ボードで覆う必要があるため、空間の確保や、耐火被覆分のコストアップについて事前によく検討をしておく必要があります。

木造建築は木を現しとすることで木造の良さを感じることができる考え方もありますが、計画の背景、敷地条件によっては木を現すことができない、木造耐火であってもメリットが出てくる場合があり、木造の技術の高まりによってよりそのメリットを享受しやすくなっています。

参考ページ:「木造の耐火建築物は「木を見せる」にこだわらず大臣認定工法や告示を使うべき理由」はこちらです。

 

法制度面で中高層木造の追い風になりそうなのが、2019年の改正建築基準法です。新設された「75分・90分準耐火構造」は、これまで耐火構造が求められたケースで、一定の性能を満たせば準耐火構造で建てられることになりました。

可能性が広がるのは都市部に限りません。建築基準法21条の改正によって、周囲に延焼を防止できる有効な空き地がある建物は、耐火構造の対象から除外されました。

参考ページ:「木造の準耐火建築物の可能性が広がる!改正建築基準法の解説」はこちらです。

 

まとめ

木材の利用促進が期待される中大規模の「都市木造」は、いよいよ都心部での計画が増えてきました。その背景には、技術・構法の発達に加え、世界的に注目されるCSR(企業の社会的責任)や、SDGs(持続可能な開発目標)の取り組みがあります。

木材の活用は環境貢献につながるという認識が企業に浸透しつつあります。今後もこの動きは加速、拡大する見込みです。

中大規模木造を計画する場合は、プロセスに応じたポイントを押さえることが重要です。中大規模木造にこれから取り組む実務者の皆様には、下記のような疑問や悩みがあるのではないかと思われます。

・耐火要件を考える

・高層化を考える

・施工者を考える

参考ページ:「木造で事務所を計画するための関連法規まとめ」はこちらです。

 

集成材構法として実力・実績のある工法の一つが「耐震構法SE構法」です。SE構法は「木造の構造設計」から「構造躯体材料のプレカット」に至るプロセスを合理化することでワンストップサービスとして実現した木造の工法です。

「耐震構法SE構法」へのご相談はこちらです。

 

また構法を問わず、木造の構造設計から構造躯体材料のプレカットに至るスキームづくりに取り組む目的で「株式会社木構造デザイン」が設立されました。構造設計事務所として、「⾮住宅⽊造専⾨の構造設計」、「構造設計と連動したプレカットCADデータの提供」をメイン事業とし、構造設計と⽣産設計を同時に提供することで、設計から加工までのワンストップサービスで木造建築物の普及に貢献する会社です。

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