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SE CONSTRUCTION耐震構法SE構法

SE構法、木造耐火の認定こども園の事例紹介「七里ふたばこども園」

  • SE構法、木造耐火の認定こども園の事例紹介「七里ふたばこども園」 -

SE構法の構造スペックをうまく活用することで、木造の在来工法では実現が難しい大空間、大開口、大スパン、木造耐火などを実現することができます。例えば幼児向け施設などの低層の建築物を計画する際に、鉄骨造ではコストや工期に対応できない場合は、木造(SE構法)が有効な選択肢となります。このコラムでは構造躯体にSE構法を採用した認定こども園の事例紹介をしながらSE構法の構造設計や木造耐火への対応等のポイントについてお伝えします。

 

<このコラムでわかること>

認定こども園「七里ふたばこども園」の概要

認定こども園「七里ふたばこども園」の意匠設計のポイント

SE構法、木造耐火認定こども園の構造設計のポイント

認定こども園における木造耐火のポイント

・まとめ

 

認定こども園「七里ふたばこども園」の概要

認定こども園「七里ふたばこども園」の概要

「七里ふたばこども園」は埼玉県さいたま市の幼保連携型認定こども園です。

<「七里ふたばこども園」の概要>

・延べ面積:1,410.64m2

・階数:2階建て

・主体構造・構法:木造軸組構法(SE構法)

・定員:270人(人数構成:0歳児6名、1歳児6名、2歳児17名、保育園該当の幼児が17名×3クラスで51名、幼稚園該当の幼児が60名×3クラスで180名)

幼保連携型認定こども園は、内閣府が改正認定こども園法に基づき、「学校及び児童福祉施設としての法的位置付けを持つ単一の施設」と定義されています。

3~5歳児を預かる教育施設としての幼稚園と、0~5歳児を預かる児童福祉施設としての保育所をひとつに統合した施設です。

幼保連携型認定こども園は、0~2歳児には保育を、3~5歳児には幼稚園児と保育所児を分け隔てなく同じ教室で同じカリキュラムの教育を提供する施設です。保育所に通いながら幼稚園と同じ教育を受けることができるという点に特徴があります。

幼保連携型認定こども園に入園してくる子どもたちは多様です。子どもの認定区分によって入園手続きが違いますし、来園時間と帰宅時間も違います。保育認定の子どもたちの事情もさまざまです。園側のマネジメントには細やかな配慮が求められます。

 

認定こども園「七里ふたばこども園」の意匠設計のポイント

認定こども園「七里ふたばこども園」の意匠設計のポイント

配置計画は、幼保連携型認定こども園としての保育園と幼稚園の統合の象徴として、既存樹木をシンボルツリーというかたちで残した計画となっています。

敷地形状から建物の機能性と園庭の広さ等のバランスを考慮して、平面計画はそのシンボルツリーを囲む円弧状となっています。

構成は、9,500mm幅の保育室に2,300mm幅の廊下を沿わせ、それを基本単位として、建物の一部を湾曲させています。

認定こども園「七里ふたばこども園」の意匠設計のポイント 建物へのアプローチ

建物へのアプローチは、南門から大きな庇と藍色のタイルで仕上げた壁面に導かれてエントランスホールに向かいます。庇は雨を避ける機能に加え、2階建ての壁面ボリュームを感じさせないスケール調整の役割も果たしています。

壁面が左にカーブしかけたところにエントランスホールがあります。その右手には円形広場が設けられ、送迎バスを待つ子どもたちの待機所も兼ねています。

認定こども園「七里ふたばこども園」の意匠設計のポイント エントランスホール

エントランスホールの正面に立つと、園庭に面する大開口の先に奥の園庭の木々が見えます。園庭中央部には既存樹木が密生し、爽やかな木陰をつくり出しています。

かつての幼稚園にあった雑木林を、新設にあたって一部残し、それらを囲むように建物を配置しています。園庭に面した廊下には開口が多く設けられて、明るい内部空間を実現しています。

認定こども園「七里ふたばこども園」の意匠設計のポイント

幼保連携型認定こども園の設計を行う場合、幼稚園・保育所の基準を同時に満たす必要があります。建築基準法以外の基準として、幼稚園には「幼稚園設置基準」、保育所の基準は「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」があります。

この幼保連携型認定こども園は、1階に3、4歳児の保育室、2階に0~2歳児と5歳児の保育室があります。室面積は0~2歳児が保育所基準、3~5歳児が幼稚園基準で定められています。

 

参考:「木造で保育所を計画するための関連法規まとめ」はこちらです。

 

参考:「木造で幼稚園を計画するための関連法規まとめ」はこちらです。

 

SE構法、木造耐火の認定こども園の構造設計のポイント

SE構法、木造耐火の認定こども園の構造設計のポイント

木造の認定こども園では、構造強度の高い金物工法を採用することが必要です。SE構法であれば認定こども園で求められる保育室や遊戯室などスパンの大きい空間にも対応できますし、架構をシンプルにすることが可能です。

また耐力壁をなるべく外壁に確保して内部の耐力壁を最小限に抑え、内部の非耐力壁を間柱で構成することで、間取りの変更などが行いやすいメリットもあります。

今回の認定こども園におけるSE構法の構造設計の主なポイントは下記です。

・曲線の部分は、特注金物を製作して「多面体」として設計、架構に対応しています。

SE構法、木造耐火の認定こども園の構造設計のポイント  曲線 多面体

参考:「耐震構法SE構法は斜辺やR壁の平面計画に対応可能」はこちらです。

 

・意匠設計の壁位置が上下階で揃わない計画となっていることから、制度変更による間取りの変更も考慮すると、界壁を耐震要素にしないことが求められました。この建物の耐震壁は、1階は水回りと階段室と職員室、2階は水回りと多目的ホール周辺に一部設けて大半は外周部で取る構造計画となっています。

・梁は保育室の奥行方向に9,500mmのスパンを飛ばしています。梁間は場所によって異なり1,650mm、1,720mm、1,820mm、湾曲部は外側で2,098.5mmです。

・エントランスホールだけは例外的に桁行方向に梁を架けています。その理由は、ひとつはエントランスホールの上部に多目的ホールが外側に張り出すように載っているため、奥行方向に梁を架けようとすると長さが9,500mm+2,700mmとなり梁成が大きくなり過ぎることです。もうひとつの理由はその梁を受けるY-2通りの梁成が大きくなってエントランスから園庭への視線を構造体が邪魔してしまうからです。ゆえにあえてここだけ梁の架け方を変えています。

SE構法、木造耐火の認定こども園の構造設計のポイント

中大規模木造の構造を検討する際に、SE構法をうまく使うコツは下記です。

・計画段階からNCNの特建事業部に相談することで、木造建築に関する知見をうまく利用する。

・ファーストプランの段階から構造計画を相談することで、合理的に構造設計を進められる。

・SE構法は構造用集成材の中段面部材(柱は120mm角、梁は120mm幅)が標準なため、住宅と同等の部材寸法でスパン8m程度までの空間を構成できるコストパフォーマンスをうまく活用する。

・スパンが10mを超える空間は、特注材やトラス、張弦梁などを活用する。

・準耐火建築物の場合、燃えしろ設計についてはSE構法独自の特許があり、梁幅を変えずに梁せいをあげる設計で可能なため標準材での対応も可能となり、あまりコストアップにならない利点も活用する。

 

認定こども園における木造耐火のポイント

認定こども園における木造耐火のポイント

認定こども園を木造で計画する際には、まず耐火要件を確認する必要があります。木造は耐火建築物・準耐火建築物・その他建築物と要求される耐火性能によって、意匠性、コスト、工期等に大きく影響してきます。計画の初期段階より、木造の耐火要件を押さえておくことによって、以後の計画をスムーズに進めることが可能です。

幼保連携型認定こども園の場合、2階に保育室、遊戯室を設置しなくてはならない計画では、幼稚園設計基準により「耐火建築物」とすることが求められるため、「木造耐火」の仕様を満たす必要があります。

木造の耐火建築物は、耐火要件を満たすために使用する石膏ボードの量などが大幅に増えることもあり、建物の荷重は通常の木造よりもかなり重くなります。建物重量が重くなることから耐震性能の確保が難しくなったり、耐火被覆材の貫通、穴あけが制限されたりしますので、早い段階から構造設計、設備設計とのすり合わせが必要です。

参考:「木造の耐火建築物は「木を見せる」にこだわらず大臣認定工法や告示を使うべき理由」はこちらです。

 

SE構法は、独自のSE金物を使用した断面欠損の少ない構造によって柱と梁とを接合し、優れた耐震性能を実現しています。SE構法では表面に凹凸加工を施した通常のボルトの約2倍の強さを持つSボルトを木材にねじ込み、高強度のSE金物との組み合わせにより、耐震性の高いラーメン構造を実現しています。そうした構造スペックにより、荷重が重くなる木造の耐火建築物にも対応できます。

敷地の大きさや運用の考え方などでどうしても2階に保育室、遊戯室を設置しなくてはならない場合はやむを得ませんが、工期やコストを考えるとなるべく幼保連携型の認定こども園は「保育室、遊戯室は1階」に計画して準耐火建築物で設計することがベターとなります。

参考:「認定こども園を木造で計画するポイントは「保育室は1階」と「可変性の高い空間」はこちらです。

 

まとめ

中大規模木造を計画する場合は、プロセスに応じたポイントを押さえることが重要です。中大規模木造にこれから取り組む実務者の皆様には、下記のような疑問や悩みがあるのではないかと思われます。

・耐火用件を考える

・大スパンを考える

・施工者を考える

参考ページ:「保育園・幼稚園の木造建築」はこちらです。

 

集成材構法として実力・実績のある工法の一つが「耐震構法SE構法」です。SE構法は「木造の構造設計」から「構造躯体材料のプレカット」に至るプロセスを合理化することでワンストップサービスとして実現した木造の工法です。

「耐震構法SE構法」へのご相談はこちらです。

 

また構法を問わず、木造の構造設計から構造躯体材料のプレカットに至るスキームづくりに取り組む目的で「株式会社木構造デザイン」が設立されました。構造設計事務所として、「⾮住宅⽊造専⾨の構造設計」、「構造設計と連動したプレカットCADデータの提供」をメイン事業とし、構造設計と⽣産設計を同時に提供することで、設計から加工までのワンストップサービスで木造建築物の普及に貢献する会社です。

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