木造塾「建築基準法改正で、今できること」を開催
2019年10月25日と28日に木造塾「建築基準法改正で、今できること」を住友林業株式会社、株式会社吉野石膏様との共催で開催いたしました。今回の改正建築基準法では単に耐火性能の緩和ではなく、建物の用途や規模に応じた設計が可能となり、燃えしろ設計で木材の現しも可能になりました。これまで1時間耐火構造が求められた場合でも、避難や倒壊、延焼防止措置などを講じた準耐火仕様で設計できるようになります。このコラムでは、このセミナーの詳細についてレポートさせていただきます。
<このコラムでわかること>
・吉野石膏様による「防耐火の改正内容と耐火建築物との比較」
・木造耐火建築物の防火被覆
・建築基準法改正の概要
・耐火仕様と新しい耐火仕様との比較
・三協立山様による「開口部廻りの納め方」
・住友林業様による「木材保護塗料S-100(シリコン系強撥水型塗料)」
吉野石膏様による「防耐火の改正内容と耐火建築物との比較」
吉野石膏DDセンター設計開発部の長島諭様より「防耐火の改正内容と耐火建築物との比較」について講演していただきました。
テーマは下記の3点です。
1.木造耐火建築物の防火被覆
2.建築基準法改正の概要
3.耐火仕様と新しい耐火仕様との比較
建築基準法改正の前と後で、具体的にどのように変わったのかを詳しく説明していただきました。
※この講演のレポートでお伝えする内容は、確認申請、その他の法的根拠として扱いいただくことはお避けください。記載内容について判断が分かれることもありますので、あくまでも参考として取り扱いください。また不具合が生じた場合も責任は負いかねますのでご了承ください。
木造耐火建築物の防火被覆
木造の耐火建築物のつくり方について、わかりやすく解説していただきました。そのポイントは下記となります。
<耐火構造の選定:「告示」もしくは「認定工法」のいずれかを選択>
・1時間耐火は告示、2時間以上の耐火は認定工法の利用が多い印象。
・工法としては、被覆型、ハイブリッド型、燃え止まり型、個別認定がある。
<1時間耐火における告示「平12建告1399号仕様」の概要>
※以下の被覆材は吉野石膏様の製品を使用する場合
・間仕切り壁は、木下地両面に強化せっこうボード(ひる石入り)21mmの2枚貼りが基本。
・外壁は、木下地両面に強化せっこうボード(ひる石入り)21mmの2枚貼りが基本で、外壁の選択肢は金属板、ALC、窯業系サイディング、モルタル塗り、漆喰塗りがある。
・外壁側に面する石膏ボードには、高防水、高防カビ性能強化石膏ボードがあり、水に関しては基本的に問題ない。
・独立柱は、強化せっこうボード(ひる石入り)の総厚が46mm。
・梁は、強化せっこうボード(ひる石入り)の総厚が46mm。
・床は、梁の上部を「床上」、天井下地の下部を「床下」とすると、床上は強化せっこうボード(ひる石入り)の総厚が42mm、床下は強化せっこうボード(ひる石入り)の総厚が46mm。
・屋根は、天井面に強化せっこうボード(ひる石入り)の総厚が27mm。
・階段は、踏面の上部を「床上」、段裏の下部を「床下」とすると、床上は強化せっこうボード(ひる石入り)の総厚が27mm、床下は強化せっこうボード(ひる石入り)の総厚が27mm。階段は鉄骨にすることも可能。
<木造耐火建築物の設計・施工の実務上の注意点>
・石こうボードの重さに要注意。1枚あたりの枚数に加え、使用する枚数が大量になることから、建物全体の重量が通常の木造建築と比較してとても重くなる。
・木造耐火建築物のルール
「規定時間後も倒壊してはならない。構造部が焦げないこと」が大原則。燃え代設計はNG。
・木造防・耐火設計指針
開口部や貫通部を極力減らすような設計が望ましい。
・木造防火建築物の設計のポイント
二重天井で配線、配管経路を確保する
・施工の手順
躯体工事(建て方)と被覆工事(ボード張り)がセットになるイメージ。
・外部建具周りの納まり
間柱(木下地)と建具枠の間にもは必ずせっこうボード2枚貼りが必要。
・バルコニーの扱い
避難上有効なバルコニーは「床扱い」
その他のバルコニーは「屋根扱い」
・外壁の貫通部例
エアコンを引き渡し後に設置する場合は、冷媒用のスリーブ準備が必須。後からのエアコン設置で通常の開口部を空けた場合、木造耐火建築物としてNG。
・ダウンライト納まり
納まりを考えると二重天井を推奨。
・スイッチ、コンセプト
開口面積ごとに納まりの規定あり。木造耐火用の既製品ボックスあり。
・ダクト配管
グラスウールなどの耐火被覆材で被覆する必要あり。
・壁床の貫通例
貫通部を減らす設計が求められる。貫通部をなるべくまとめることで被覆の施工手間が減る。
・非耐火壁の利用
非耐火壁にスイッチ、コンセント、配線経路をまとめることで、耐火壁への開口を減らす。
・PS等の竪穴区間
片側から施工が可能な乾式耐火間仕切り壁を活用。
・石膏ボードの使用量
おおまかな目安として、床面積(m2)の約10倍の枚数の石膏ボードが必要。
建築基準法改正の概要
建築基準法改正について、わかりやすく解説していただきました。そのポイントは下記となります。
<建築基準法改正の背景と対策>
・建築物、市街地の安全性の確保
・既存建築ストックの活用
・木造建築を巡る多様なニーズへの対応
<防耐火の改正項目>
・倒壊防止:大規模の建築物の主要構造部
・避難安全:耐火建築物としなければならない特殊建築物
・延焼抑制:防火地域および準防火地域内の建築物
<建築基準法改正の内容>
・耐火構造等としなくてもよい範囲の拡大
高さ16m以下かつ3階建て以下、延焼防止上有効な空地の確保。
・中層木造建築物で木材の表しも可能に
建物の総合評価により、4階建ても「燃え代設計」で表し可に。
・準防火地域内での準耐火構造の建ぺい率緩和
準防火地域内の準耐火建築物・耐火建築物も建ぺい率10%緩和。
・防火床の新設
1,000m2超えのその他の建築物に防火床が追加され、混構造による区画の形成が可能。
耐火仕様と新しい耐火仕様との比較
耐火仕様と新しい耐火仕様との比較について、わかりやすく解説していただきました。そのポイントは下記となります。
・準耐火建築物と耐火建築物のあいだに「準耐火建築物+α」が追加
準耐火建築物+α:耐火建築物と同等性能の建築物。準耐火建築物+避難安全・消火設備・消火活動支援措置等。※現状は仕様規定のみ、性能基準は告示が未例示。(2019年10月時点)
・外壁開口部の面積制限
隣地境界線・道路中心線からの距離sによる開口率。
・燃えしろ寸法
75分準耐火の場合は「残存断面寸法200mm以上」という規定に注意。
三協立山様による「開口部廻りの納め方」
三協立山株式会社の中田満様にわかりやすく解説していただきました。そのポイントは下記となります。
<木造におけるアルミサッシの考え方>
・住宅用サッシは木造用サッシ、ビル用サッシは非木造サッシが基本
・非住宅は低層建築(1,2階)がほとんどなので住宅用サッシ活用を中心で考えることが基本
・住宅用サッシでも窓の種類・連段窓対応は可能(制約条件はあり)
<木造における開口部の注意点>
・止水ラインの構築が重要
・耐火木造の納まりには注意が必要
・カーテンウォールについては個別物件対応
住友林業様による「木材保護塗料S-100(シリコン系強撥水型塗料)」
住友林業株式会社の佐藤純次様にわかりやすく解説していただきました。そのポイントは下記となります。
<木材保護塗料について>
・樹脂による違い:アクリル系、ウレタン系、シリコン系、フッ素系
<木材保護塗料S-100とは?>
・S-100は、日本マテリアルエイド株式会社の木材保護塗料ウッドエイドシリーズを、住友林業が共同で改良したことにより生まれた、高性能な木材保護塗料。
<木材保護塗料S-100の特徴>
・木目を活かせる半透明の高耐候性塗料
・撥水と潤滑性による防汚性
・作業性(工事塗装に対応)
・メンテナンスが容易
<木材保護塗料S-100の留意点>
・性能確保のための必要な塗布量
まとめ
本セミナーには、建築設計事務所様や建設会社様など、中大規模木造に関心のある建築実務者の方に多数ご参加いただきました。上記の講演に加えて、株式会社エヌ・シー・エヌからは、構造に関する建築基準法改正の要点に加えて、木構造のポイント、非住宅木造を設計するための注意点、SE構法の概要、NCNのサービスなどについてご紹介させていただきました。
本セミナーは、住友林業株式会社様、吉野石膏株式会社様、三協立山株式会社様、旭ファイバーグラス株式会社様、ニチハ株式会社様のご協力により実現しました。この場を借りて改めてお礼申し上げます。
NCNへのご相談は無料となっておりますので、お気軽にお問い合わせください。