店舗、事務所、倉庫には鉄骨造より木造が「安い、早い、うまい」理由
建設業の抱える大きな問題として、人手不足や高齢化、鋼材の高騰などがあります。状況はかなり深刻で、鉄骨造や鉄筋コンクリート造においてはコストや工期を明確に示すことが難しい状態です。特に、高品質で低コスト、短工期が求められる事務所、倉庫、店舗等を、今までのように鉄骨造で設計・施工することが困難です。そこで有効な工法が「システム化された木造」です。木造の持つ規格化、標準化された設計・施工技術により、中大規模木造で「うまい、早い、安い」建築が実現できます。
<このコラムでわかること>
・ 深刻な建設業のコスト上昇、工期長期化問題
・ 店舗、事務所、倉庫は鉄骨造か?木造か?
・ 店舗、事務所、倉庫は木造にコスト面で優位性がある
・ 店舗、事務所、倉庫を木造で計画するメリット
・ システム化された木構造技術「耐震構法SE構法」
・ SE構法で実現できる木造建築のデザイン
・ SE構法を採用した店舗、事務所、倉庫の施工実例
・ 設計事務所の皆様へ「鉄骨造から木造への流れ」
深刻な建設業のコスト上昇、工期長期化問題
建設業の抱える大きな問題として、慢性的な人手不足や高齢化による職人不足、建築用鋼材の需要増加による価格高騰があります。
建築用鋼材の価格高騰は、資材調達の予算を圧迫し、計画が後ずれしたり工事が止まることもあります。そこに人手不足、輸送コストの上昇も相まって、工期が遅延、長期化する原因となっています。
状況はかなり深刻で、鉄骨造や鉄筋コンクリート造の工事では、コストや工期を明確に示すことが難しい状態です。
建設資材の価格高騰は、2013年以降は不動産市況の好調を経て、東京オリンピック・パラリンピック競技施設の建設工事や、訪日外国人旅行(インバウンド)の宿泊需要を見込んだホテルの着工数の増加などが鋼材の品薄原因となって値上がりを続け、現在も2005年以降の最高水準で推移しています。
東北、九州をはじめとした震災や風水害の復興工事、東京都心を始め、都市部で大規模な再開発プロジェクトが進行しており、今後も鋼材の需要は引き続き堅調と考えられます。
また、建設業界に限らず、社会全体で改善への取り組みが求められる問題ですが、工期の適正化、週休二日制の導入、技能や経験にふさわしい処遇など労働環境の改善は人件費に関わる課題です。人件費の上昇は、建設コストの上昇に影響を与える一因となります。
店舗、事務所、倉庫は鉄骨造か?木造か?
様々な要因によって建設コストが上昇傾向にある中、これらの問題を解決していくため、生産性の向上が求められています。
特に、高品質で低コスト、短工期が求められる店舗、事務所、倉庫等を、今までのように鉄骨造で設計・施工することが困難です。
建設工事の生産性向上に重要なテーマは、規格化と標準化です。
実は設計も施工も規格化、標準化されているのが木造です。木造は910mmモジュールが基本であり、それを前提に建材が製作されていますので設計もそれを前提に進めることができます。
現在の木造では構造部材の加工生産をプレカット工場で行うことが当たり前になっています。コンピューター制御の機械プレカットにより高精度な加工が施され、きれいに梱包されて現場に出荷されるます。木造の構造躯体の施工は、とても合理的かつ短い日数で施工が可能です。
基礎の施工においても、木造の自重が鉄骨造よりも軽いことから、低層かつスパンがあまり大きくない建築物であれば、住宅レベルのベタ基礎での施工となりますので、施工も早いですし、コストも大幅に削減できます。
木造の持つ規格化、標準化された設計・施工技術により、中大規模木造で「うまい、早い、安い」建築が実現できます。
店舗、事務所、倉庫は木造にコスト面で優位性がある
店舗、事務所、倉庫においては、低層の建築物(主に平屋)で整形のシンブルな形状の建築物がほとんどです。そうした建築物においては事業性の観点から、特に短い工期かつローコストでの対応が求められます。
短い工期かつローコストを実現するために、今までは鉄骨造が望ましいと判断されていましたが、建設コストは「ヒト(人件費)、モノ(建材費、機器費など)、経費(利益)」の合計で構成されることを考えると、鉄骨造の施工に関する人件費、鋼材の上昇は大きなマイナス要素となります。
木造の建設コストを考えると、人件費の多くを占める大工さんの人件費はあまり変動がありません。大工さんは、普段は住宅の仕事などをしている人がほとんどのため、建設会社や工務店との取り決めにより施工費の変動が少ないのです。
木造の構造部材のコストは、構造スパンやモジュールを意識して設計すれば、住宅用として一般に流通している木材を利用できますので、鉄骨造よりもかなり安くなります。
店舗、事務所、倉庫などの規模によりますが、大きな構造スパンがある場合は大断面の特注材を用いる必要がありコストがその部分だけコストが上昇しますので注意が必要です。
店舗、事務所、倉庫を木造で計画するメリット
店舗、事務所、倉庫を木造で計画するメリットについてまとめます。
・品質
木造が持つ、部材の規格化と建築プロセスの標準化は、品質面においてメリットがあります。プレカット工場で構造部材を安定した管理体制で量産できるため、高い品質を確保できます。
・コスト
木造は、コストダウンにつながります。鉄鋼をはじめとする資材価格の変動は、建設業界における大きなリスクです。小規模木造、中大規模木造でも、特注材以外は一般流通材を活用しますので安定供給されており、コストの変動も少ないのです。
・工期
木造は鉄骨造や鉄筋コンクリート造と比較して、工期の短縮が図れることも利点です。木造の場合、プレカットされた規格部材を現場で組み上げる施工は、スムーズな作業・進行に貢献し、短期間での完成を実現できます。また、工期の短縮は人件費など経費を安くでき、コスト削減を後押しします。
・人材
住宅でも中大規模木造でも「木に関する施工方法」は共通ですので、普段は中大規模木造の木工事をしている大工さんでも、住宅や小規模木造の現場で施工してもらうことが可能となり、施工の「人」の問題も解決できます。
システム化された木構造技術「耐震構法SE構法」
耐震構法SE構法とは?
「耐震構法SE構法」は、構造計算された耐震性の高い木造建築を実現するエヌ・シー・エヌ独自の建築システムです。優れた耐震性能と自由度の高い空間、両方を兼ね備えた最先端の木構造技術です。
SE構法の特徴は次の6つです。
1.一棟ごとに鉄骨造や鉄筋コンクリート造と同じ手法で構造計算している。地震だけはなく風なども想定して計算する。一般財団法人日本建築センターの構造評定を取得。
2.柱と梁を剛接合するラーメン構造を木造に取り入れている。通常のボルトの2倍の強さを持つSボルトを全棟に採用し、高強度のSE金物の組み合わせにより、ラーメン構造を実現。
3.強度が高く、品質の安定した「構造用集成材」を採用し、独自開発のSE金物で強固に接合。
4.集成材とSE金物により高い耐震性を確保したまま、⼤空間が実現する。
5.構造設計から部材供給・施⼯・検査・性能保証まで⼀括管理できるシステムであること。主要工程でSE構法の定める品質基準を満たしているかをSE構法施工管理技士が厳しく施工管理。
6.地震による倒壊0件の実績。中越地震や東日本大震災、熊本地震においても、SE構法で建てられた住宅の倒壊0件。
SE構法について詳しくはこちらのページをご参照ください。(下記のページへリンクを貼ります)
SE構法で実現できる木造建築のデザイン
今まで木造では難しいと考えられていた、デザイン性に優れた木造建築物を、SE構法は「技術」でサポートし、店舗などの商業施設、事務所や倉庫なども自由度の高いデザイン、設計を木造で実現しています。
<SE構法で可能なデザインの一例>
- ビルトインガレージ
- 狭小間口
- オーバーハング
- 屋上利用
- 大空間・大開口
- 吹き抜け
- 勾配天井
- スキップフロア
- あらわし
SE構法では、木造でありながら上記のような空間構成が実現できますので、さまざまな店舗、事務所、倉庫の設計が可能になります。
SE構法を採用した店舗、事務所、倉庫の施工実例
・店舗:「ベーカリー&レストラン沢村 旧軽井沢店」
「ベーカリー&レストラン 沢村 旧軽井沢店」は旧軽井沢の入り口にあたるロータリーの南西に建つ、レストラン、ベーカリー厨房、ベーカリー売り場からなる、600㎡ほどの商業施設です。
在来工法と比べ、SE構法のプランは、柱も鉄骨造で検討していた時よりも細く、吹き抜け部分も梁を掛けなくても可能だという事で、コストとデザインの両面を満足させるSE構法を採用してもらいました。
同じ木造でも、構造計算や立体的な構造解析を行っているSE構法のメリットが生かされた好例といえます。
・事務所:「クリーンライフ本社ビル」
「クリーンライフ本社ビル」は、大阪市都島区に建つ3階建てのオフィスです。立地は住宅や商店などの小規模建物が密集する地域です。
スキップフロアということで、階段の数が多く、通したいところに梁が通らない、外力に対する梁と柱の接合部が少ないことでひとつひとつの接合部に対しての負担が増える等の条件があり、それを克服するために門型のフレームを採用した事例です。
まず、作りたい空間があり、構造がそれに応え、空間を作り込む段階で構造に沿った配置を実現させており、デザインと構造がうまく呼応した事例です。
・倉庫 :「 DAI3 福島営業所」
「 DAI3 福島営業所」は、福島県福島市に建つ2階建ての事務所兼倉庫です。
倉庫は、スパンが大きく、壁の少ないオープンな空間が求められるため、今までは鉄骨造で計画されることが多かった用途の建築です。木造で計画することで、コストを抑えることが可能になります。
設計事務所の皆様へ「鉄骨造から木造への流れ」
建築需要の増大と人手不足の中、予算や工期の条件が折り合う建築会社を探すことが難しくなっています。建築会社間の競争も高まっており、設計の柔軟性も求められています。
コストや工期の問題への対処方法として、鉄骨造から木造へ工法を変更する非住宅の建築物が増えています。また、伐採期を迎えた日本の森林の活用、公共建築物木材利用促進法の施行といった木造化を促進する政策も次々と施行されています。
木造の持つ規格化、標準化された設計・施工技術は、多様な建物や空間を低コストで実現することができます。特に、高品質で低コスト、短工期が求められる店舗、事務所、倉庫を、確実に設計・施工するために有効な工法が「システム化された木造」であるSE構法です。
まとめ
SE構法は全ての案件に構造計算を行い耐震性を確認する、地震に強い「耐震構法」です。
その耐震性能と可能となるプランの豊富さは、他社との差別化を強化します。
店舗、事務所、倉庫の新築工事において、大空間、大開口、ビルトインガレージ、吹き抜け、オーバーハング、スキップフロアなどお客様の希望するプランでお困りの場合は、ぜひ一度ご相談ください。
専任の構造担当者から、様々なプランに対して最適な柱や耐力壁の量をご提案させていただきます。
SE構法であれば、上記を含む様々なプランに対応可能です。
エヌ・シー・エヌへのご相談は無料です。
鉄骨造から木造への変更、SE構法についてなど、お気軽にお問い合わせください。