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WOODEN STRUCTURE中大規模木造

中大規模木造の建設費の概要とコストを抑えるポイント

  • 中大規模木造の建設費の概要とコストを抑えるポイント -

中大規模木造を適正なコストで実現するためには、木造に関するコスト感覚を掴むことが重要です。年々、発注者のコスト意識も高まっておりますし、設計者が工事費を把握しながら設計を進めることが木造化の流れの中では特に求められます。非住宅の用途では、当初は鉄骨造あるいは鉄筋コンクリート造で計画していた建物を、コストダウン等を期待して木造に切り替えることが多いと思われます。そこでこのコラムでは、木造における建設費の概要と、木造にすることで他工法よりコストダウンできる要素についてお伝えします。

 

<このコラムでわかること>

中大規模木造構造躯体費の割合は工事費全体の10%前後

中大規模木造コスト抑制には防火・耐火対策が重要

中大規模木造コストダウンのポイント1地盤改良工事

中大規模木造コストダウンのポイント2基礎工事

・中大規模木造コストダウンのポイント3構造躯体工事

・まとめ

 

中大規模木造の構造躯体費の割合は工事費全体の10%前後

中大規模木造の構造躯体費の割合は工事費全体の10%前後

中大規模木造建築のコストの中心である本体工事費は、大きく躯体工事費、仕上げ工事費、設備工事費の3つに分けられます。

そのうち、最も大きな割合を占めるのが、約40%の躯体工事費です。中大規模木造では、木工事の費用が全体の30%前後を占めます。

木工事費の主な内訳は下記です。

・構造材:土台、柱、梁、専用金物、プレカット加工など

・羽柄材:根太・間柱・垂木など

・造作材

下地用合板・ボード類

大工手間等

・その他:金物・釘・ボンドなど

中大規模木造のコストでよく語られる構造材ですが、実はその割合は工事費全体の10%前後のことが多いです。

設計内容や用途、規模によって各工事費の割合は微妙に異なりますが、一般的な形状の中大規模木造建築であれば、この割合に大きな変化はありません。しかしながら、大空間や大スパンによる特注材利用や、建物が矩形ではない特殊形状の場合には、躯体工事費の割合が高くなる傾向にあります。

躯体工事費の割合が高くなると、見積り金額の超過が大きくなりやすく、仕上げ工事費を下げても十分な減額にならないことが多いです。

現実的な実務の進め方としては、設計段階での概算見積りの際は、構造躯体のかたちをおおむね決めた上で構造躯体の概算金額を把握することで、全体工事費と構造躯体費のバランスを判断することが必要です。

一般的なコストダウンの手法では、仕上げ工事や設備工事のグレードを落とすことで進められることもあります。一方で省エネを重視する傾向も年々高まり、温熱環境にかかわる高性能建材は避けては通れません。そのため、仕上げ工事や設備工事によるコストダウンにも限界はあります。

 

中大規模木造のコスト抑制には防火・耐火対策が重要

中大規模木造のコストを検討する際に、必ず考えておかなければならないのが「防火・耐火」です。

鉄骨やコンクリートに比べて燃えやすい木材(木は火に弱いということではない)という材料を使って、法規の基準を満たした火災に強い建築をつくることです。

防火・耐火の性能に関しては、耐火建築物、準耐火建築物、その他建築物という分類があり、防火地域の指定、建物の面積、階数、用途に応じて、防火・耐火の規制が定められています。

このため、木材を現しで使う場合などには、防火・耐火のコストをできるだけ上げないように、建築計画を慎重に検討する必要があります。

「木造の準耐火建築物の可能性が広がる!改正建築基準法の解説」はこちらです。

 

中大規模木造のコストダウンのポイント1:地盤改良工事

中大規模木造のコストダウンのポイント1:地盤改良工事

敷地が軟弱地盤だった場合、地盤改良工事を行う必要があります。中大規模木造は、建物重量が鉄骨造あるいは鉄筋コンクリート造と比較して大幅に軽いことから、求められる地耐力が小さくなるため地盤改良工事をコストダウンすることができます。

地盤改良が必要になった場合、中大規模木造においては主に下記のいずれかの地盤改良工事を行うことになります。いずれの方法も、鉄骨造あるいは鉄筋コンクリート造と比較して大幅にコストダウンが可能です。

1.「表層改良」
軟弱地盤の層が地表から2m未満など浅い場合には、セメント系固化材を土壌に混ぜて地盤を固めます。

2.「柱状改良」
表層改良ができない敷地や軟弱地盤が地表から2~8m程度の場合は、良好な地盤の層までコンクリート杭を設け、基礎と連結させます。

3.「鋼管杭改良」
支持層までの距離が長い場合や、地盤の硬さが敷地内で不均一な場合には、鋼製の杭を良好な地盤まで打ち込み、基礎を支えます。

 

中大規模木造のコストダウンのポイント2:基礎工事

中大規模木造のコストダウンのポイント2:基礎工事

中大規模木造は、建物重量が鉄骨造あるいは鉄筋コンクリート造と比較して大幅に軽いことから、基礎断面を小さくすることができます。

中大規模木造の基礎においては、ベタ基礎を採用するケースが増えています。ベタ基礎は建物の真下全体がコンクリートの耐圧板で覆われます。そのため、建物の荷重を底面全体で受け止めることができ、負荷が分散して安定性に優れ、不同沈下を起こしづらいという利点があります。

木造建築のベタ基礎においては、建物外周の基礎を立ち上げる部分の地盤を掘る根切りを行い、砕石を敷き込んで固めます。この後に捨てコンクリートを打ち、平に仕上げて、そこに外周部型枠や鉄筋を組む位置を示す墨出しを行います。外周部に型枠を建て込んでから、配筋工事を行います。

木造の基礎断面が小さいということは、鉄骨造あるいは鉄筋コンクリート造と比較して、主に下記の理由によりコストダウンが可能になります。

・根切り底が浅いため、残土処分量を減らせる

・立ち上がり部分やフーチング部分の寸法が小さく、型枠や配筋量が減らせる

・作業量が少なく、工期短縮が可能になる(現場経費の軽減につながる)

参考:「【動画で解説】SE構法の工事監理のポイント(基礎編)」はこちらです。

 

中大規模木造のコストダウンのポイント3:構造躯体工事

中大規模木造のコストダウンのポイント3:構造躯体工事

中大規模木造の構造躯体の施工は、鉄骨造あるいは鉄筋コンクリート造と比較して、木造で使用する一般流通材の木材、建材が戸建住宅市場で大量に流通しているため、相場の変動が少なく、価格が安定していることが特徴です。

参考:「鉄骨造の危機で木造への転換が活性化!中大規模木造の方が鉄骨造より有利な理由」はこちらです。

中大規模木造の構造躯体の施工においては、大工さん、鳶さんとなり、複数の職方が必要でないケースが多いです。

鉄骨造あるいは鉄筋コンクリート造では、躯体の施工に複数の職方が必要になります。そうした職人さんは、大型建築の現場で仕事をすることも多く、需要バランスによる施工費(労務費)も変動が大きいです。貴重な建設職人をそれぞれの現場で「奪い合う」図式となるため、必然的に人件費は高くなる傾向になります。

木造の構造躯体工事には、鉄骨造あるいは鉄筋コンクリート造と比較して、主に下記の理由によりコストダウンが可能になります。

・構造材や建材、施工費が安い

・一般流通材の木材、建材が規格化、モジュール化されていて施工が合理的に進められる

・材料の納期も施工期間も早い

参考:「【動画で解説】SE構法の工事監理のポイント(木工事:上棟)」はこちらです。

 

まとめ

中大規模木造における課題として、鉄骨造やRC造に代わるものとして計画した木造建築物が、木造のメリットを活かした設計を行わず、構造的に特注材を多用したりすると、結果として割高になってしまうことです。

コストを潤沢にかけられる特別な建築を除けば、木造住宅の技術の延長としての中大規模木造をより普及、活用していく必要があります。中大規模木造を適正に実現していくためには、材料、部材寸法、接合部仕様などの基本情報を実務者が正しく理解することが大切です。

鉄骨造より木造に設計変更する場合には、コストダウンのためのポイントがあります。

・木造のモジュールを意識して設計を調整すること

・アルミサッシなどの建材はなるべく木造用の既製品を使う

・大スパン部分以外はなるべく特注材は使用しない

などです。

 

中大規模木造(特に店舗、事務所、倉庫等)を設計するのに使い勝手がよい工法は集成材構法です。大スパン・大空間が求められる大規模案件においては、設計、供給、施工、コストパフォーマンスの良さが、高い次元で成立している工法が求められます。

集成材構法として実力・実績のある工法の一つが「耐震構法SE構法」です。SE構法は「木造の構造設計」から「構造躯体材料のプレカット」に至るプロセスを合理化することでワンストップサービスとして実現した木造の工法です。

「耐震構法SE構法」へのご相談はこちらです。

 

また構法を問わず、木造の構造設計から構造躯体材料のプレカットに至るスキームづくりに取り組む目的で「株式会社木構造デザイン」が設立されました。構造設計事務所として、「⾮住宅⽊造専⾨の構造設計」、「構造設計と連動したプレカットCADデータの提供」をメイン事業とし、構造設計と⽣産設計を同時に提供することで、設計から加工までのワンストップサービスで木造建築物の普及に貢献する会社です。

「木構造デザイン」へのご相談はこちらです。

 

株式会社エヌ・シー・エヌ、株式会社木構造デザインへのご相談は無料となっておりますので、お気軽にお問い合わせください。

 

【次回のコラム→「中大規模木造でコストダウンできる構造計画、構造躯体の考え方」木造のコストダウンのポイントについて解説します。】