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WOODEN STRUCTURE中大規模木造

中大規模木造でコストダウンできる構造計画、構造躯体の考え方

  • 中大規模木造でコストダウンできる構造計画、構造躯体の考え方 -

これまでは建設地が「木材の産地だから」などの理由で木造を選択することもありましたが、地域や用途によらず、都市部などでも中大規模木造を実現していくことが求められています。中大規模木造の普及の鍵が「木造建築のコストパフォーマンス」です。木造で建築することによるメリットをうまく発注者や関係者と共有していくことが、建築分野に新たな可能性をもたらします。その鍵となるのがコストパフォーマンスの高い構造計画、構造躯体です。このコラムでは構造躯体をコストパフォーマンス良く計画するポイントについてお伝えします。

 

<このコラムでわかること>

中大規模木造構造計画に関する2つの考え方

中大規模木造構造躯体一般用流通材を基本に考える

中大規模木造構造躯体コストダウン1構法

中大規模木造構造躯体コストダウン2構造材

中大規模木造構造躯体コストダウン3トラス張弦梁

中大規模木造大断面材コスト納期、搬入に注意

・まとめ

 

中大規模木造の構造計画に関する2つの考え方

中大規模木造の構造計画に関する2つの考え方

中大規模木造を計画する際、一つのハードルとなるのが構造計画です。中大規模木造の構造計画には大きく分けると2通りの考え方があります。

1.木造住宅の技術の延長としての構造計画

木造住宅の技術の延長として考える場合、構造躯体は住宅用製材、金物、プレカット加工が基本となります。これらは住宅建設に最適化して整備された仕組みなので、構造部材に用いられる断面寸法のバリエーションや接合金物の性能が中大規模木造に向いていない場合があります。中大規模木造の構造を成立させるためには、架構や接合などに構造設計者の知恵やテクニックが求められます。

2.鉄骨造やRC造に代わるものとして木を用いる構造計画

鉄骨造やRC造に代わるものとして木を用いる場合は、相応の材料強度が必要となるため、大断面集成材やLVLなどで構成することなります。その時に問題になるのは、接合部の設計です。鉄骨造の場合、規格のH型鋼にはその寸法に合った標準接合が整備されているため、部材断面が決まれば記号を付けるだけで、設計者、製造者、施工者で情報を共有できます。

上記の2通りの考え方は、どちらもまだ確立された構造計画のノウハウがある工法は限定的です。

設計システム、生産システム、施工システムがそれぞれのアプローチで、両者の構造計画がうまく組み合わさっていくことが期待されています。

参考:「耐震構法SE構法は全棟で立体解析による構造計算を実施」はこちらです。

 

中大規模木造の構造躯体は一般用流通材を基本に考える

中大規模木造の構造躯体は一般用流通材を基本に考える

中大規模木造の計画において、木造建築を慣れていないと過大にコストや工期が膨らんでしまうことがあります。それを避けるためには、構造躯体は一般用流通材を使うことを前提に構造計画を行うことが基本です。

・階高:長さ3mもしくは4mの柱材を前提に決める

高さが不足する場合は基礎高でも調整できる

・梁:梁せいは製材なら390mm以下、構造用集成材なら450mm以下とし、スパンは6m以内に収める

上記以上の梁せい、長尺材はなるべく避ける

・外壁面積が大きくなると、耐風性能を確保するために外周部の柱位置が密になるので注意する

一定以上のスパンが必要な計画では金物工法がベースになります。この場合は、特注金物はできるだけ使わないように計画することが、コストを抑えるポイントです。

参考:「低層の中大規模木造は住宅用の一般流通材を使うと鉄骨造より安くなる理由」はこちらです。

 

中大規模木造の構造躯体のコストダウン1:構法

中大規模木造の構造躯体のコストダウン1:構法

現在の中大規模木造で採用される主な構法は、在来軸組構法や枠組壁構法(ツーバイフォー工法)、集成材構法、CLT構法等があります。

住宅に近い小中規模案件の場合(~300㎡程度)であれば在来軸組構法や枠組壁構法(ツーバイフォー工法)でも対応できることも多いので、結果としてコストパフォーマンスは向上します。

一方で大スパン・大空間が求められる大規模案件(500㎡~)では、固定荷重や積載荷重も大きくなり、住宅規模の応力とは異なる部材寸法を選択する必要があることから、集成材構法等でないと構造的に対応できないケースが増えます。

参考:「中大規模木造の構法解説。用途、空間に応じて適材適所で選択」はこちらです。

 

中大規模木造の構造躯体のコストダウン2:構造材

中大規模木造の構造躯体のコストダウン2:構造材

構造材は材種、樹種、強度、制作可能サイズ等様々あるため、構造材の特性を知った上で「適材適所」で使い分けることがコスト管理では重要です。

事前にそれぞれの特徴を知ることで、コストパフォーマンスの高い計画が可能となります

中大規模木造を設計するのに使い勝手がよい(コストと強度のバランスがよい)構法は構造用集成材です。大スパン・大空間が求められる大規模案件においては、設計、供給、施工、コストパフォーマンスの良さが、高い次元で成立している工法が求められます。

参考:「中大規模木造の構造材の特性やメリット・デメリット」はこちらです。

 

中大規模木造の構造躯体のコストダウン3:トラスと張弦梁

中大規模木造の構造躯体のコストダウン3:トラスと張弦梁

中大規模木造で大空間を実現するためには、特注の大断面部材を用いて大スパンを実現することも可能ですが、一般的な建築物において、コストや納期、搬入等を考えると、コストメリットが劣る場合があります。

大スパンの空間を計画するにあたり、単純梁の構造の場合ですと、特注材製作による納期、搬入が可能かどうか、コストアップになるなどの問題で、現実的に単純梁を採用することができないケースがあります。

10mを超える大スパンが必要な場合は、一般用流通材によるトラスを活用する方法があります。トラス構造は、構造部にかかる力を圧縮力と引っ張り力の軸力のみに単純化し構造体の安定化をはかるものです。

参考:「耐震構法SE構法によるトラスで大空間を実現する」はこちらです。

また別の方法として、一般的に流通している中断面の構造用集成材と鋼材ロッドを用いて張弦梁を構成することで、大断面の特注材を用いるよりもコストダウンを実現し、軽快な印象の空間を実現することもできます。張弦梁は、梁と引張材を組み合せた、軽快で安全性の高いハイブリット構造です。

参考:「耐震構法SE構法では張弦梁を採用して軽快な印象の大空間を実現できる」はこちらです。

 

中大規模木造の大断面材はコストと納期、搬入に注意

中大規模木造の大断面材はコストと納期、搬入に注意

構造計画上、やむを得ず大断面集成材を特注する場合には、納期にも注意が必要です。一般用流通材と比較して、材種によっては2倍以上の納期が必要になることもあります。

長尺材は、運搬車両や搬入ルート等、搬入計画も入念に検討する必要があります。

建物規模などから特注の大断面集成材による集成材構法を用いる場合、集成材メーカーに相談して「建て方施工」という方法で建て方まで依頼する方法もあります。

構造躯体の建て方のみを「建て方施工」を担当する会社、その後の施工を元請け会社がそれぞれ手掛けることで、慣れた施工体制で施工することによる工期短縮等のメリットもあります。

参考:「SE構法の施工体制は「全て元請け」と「建て方施工」が選択できる」へのご相談はこちらです。

 

まとめ

中大規模木造の普及には、木造で建築物をつくること自体に、人々が魅力を感じるようにならなければなりません。木材利用の可能性が広がったことは、新しい建築が可能になったということです。

木材についての先入観を見直して、新たな建築材料として捉え直すことは、意匠としての木造の新しい魅力や、木造で建築することの新たなメリットを発見する機会にもなります。

木造業界は、木材を生産する林業、加工する木材工業、そして建設業、解体・廃棄物のリサイクル産業が関連し合う業界です。

木材は自然材料で、その種類や性能には限界があります。ある木材をどこでどのように使うか、どのような大きさや長さまで加工可能か、どういった加工は容易でどういった加工は大変なのかといった情報も必要です。設計はできるがコストが大幅にかさむ、あるいは調達、納期等が実現不可能という事態を避けるためです。

 

中大規模木造(特に店舗、事務所、倉庫等)を設計するのに使い勝手がよい工法は集成材構法です。大スパン・大空間が求められる大規模案件においては、設計、供給、施工、コストパフォーマンスの良さが、高い次元で成立している工法が求められます。

集成材構法として実力・実績のある工法の一つが「耐震構法SE構法」です。SE構法は「木造の構造設計」から「構造躯体材料のプレカット」に至るプロセスを合理化することでワンストップサービスとして実現した木造の工法です。

「耐震構法SE構法」へのご相談はこちらです。

 

また構法を問わず、木造の構造設計から構造躯体材料のプレカットに至るスキームづくりに取り組む目的で「株式会社木構造デザイン」が設立されました。構造設計事務所として、「⾮住宅⽊造専⾨の構造設計」、「構造設計と連動したプレカットCADデータの提供」をメイン事業とし、構造設計と⽣産設計を同時に提供することで、設計から加工までのワンストップサービスで木造建築物の普及に貢献する会社です。

「木構造デザイン」へのご相談はこちらです。

 

株式会社エヌ・シー・エヌ、株式会社木構造デザインへのご相談は無料となっておりますので、お気軽にお問い合わせください。

 

【次回のコラム→「中大規模木造オンラインで相談できる構造設計事務所NCN」オンライン相談のポイントについて解説します。】