木材利用促進のための建築基準の合理化が加速!建築基準法改正の要点
2050年カーボンニュートラル、2030年度温室効果ガス46%排出削減(2013年度比)の実現に向けて、エネルギー消費量の約3割を占める建築物分野における省エネ対策の徹底と、吸収源対策としての木材利用拡大等を通じて脱炭素社会の実現に寄与するなどの目的で、令和4年6月17日に「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」が公布されました。
この法律に含まれている建築基準法の一部が改正されています。大規模木造に関して特に関連性の高いのは「中大規模建築物の木造化を促進する防火規定の合理化」と「部分的な木造化を促進する防火規定の合理化」です。
このコラムでは大規模木造に関する建築基準法改正のポイントについて解説します。
<このコラムでわかること>
・建築基準法改正(木材利用促進のための建築基準の合理化等)の概要
・建築基準法改正:中大規模建築物の木造化を促進する防火規定の合理化
・建築基準法改正:部分的な木造化を促進する防火規定の合理化
・SE構法へのお問合せ、ご相談について
・まとめ
建築基準法改正(木材利用促進のための建築基準の合理化等)の概要
建築基準法改正(令和4年度)の概要は下記となります。
1.建築確認・検査の対象となる建築物の規模等の見直し
◼️建築確認審査の対象となる建築物の規模の見直し
◼️小規模伝統的木造建築物等に係る構造計算適合性判定の特例
2.階高の高い木造建築物等の増加を踏まえた構造安全性の検証法の合理化
◼️階高の高い3階建て木造建築物等の構造計算の合理化
◼️構造計算が必要な木造建築物の規模の引き下げ
3.中大規模建築物の木造化を促進する防火規定の合理化
◼️3000㎡超の大規模建築物の木造化の促進
◼️階数に応じて要求される耐火性能基準の合理化
4.部分的な木造化を促進する防火規定の合理化
◼️大規模建築物における部分的な木造化の促進
◼️防火規定上の別棟扱いの導入による低層部分の木造化の促進
◼️防火壁の設置範囲の合理化
5.既存建築ストックの省エネ化と併せて推進する集団規定の合理化
◼️建築物の構造上やむを得ない場合における高さ制限に係る特例許可の拡充
◼️建築物の構造上やむを得ない場合における建蔽率・容積率に係る特例許可の拡充
◼️住宅等の機械室等の容積率不算入に係る認定制度の創設
6.既存建築ストックの長寿命化に向けた規定の合理化
◼️住宅の採光規定の見直し
◼️一団地の総合的設計制度等の対象行為の拡充
◼️既存不適格建築物における増築時等における現行基準の遡及適用の合理化
◼️一定範囲内の増築等において遡及適用しない規定・範囲の追加
改正法は、公布の日から3年以内(規定によっては、2年以内または1年以内)に施行されます。
今後は、各改正法の施行に向けて必要な政令や告示等が整備されていくことになります。
大規模木造に関して関連性の高い上記の
「3.中大規模建築物の木造化を促進する防火規定の合理化」と
「4.部分的な木造化を促進する防火規定の合理化」
に関して、下記で詳細をお伝えします。
建築基準法改正:中大規模建築物の木造化を促進する防火規定の合理化
建築基準法改正(【令和4年6月17日公布】)に伴う、中大規模建築物の木造化を促進する防火規定の合理化についての概要は下記となります。
【3000㎡超の大規模建築物の木造化の促進】
現行では、延べ面積が3000㎡を超える大規模建築物を木造とする場合は、主要構造部を耐火構造などとするか、3000㎡以内ごとに高い耐火性能を有する構造体で区画することが求められています。主要構造部を耐火構造とする場合は、木造部分を石膏ボードなどの不燃材料で被覆する必要があります。
そのため、利用者が木の良さを実感しづらいことや、耐火構造体で区画する場合には建築物を二分化する必要があるなど、設計上の制約が多いことが課題として指摘されていました。
そこで、延べ面積が3000㎡を超える大規模建築物を木造とする場合にも、構造部材である木材をそのまま見せる「あらわし」による設計が可能となるよう、新たな構造方法を導入し、大規模建築物への木造利用の促進を図ります。
【階数に応じて要求される耐火性能基準の合理化】
現行では、耐火構造に要求される性能について、4階建て以下の建築物では、一時間の耐火性能、5階建て以上14階建て以下の建築物では、最大2時間の耐火性能等の性能が要求されています。
現行の基準に対して、階数5の建築物と階数14の建築物の最下層に関して同水準の耐火性能が要求されるなど、きめ細やかな規定となっていないなどの指摘がありました。
そこで、今後の政令改正により、木造による耐火設計ニーズの高い中層建築物に適用する耐火性能基準を合理化しました。(階数5以上9以下の建築物の最下層については、90分耐火性能でも設計可能とする等など)
建築基準法改正:部分的な木造化を促進する防火規定の合理化
建築基準法改正(【令和4年6月17日公布】)に伴う、部分的な木造化を促進する防火規定の合理化についての概要は下記となります。
【大規模建築物における部分的な木造化の促進】
現行では、延べ面積が3000㎡を超える大規模建築物を木造とする場合は、主要構造部を耐火構造などとするか、3000㎡以内ごとに高い耐火性能を有する構造体で区画することが求められています。主要構造部を耐火構造とする場合は、木造部分を石膏ボードなどの不燃材料で被覆する必要があります。
そのため、利用者が木の良さを実感しづらいことや、耐火構造体で区画する場合には建築物を二分化する必要があるなど、設計上の制約が多いことが課題として指摘されていました。
そこで、延べ面積が3000㎡を超える大規模建築物を木造とする場合にも、構造部材である木材をそのまま見せる「あらわし」による設計が可能となるよう、新たな構造方法を導入し、大規模建築物への木造利用の促進を図ります。
【防火規定上の別棟扱いの導入による低層部分の木造化の促進】
建築物の部分的な木造化にあたっては、木造部分と一体で整備される鉄筋コンクリート造などの構造部分について、木造部分に求められる規定が建築物全体に適用されることが設計上の大きな制約になっているとの指摘があったところです。
今般の改正により、高い耐火性能の壁等や、十分な離隔距離を有する渡り廊下などで分棟的に区画された建築物については、その高層部・低層部をそれぞれ防火既定上の別頭として扱うことで、同一敷地内において、棟単位で容易に低層部分の木造化を行うことができることとなります。
【防火壁の設置範囲の合理化】
壁・柱などの構造部材に、被覆等の防火措置がなされていない木造建築物については、1000㎡ごとに防火壁を設置することが要求されますが、木造部分と一体で鉄筋コンクリート造などの耐火構造部分を計画する場合、耐火構造部分にも1000㎡ごとに防火壁を設置することが求められ、不合理であると指摘があったところです。
そこで、今般の改正により、他の部分と防火壁などで有効に区画された建築物の部分であれば、1000㎡を超える場合であっても防火壁などの設置は要さないことになります。
SE構法へのお問合せ、ご相談について
大規模木造をSE構法で実現するための流れは下記となります。
1.構造設計
SE構法を活用した構造提案を行います。企画段階の無料の構造提案・見積りから、実施設計での伏図・計算書作成、確認申請の指摘対応等を行っております。また、BIMにも対応可能です。
2.概算見積り
SE構法は構造設計と同時に積算・見積りが可能です。そのため躯体費用をリアルタイムで確認可能で、大規模木造の設計において気になる躯体予算を押さえつつ設計を進めることが可能です。
3.調達
物件規模、用途、使用材料を適切に判断して、条件に応じた最短納期で現場にお届けします。また、地域産材の手配にも対応しております。
4.加工
構造設計と直結したCAD/CAMシステムにより、高精度なプレカットが可能です。また、多角形状、曲面形状などの複雑な加工形状にも対応可能です。
5.施工
SE構法の登録施工店ネットワークを活用し、計画に最適な施工店を紹介します。(元請け・建方施工等)
6.非住宅版SE構法構造性能保証
業界初の非住宅木造建築に対応した構造性能保証により安心安全を担保し、中大規模木造建築の計画の実現を後押しします。
↓SE構法へのお問合せ、ご相談は下記よりお願いします。
https://www.ncn-se.co.jp/large/contact/
まとめ
都市部を中心に、大規模木造の計画が活性化しています。木造はもはや都市建築の選択肢の一つとなっています。
加えて発注者は環境重視の姿勢を強めています。関連法規の基準を満たしながら、更なる省エネ対策を実施した木造建築が求められています。
設計者には、木の材料特性を引き出し、流通する製材を活用して、都市部の建築の木造・木質化の実現が求められています。
SE構法の構造スペックをうまく活用すると、木造では実現が難しい高層化、木造耐火などを実現することができます。都市部の厳しい敷地条件の中、鉄骨造ではコストや施工に問題がある場合においても、木造(SE構法)が有効な選択肢となります。
NCNは構造設計から生産設計(プレカット)までのワンストップサービスが強みです。
計画段階からご相談いただくことで、構造設計から材料調達までを考慮した合理的な計画が可能です。
集成材構法として実力・実績のある工法の一つが「耐震構法SE構法」です。
SE構法は「木造の構造設計」から「構造躯体材料のプレカット」に至るプロセスを合理化することでワンストップサービスとして実現した木造の工法です。
また構法を問わず、木造の構造設計から構造躯体材料のプレカットに至るスキームづくりに取り組む目的で「株式会社木構造デザイン」が設立されました。
構造設計事務所として、「⾮住宅⽊造専⾨の構造設計」、「構造設計と連動したプレカットCADデータの提供」をメイン事業とし、構造設計と⽣産設計を同時に提供することで、設計から加工までのワンストップサービスで木造建築物の普及に貢献する会社です。
株式会社エヌ・シー・エヌ、株式会社木構造デザインへのご相談は無料となっておりますので、ウッドショックでお困りの方もお気軽にお問い合わせください。