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WOODEN STRUCTURE中大規模木造

【解説】大規模木造のリアルなコストの考え方(前編)

  • 【解説】大規模木造のリアルなコストの考え方(前編) -

非住宅建築物の木造化の推進には、コストは重要な要素であり低コスト化は必須です。大規模木造の低コスト化を考えた場合、最も重要なことは、木造の特徴を知り、その特徴にあった設計・施工を行うことです。大規模木造を適正なコストで実現するためには、木造に関するコスト感覚を掴むことが重要です。年々、発注者のコスト意識も高まっておりますし、設計者が工事費を把握しながら設計を進めることが木造化の流れの中では特に求められます。

コストを主眼においた解説記事を前編・後編の2回に分けてお伝えします。本コラム(前編)は、コストコントロールで重要となる「構造種別、積算、構造計画、規模・スパン」をテーマに解説します。後編はこちらです。

 

<このコラムでわかること>

大規模木造コストの概要

大規模木造コストの考え方(構造種別編)

大規模木造コストの考え方(積算編)

大規模木造コストの考え方(構造計画編)

大規模木造コストの考え方(規模・スパン編)

SE構法へのお問合せ、ご相談について

・まとめ

 

大規模木造のコストの概要

大規模木造のコストの概要

一般的に大規模な木造建築物では、大スパンなどで特殊な部材を使用する場合、建築コストが増加する傾向にあります。

今後、非住宅建築物の木造化をより一層促進するためには、木造化によるコスト増を低減する必要があります。

大規模木造の品質・性能の向上や低コスト化を促進することで、公共・民間建築物の木造化が期待されます。

時代や社会の変化により建築物の木造化、木質化がより広がる中、大規模木造を実現するために課題となるのがコストコントロールです。

本コラムでは、コストに主眼をおき、下記のそれぞれのカテゴリ別に前編・後編の2つに分けて解説します。後編はこちらです。

 

<前編>

・構造種別

・積算

・構造計画

・規模・スパン

 

<後編>

・防耐火

・構法

・構造材

・その他

 

※本コラムの内容は、設計・施工・製材・加工等に関する資料を参考にまとめております。最新の情報と異なることもありますのであらかじめご了承ください。

 

大規模木造のコストの考え方(構造種別編)

大規模木造のコストの考え方(構造種別編)

建設業の抱える大きな課題として、慢性的な人手不足や高齢化による職人不足があり、建築用鋼材の需要変化による価格変動等があります。輸送コストの上昇も相まって、工期が遅延、長期化する原因となっています。

建設コストは「ヒト(人件費)、モノ(建材費、機器費など)、経費(利益)」の合計で構成されます。

木造は鉄骨造や鉄筋コンクリート造と比較して、コスト的に有利な点は主に下記です。

 

・木造は施工に関する人件費が安定している

→需要による価格変動が少ない。

 

・木材の価格上昇リスクが建築用鋼材よりは少ない

→木材はウッドショック等が生じるリスクはあるが国産材などは変動が比較的少ない

 

・木造は工期の短縮が図れる

→木造の場合、プレカットされた規格部材を現場で組み上げる施工が多いため、スムーズな作業・進行に貢献し、短期間での完成を実現できる。また、工期短縮は人件費など経費を安くできる。

 

・木造は建物重量が軽い

→特に地盤改良工事、基礎工事、構造躯体工事のコストを抑えられる。

関連記事:中大規模木造の建設費の概要とコストを抑えるポイント

 

大規模木造のコストの考え方(積算編)

大規模木造のコストの考え方(積算編)

大規模木造のコストの中心である本体工事費は、大きく躯体工事費、仕上げ工事費、設備工事費の3つに分けられます。

そのうち、最も大きな割合を占めるのが躯体工事費です。大規模木造では、木工事の費用が全体の30%前後を占めます。

大規模木造のコストでよく語られる構造材ですが、実はその割合は工事費全体の10%前後のことが多いです。

設計内容や用途、規模によって各工事費の割合は微妙に異なりますが、一般的な形状の大規模木造であれば、この割合に大きな変化はありません。

しかしながら、大空間や大スパンによる特注材利用や、建物が矩形ではない特殊形状の場合には、躯体工事費の割合が高くなる傾向にあります。

躯体工事費の割合が高くなると、見積り金額の超過が大きくなりやすく、仕上げ工事費を下げても十分な減額にならないことが多いです。

現実的な実務の進め方としては、設計段階での概算見積りの際は、構造躯体のかたちをおおむね決めた上で構造躯体の概算金額を把握することで、全体工事費と構造躯体費のバランスを判断することが必要です。

関連記事:中大規模木造の建設費の概要とコストを抑えるポイント

 

大規模木造のコストの考え方(構造計画編)

大規模木造のコストの考え方(構造計画編)

大規模木造は構造計画によりコストが大きく変わります。主なポイントは下記です。

 

<構造(架構)形式を適切に選択する>

構法は計画に応じて、「壁構造系」か「軸構造系」かを選択します。壁構造系のほうがコスト的には有利ですが、設計や規模は限定されます。

 

1.在来軸組構法による建築物(壁構造系) 

柱と梁を主たる構成要素とする木造の構法。耐震要素は、筋かいまたは面材を釘留め等した耐力壁等による建築物。壁の位置に制限等が出てくる。構造材は一般流通材の利用可。 

 

2.集成材等建築物(軸構造系) 

構造耐力上主要な軸組(壁)を設けない建築物。耐震要素はフレーム(単位骨組)で構成するため、壁の位置等に制限が少ない。構造材には、JASに規定する構造用集成材、JASに規定する構造用単板積層材(構造用LVL)、JASに規定する目視等級区分製材または、機械等級区分製材等に限られる。在来軸組構法よりも設計の自由度の高い建築物が可能。

 

大規模木造の計画においては、構造躯体は一般用流通材を使うことを前提に構造計画を行うことが基本です。

関連記事:「中大規模木造でコストダウンできる構造計画、構造躯体の考え方」

 

<異種構造との併用>

木造のみでは構造的に実現困難な場合は混構造を選択します。混構造とすることでコストアップになりますが、鉄筋コンクリート造単体よりはコストダウンは可能です。

 

1.立面的異種構造(高さ方向に構造が異なる)

 構造設計者による構造設計が必要。適判物件となる可能性あり 

 

2.平面的異種構造(平面的に構造が異なる) 

原則として、エキスパンションジョイントを設け、構造種別ごとに分離して個々に構造設計が必要

 

関連記事:木造と鉄筋コンクリート造の混構造を徹底解説

 

大規模木造のコストの考え方(規模・スパン編)

大規模木造のコストの考え方(規模・スパン編)

住宅に近い小中規模案件の場合(~300㎡程度)であれば在来軸組構法や枠組壁構法(ツーバイフォー工法)でも対応できることも多いので、結果としてコストパフォーマンスは向上します。

一方で大スパン・大空間が求められる大規模案件(500㎡~)では、固定荷重や積載荷重も大きくなり、住宅規模の応力とは異なる部材寸法を選択する必要があることから、集成材構法等でないと構造的に対応できないケースが増えます。

大規模木造は規模やスパンによりコストが大きく変わります。主なポイントは下記です。

 

<構造計画する建築物の規模>

 1.高さ13m以下かつ軒高さ9m以下で、階数2以下、延べ面積500㎡以下   

一般の設計者による構造検討が可能(確認申請の手続き期間 短)   

※特に住宅を取り扱うプレカット業者等が得意とする規模

 

 2.高さ13m以下かつ軒高さ9m以下で、階数3以上または、延べ床面積500㎡超え   

一般的には構造設計者による構造設計が必要(確認申請の手続き期間 中)

 

3.軒高さ9m超え または 高さ13m超え ただし高さ31m以下   

→構造設計者による構造設計が必要。適判物件となる(確認申請の手続き期間 長)   ※特に大断面集成材メーカー等が得意とする分野

 

 

<構造計画する建築物のスパン>

計画物件における最大空間(梁スパン) は製材か集成材、構法により異なります。

 

 1.梁スパン6mまで 

製材を主に利用可能。この程度までが、住宅用プレカット機械による加工が可能であり、構造材や加工コストも経済的。

 

2.梁スパン6m以上9m以下

製材の場合、断面が大きくなる傾向があり、住宅用プレカット機械による加工ができなくなる場合が多い。特殊機械や手加工による加工となり、割高となる。また、製材で考えた場合、製材での断面が大きくなり、集成材に比べ材料単価が上がるので不経済となりやすい。 

 

3.梁スパン9m以上 

一部、製材を利用してトラスを造るケースはあるが、構造用集成材の利用が主。梁材の加工限界や運搬上の問題より、構造スパンはこの程度までに抑えることが現実的。トラスや張弦梁などの特殊梁が一般的。運搬上の理由からも分割して現場搬入になりやすい。

 

 

<構造計画する建築物のモジュール設定>

木造の場合は、基本的には910㎜・1000㎜ピッチの倍数により、部材寸法(梁長さ、面材幅)が決まっているため、主要な柱間隔を910㎜・1000㎜の倍数で割り振れるとよい。部 屋とグリッドができるだけ合っているとよい。割りが悪いと無駄な材料が必要となりコスト高となるため。

大規模木造を設計するのに使い勝手がよい(コストと強度のバランスがよい)構法は構造用集成材です。大スパン・大空間が求められる大規模案件においては、設計、供給、施工、コストパフォーマンスの良さが、高い次元で成立している工法が求められます。

関連記事:【解説】SE構法の構造設計が大規模木造で評価される理由

 

SE構法へのお問合せ、ご相談について

SE構法へのお問合せ、ご相談について

大規模木造をSE構法で実現するための流れは下記となります。

 

1.構造設計

SE構法を活用した構造提案を行います。企画段階の無料の構造提案・見積りから、実施設計での伏図・計算書作成、確認申請の指摘対応等を行っております。また、BIMにも対応可能です。

 

2.概算見積り

SE構法は構造設計と同時に積算・見積りが可能です。そのため躯体費用をリアルタイムで確認可能で、大規模木造の設計において気になる躯体予算を押さえつつ設計を進めることが可能です。

 

3.調達

物件規模、用途、使用材料を適切に判断して、条件に応じた最短納期で現場にお届けします。また、地域産材の手配にも対応しております。

 

4.加工

構造設計と直結したCAD/CAMシステムにより、高精度なプレカットが可能です。また、多角形状、曲面形状などの複雑な加工形状にも対応可能です。

 

5.施工

SE構法の登録施工店ネットワークを活用し、計画に最適な施工店を紹介します。(元請け・建方施工等)

 

6.非住宅版SE構法構造性能保証

業界初の非住宅木造建築に対応した構造性能保証により安心安全を担保し、中大規模木造建築の計画の実現を後押しします。

 

↓SE構法へのお問合せ、ご相談は下記よりお願いします。

https://www.ncn-se.co.jp/large/contact/

 

まとめ

発注者においては、木造の良さを実感し、発注する建築物の木造化の価値や、木造での実現の可能性が技術的にも十分あることを理解頂いた上で、木造の長所・短所をふまえ、要求性能とコストに見合った木造建築物の発注につなげていただければと考えております。

設計者には、木の材料特性を引き出し、流通する製材を活用して、都市部の建築の木造・木質化の実現が求められています。

 

SE構法の構造スペックをうまく活用すると、木造では実現が難しい高層化、木造耐火などを実現することができます。都市部の厳しい敷地条件の中、鉄骨造ではコストや施工に問題がある場合においても、木造(SE構法)が有効な選択肢となります。

NCNは構造設計から生産設計(プレカット)までのワンストップサービスが強みです。計画段階からご相談いただくことで、木構造デザインの木造建築に関する知見をうまく利用していただき、ファーストプランの段階から構造計画を相談いただくことで、合理的に設計を進めていただければと考えております。

 

集成材構法として実力・実績のある工法の一つが「耐震構法SE構法」です。SE構法は「木造の構造設計」から「構造躯体材料のプレカット」に至るプロセスを合理化することでワンストップサービスとして実現した木造の工法です。

関連:「耐震構法SE構法」へのご相談はこちらです。

 

また構法を問わず、木造の構造設計から構造躯体材料のプレカットに至るスキームづくりに取り組む目的で「株式会社木構造デザイン」が設立されました。構造設計事務所として、「⾮住宅⽊造専⾨の構造設計」、「構造設計と連動したプレカットCADデータの提供」をメイン事業とし、構造設計と⽣産設計を同時に提供することで、設計から加工までのワンストップサービスで木造建築物の普及に貢献する会社です。

関連:「木構造デザイン」へのご相談はこちらです。

 

株式会社エヌ・シー・エヌ、株式会社木構造デザインへのご相談は無料となっておりますので、お気軽にお問い合わせください。