木造建築.jpは移転しました。

このメッセージは木造建築.jpにアクセスいただいた方に向けて表示しています。

耐震構法SE構法で建てる大規模木造建築のサイトをご覧いただきありがとうございます。木造建築.jpは、2017年4月のリニューアに際して現在表示中のURLに移動しました。旧サイトをブックマークされている方は、お手数ですが新しいURLをご登録いただきますようお願いします。

株式会社エヌ・シー・エヌ

このメッセージを閉じる

WOODEN STRUCTURE中大規模木造

【解説】大規模木造のリアルなコストの考え方(後編)

  • 【解説】大規模木造のリアルなコストの考え方(後編) -

地域や用途によらず、都市部などでも大規模木造を実現していくことが求められています。大規模木造普及の鍵は「木造建築のコストパフォーマンス」です。

木造で建築することによるメリットをうまく発注者や関係者と共有していくことが、大規模木造の世界に新たな可能性をもたらします。大スパン・大空間が求められる大規模木造においては、設計、供給、施工、コストパフォーマンスの良さが、高い次元で成立している構法が求められます。

コストを主眼においた解説記事を前編・後編の2回に分けてお伝えします。本コラム(後編)は、コストコントロールで重要となる「防耐火、構法、構造材、その他」をテーマに解説します。前編はこちらです。

 

<このコラムでわかること>

大規模木造コストの考え方(防耐火編)

大規模木造コストの考え方(構法編)

大規模木造コストの考え方(構造材編)

大規模木造コストの考え方(その他編)

SE構法へのお問合せ、ご相談について

・まとめ

 

大規模木造のコストの考え方(防耐火編)

大規模木造のコストの考え方(防耐火編)

建物には用途・規模・地域により建物構造に規制がかかります。防火・耐火の面から低コスト化へつながる建築計画を行うには、関連法規の理解と防・耐火設計の手法についての知識を習得することが大変重要です。

大規模木造は防火・耐火の要求の有無によりコストが大きく変わります。主なポイントは下記です。

 

<耐火建築物への対応>

木造の耐火建築物では、木造の構造体に耐火被覆が必要となります。木造の耐火建築物を現実的に計画し、デザインとコストを両立させるには、「構造躯体の木(柱や梁)を見せること」にこだわらない設計が重要となります。

木造耐火構造を計画する場合、内部を石膏ボードで覆う必要があるため、空間の確保や、耐火被覆分のコストアップについて事前によく検討をしておく必要があります。

関連記事:​​木造でも耐火建築物は可能!大規模木造における耐火建築物まとめ

 

<準耐火建築物のメリットを活かす>

建築基準法改正前は木造建築物の高さが13m、軒高が9mを超えると一律に耐火構造にする必要がありました。改正後は、高さ16m以下かつ3階以下であれば、木造でも耐火構造としなくてよくなりました。(ただし、倉庫や自動車修理工場などの基準は高さ13m以下で据えおかれています。)

高さ16m超、4階以上であっても、壁や柱などの主要構造部の木材を通常よりも厚くすれば、石こうボードなどで覆わなくてもよくなります。消火までに倒壊しない防火性能を満たすことが条件です。

新設された「75分・90分準耐火構造」は、これまで耐火構造が求められたケースでも、一定の性能を満たせば準耐火構造で建てられます。

関連記事:木造の準耐火建築物の可能性が広がる!改正建築基準法の解説

 

<燃えしろ設計の活用>

準耐火構造で、木造らしさを表現したい場合、燃えしろ設計が考えられます。燃えしろ設 計を行うことで、構造材を表しとし、耐火被覆の材料・施工手間を軽減することが可能です。 

燃えしろ設計は、燃えしろ厚を差し引いて材料検討を行います。一般地域の場合、燃えし ろ設計によって断面を大きくする必要がない場合もあります。

反面、細い材料が燃えしろ設計を行うことは非効率な場合もあります。室内の木材料の見せ場を定め、効率よく燃えしろ設計を活用すると、デザイン的にもコスト的にも有利に働きます。

関連記事:準耐火建築物であれば「燃え代設計」により木造の構造体を現しにできる

 

<大規模建物の防火区画>

延べ面積が1000㎡を超える建築物は、防火壁で区画することで耐火・準耐火建築物とすることが回避でき木造化が可能です。また、別棟解釈により、平面的に耐火建築物を挟みこみ面積による防火要求を軽減する検討もできます。

関連記事:大規模木造で知っておくべき建築基準法のポイント

 

大規模木造のコストの考え方(構法編)

大規模木造のコストの考え方(構法編)

非住宅の木造建築においては、求められる用途や規模によって適する構法は異なります。

住宅に近い小中規模案件の場合(~300㎡程度)であれば在来軸組構法や枠組壁構法(ツーバイフォー工法)でも対応できることもあります。

一方で大スパン・大空間が求められる大規模案件(500㎡~)では、固定荷重や積載荷重も大きくなり、住宅規模の応力とは異なる部材寸法を選択する必要があることから、集成材構法等でないと構造的に対応できないケースや、コストパフォーマンスが著しく悪くなるケースがあります。

 

<構法を決定する鍵となる構造計画>

構法の選択で重要となるのは構造計画です。大規模木造の構造計画には大きく分けると2通りの考え方があります。

 

1.木造住宅の技術の延長としての構造計画

木造住宅の技術の延長として考える場合、構造躯体は住宅用製材、金物、プレカット加工が基本となります。これらは住宅建設に最適化して整備された仕組みなので、構造部材に用いられる断面寸法のバリエーションや接合金物の性能が大規模木造に向いていない場合があります。

 

2.鉄骨造やRC造に代わるものとして木を用いる構造計画

鉄骨造やRC造に代わるものとして木を用いる場合は、相応の材料強度が必要となるため、大断面集成材やLVLなどで構成することになります。その時に問題になるのは、接合部の設計です。

鉄骨造やRC造に代わるものとして計画した木造建築物が、木造のメリットを活かした設計を行わず、構造的に特注材を多用したりすると、結果として割高になってしまいますので注意が必要です。

計画内容や規模に応じて、適切な構造計画と構法選択が重要になります。

 

大規模木造の構法 コスト

<大規模木造の構法>

大規模木造の計画において、木造建築に慣れていないと過大にコストや工期が膨らんでしまうことがあります。それを避けるためには、構造躯体は一般用流通材を使うことを前提に構造計画を行うことが基本です。

現在の大規模木造で採用される主な構法は、在来軸組構法や枠組壁構法(ツーバイフォー工法)、集成材構法、CLT構法等があります。

 

構法1:在来軸組構法

在来軸組構法は、日本に伝わる伝統的な工法で、基礎に土台をのせて柱を立て、梁などの水平な材を渡して骨組みをつくる工法です。壁には筋かいという斜めの材を入れる、もしくは構造用合板を張って補強するなど、木材の組み合わせで建物を支える構造です。

大規模木造で在来軸組構法を採用しやすいのは、大スパンを必要としない建築物です。福祉施設など小規模な個室が並ぶ計画においてはコストメリットを得られやすい工法です。

 

構法2:枠組壁構法(ツーバイフォー工法)

枠組壁構法は、北米から輸入されたツーバイフォー(2×4)工法が代表的です。2インチと4インチに規格化された木材を使用するため、ツーバイフォー工法と呼ばれるようになりました。木製パネルと角材でつくったパネルで壁や床、天井という面をつくり、この面を組み立ててできる六面体の構造をベースに建築を建てる工法です。

工場で大量生産された木材を用いて建築されるため、施工の手間は少ないです。細工が不要で材料も安いため、在来軸組構法よりもコストは安くなることもあります。

 

構法3:集成材構法

集成材構法は、接合部に専用金物、構造部材に集成材を用いた構法です。専用金物は、在来軸組構法の仕口や継手加工を金物に置き換えたものです。接合部の耐力が明確であり、安定した高強度な構造体をつくることができます。

基本的な構造スパンが6m以下の場合や、部分的に10m以上のスパンが必要な場合には、集成材構法が最も適しています。構造用集成材の一般的な流通材(6m以下)を超える特注材が増えるとコストアップにつながります。

 

大規模木造のコストの考え方(構造材編)

大規模木造のコストの考え方(構造材編)

構造材は材種、樹種、強度、制作可能サイズ等様々あるため、材の特性を知った上で「適材適所」で使い分けることがコスト管理では重要です。

 

<林業の現状と木材特性>

木材は持続的に循環利用が可能となる優れた材料です。木材を利用し、「植える→育て る→伐って→利用する→植える」といった適正な森林整備を行うことで、国土保全、水源か ん養、土砂災害防止等の森林が持つ多様な機能が発揮され、森林のサイクルがうまく循環し ます。

これらを意識して木材を活用することが大切です。 建築計画前に県内産木材の樹種、蓄積量、ヤング係数といった林業と木材特性を把握することは、木材の有効活用に加え、健全な森林整備にもつながります。

 

<一般流通材の活用が基本>

 一般的に流通している木材は流通量が多く、特殊材と比べ、比較的調達もしやすく価格も 品質も安定しています。

一般的に流通している材種や材寸を把握し、架構計画に反映することは低コスト化の一つの方法です。 

関連記事:低層の中大規模木造は住宅用の一般流通材を使うと鉄骨造より安くなる理由

 

大規模木造 コスト 構造材

 

構造材1:製材(杉、桧、米松等)

製材は、素材(丸太・原木)を鋸挽きした木材製品で「挽き材」ともいわれています。製材の大半は建築に使われますが、建築以外にも、建具や家具、土木、輸送・梱包、造船などで利用されています。

製材は、木造で最も一般的な構造材であり、比較的コストが安く、手に入りやすいです。原木のサイズによるため、大断面、長尺材が手に入りにくいこともあります。

 

構造材2:枠組壁工法構造用製材(ディメンションランバー)

枠組壁工法構造用製材とは、「枠組壁工法構造用製材の日本農林規格」によると、枠組壁工法(ツーバイフォー工法)建築物の構造耐力上主要な部分に使用する材面に調整を施した針葉樹の製材のことです。

ツーバイフォー工法に用いられる構造材であり、面材と組み合わせて使用されます。規格品として生産されているため、入手が容易でコストも比較的安いです。

 

構造材3:構造用集成材(唐松、杉、RW等)

構造用集成材は材料であるひき板(ラミナ)を目視及び機械的方法により等級区分(グレーディング)し、必要に応じて適当なひき板を組み合わせて接着集成しますので、強度性能の安定した長尺大断面の材料が得られます。

特に性能規定化された建築基準法のもとでは、強度性能が表示でき、かつ保証される構造用集成材は信頼性の高い部材です。

材料強度が安定(強度性能のばらつきが少ない)しており、大規模木造では一般的な材料です。一般流通材である規格サイズであれば、比較的安価に入手可能です。必要に応じて、特注材として任意の梁成、長さ等を制作可能です。

 

構造材4:構造用単板積層材/LVL(唐松、杉)

LVL(エルブイエル)とは、切削機械で切削された単板の繊維方向(木理)を全て平行にして積層、接着して造られる木材加工製品です。現在では、「単板積層材」または英語名(Lumber Veneer Laminated)を略して「LVL」と呼ばれています。

構造用集成材と同様に材料強度寸法が安定しており、大規模木造には広く使われる材料です。構造用集成材と比較し、製造工場が限られますので、コスト競争力は弱いです。

 

構造材5:CLT(クロス・ラミネイテッド・ティンバー)

CLTとはCross Laminated Timber(クロス・ラミネイテッド・ティンバー)の略称で、ひき板(ラミナ)を並べた後、繊維方向が直交するように積層接着した木質系材料です。

特徴として、工場内で一部の材料を組み立ててから現場に搬入するプレファブ化により、施工の工期短縮が期待でき、接合具がシンプルなので熟練工でなくとも施工が可能です。

他の構法と比較して使用材積が多いためコストは高くなります。流通量が少なく、生産可能な工場が限定されていることもあり、今後の普及が期待されます。

 

大規模木造のコストの考え方(条件別編)

大規模木造のコストの考え方(条件別編)

大規模木造のコストにおいては、建設地の条件なども考慮すべき要素です。

注意するのは、「積雪」です。

一般地域の場合、全体の構造計画については特別の注意は必要ありません。ただし、積雪量によっては、部材断面に影響する可能性があります。

 

<多雪区域の場合>

多雪区域においては、積雪による割り増しを考慮する必要があります。

積雪荷重の影響が大きいため、長期荷重を考えた場合、梁スパン等に注意が必要となります。よって一般的には集成材や特殊工法が有利と言えます。

多雪区域では、原則として雪下ろしをしなければいけません。そのままほっておくと建物に大きな負荷がかかり、建具が開かなくなるというような現象が起こります。最悪の状況だと、建物そのものが構造的に耐えられないということも予想されます。

積雪荷重は、積もった雪の重さを意味します。よって積雪荷重は「屋根」に作用する荷重です。積雪荷重は地域によって異なりますので、必ず確認する必要があります。

関連記事:SE構法の企業内保育所の事例紹介「元気ひろば保育園」

 

大規模木造のコストの考え方(その他編)

大規模木造のコストの考え方(その他編)

大規模木造のコストにおいては、減価償却、維持管理なども考慮すべき要素です。

 

<耐用年数(減価償却) >

民間の建築物であれば、建設予定の建築物の要求(想定)耐用年数を基に、木造で建設した場合と、S造やRC造で建設した場合の減価償却による耐用年数の比較を行ない、減価償却による運用資金を検討することが求められます。

建物の長寿命化を図ること、長期にわたり経済的に使用できることが、建物の維持管理に おいて低コストにつながるポイントです。そのためには、建物の計画当初より、空間の可変 性や設備システムの更新に配慮した設計を行うことが必要です。

 

<建物の耐久性確保(劣化現象への対策)>

建物の劣化原因を軽減できる計画を行うことで、長持ちする建物へと導きます。さらに建 物全体、部位、部材、部品ごとに、目標とする耐用年数を定め、それを考慮して建物の計 画・設計および維持管理計画が求められます。

清掃、点検、保守作業などが効率的かつ安全に実施できるよう、作業空間や機器材の搬出入 経路、配管、配線スペースを確保し、必要に応じて作業用設備を設置する必要があります。

その他、高所の窓や樋点検のための保守管理用バルコニーや設備の設置、床下、小屋裏点検口を設け、容易に点検、保守が行えるようにすることも大切です。

 

SE構法へのお問合せ、ご相談について

SE構法へのお問合せ、ご相談について

大規模木造をSE構法で実現するための流れは下記となります。

 

1.構造設計

SE構法を活用した構造提案を行います。企画段階の無料の構造提案・見積りから、実施設計での伏図・計算書作成、確認申請の指摘対応等を行っております。また、BIMにも対応可能です。

 

2.概算見積り

SE構法は構造設計と同時に積算・見積りが可能です。そのため躯体費用をリアルタイムで確認可能で、大規模木造の設計において気になる躯体予算を押さえつつ設計を進めることが可能です。

 

3.調達

物件規模、用途、使用材料を適切に判断して、条件に応じた最短納期で現場にお届けします。また、地域産材の手配にも対応しております。

 

4.加工

構造設計と直結したCAD/CAMシステムにより、高精度なプレカットが可能です。また、多角形状、曲面形状などの複雑な加工形状にも対応可能です。

 

5.施工

SE構法の登録施工店ネットワークを活用し、計画に最適な施工店を紹介します。(元請け・建方施工等)

 

6.非住宅版SE構法構造性能保証

業界初の非住宅木造建築に対応した構造性能保証により安心安全を担保し、中大規模木造建築の計画の実現を後押しします。

 

↓SE構法へのお問合せ、ご相談は下記よりお願いします。

https://www.ncn-se.co.jp/large/contact/

 

まとめ

発注者の方々においては、木造の良さを実感し、発注する建築物の木造化の価値や、木造での実現の可能性が技術的にも十分あることを理解頂き、また木造の長所・短所をふまえ、要求性能とコストに見合った木造建築物の発注につなげていただければと考えております。

設計者には、木の材料特性を引き出し、流通する製材を活用して、都市部の建築の木造・木質化の実現が求められています。

SE構法の構造スペックをうまく活用すると、木造では実現が難しい高層化、木造耐火などを実現することができます。都市部の厳しい敷地条件の中、鉄骨造ではコストや施工に問題がある場合においても、木造(SE構法)が有効な選択肢となります。

 

NCNは構造設計から生産設計(プレカット)までのワンストップサービスが強みです。計画段階からご相談いただくことで、木構造デザインの木造建築に関する知見をうまく利用していただき、ファーストプランの段階から構造計画を相談いただくことで、合理的に設計を進めていただければと考えております。

集成材構法として実力・実績のある工法の一つが「耐震構法SE構法」です。SE構法は「木造の構造設計」から「構造躯体材料のプレカット」に至るプロセスを合理化することでワンストップサービスとして実現した木造の工法です。

関連:「耐震構法SE構法」へのご相談はこちらです。

 

また構法を問わず、木造の構造設計から構造躯体材料のプレカットに至るスキームづくりに取り組む目的で「株式会社木構造デザイン」が設立されました。構造設計事務所として、「⾮住宅⽊造専⾨の構造設計」、「構造設計と連動したプレカットCADデータの提供」をメイン事業とし、構造設計と⽣産設計を同時に提供することで、設計から加工までのワンストップサービスで木造建築物の普及に貢献する会社です。

関連:「木構造デザイン」へのご相談はこちらです。

 

株式会社エヌ・シー・エヌ、株式会社木構造デザインへのご相談は無料となっておりますので、お気軽にお問い合わせください。