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木造でも耐火建築物は可能!大規模木造における耐火建築物まとめ

  • 木造でも耐火建築物は可能!大規模木造における耐火建築物まとめ -

都市部を中心に大規模木造の需要が増えています。木造は都市建築の選択肢の一つとなっています。その際に鍵となるのが「大規模木造での耐火建築物」の実現です。耐火建築物は、建築基準法上、最高水準の防火性能を有する建築物です。たとえ消火活動が実施されなかったとしても、想定される火災で建物が燃えた後も崩壊せず、自立し続ける性能をもつのが耐火建築物です。このコラムでは、大規模木造を計画する上で知っておきたい耐火建築物のポイントについてお伝えします。

 

<このコラムでわかること>

大規模木造における耐火建築物建築基準法の規定と種類

大規模木造で建設できる木造軸組工法による1時間耐火建築物

大規模木造耐火建築物を実現しやすいのは大臣認定工法

大規模木造における耐火建築物の規定(防火地域準防火地域

大規模木造における耐火建築物のメリット1コストパフォーマンス

大規模木造における耐火建築物のメリット2福祉施設に最適

大規模木造における耐火建築物のメリット3木造4階建て

大規模木造として耐火建築物SE構法で実現するポイント

・まとめ

 

大規模木造における耐火建築物の建築基準法の規定と種類

大規模木造における耐火建築物の建築基準法の規定と種類

大規模な建築物や不特定または多数の人が利用する建築物では、火災が発生した場合、人命への危険性や周辺へ被害が広がる可能性が高くなります。

建築基準法では、このような建築物に対して火災により建築物が倒壊することがないように、火災に対する防火措置を施さないまま木造等で建設することを制限し、地域、規模または用途に応じて耐火建築物または準耐火建築物としなければならないと規定しています。

耐火建築物とは、主要構造部が耐火構造であるものまたは耐火性能検証法等により火災が終了するまで耐えられることが確認されたもので、外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に防火設備を有する建築物のことをいいます。

大規模木造で耐火建築物を実現するには、以下の方法のいずれかとなります。

①木造耐火に関する告示の仕様

せっこうボードを用いた木造耐火構造の外壁、間仕切壁の仕様の告示(平成26年国交省告示第861号)に加えて、耐火構造の構造方法を定める件(平成12年建設省告示第1399号)の一部が平成30年に改正され、せっこうボードを用いた木造耐火構造の柱・床・屋根・階段の仕様が告示化されています。

 

②主要構造部に木材を使ったメンブレン型耐火構造 

木造軸組構法や枠組壁工法では、構造部材をせっこうボードなどで防火被覆した「メンブレン型耐火構造」により国土交通大臣の認定を取得した工法を採用する方法です。

 

③木質ハイブリッド部材

鉄骨を集成材などの木材の厚板で被覆することで、耐火構造としての性能を確保するとともに木の質感を出す木質ハイブリッド部材として開発され国土交通大臣の認定を受けている工法を採用する方法です。

 

④被覆型耐火構造(集成材)による耐火建築物 

構造用集成材の柱やはりに、せっこうボードなどで防火被覆した耐火構造や部材内部に燃え止り層を設けた耐火構造が国土交通大臣の認定を受けている工法を採用する方法です。

 

⑤耐火性能検証法による木造耐火建築物 

耐火性能検証法により、天井を高くしたり、大きい空間とすることで、火災時に熱がこもりにくくする対策を講じれば、梁を木材の現しで用いることも可能な工法を採用する方法です。

 

⑥高度な検証法による木造耐火建築物 

大臣認定を受けた高度な検証法による木造耐火建築物です。大空間の木造ドームなど大型の木造建築物が建築されています。

 

木造の耐火建築物を実現するには「木を見せること」にこだわらない姿勢が重要となります。木造の耐火建築物を現実的に設計するためには、一般社団法人日本木造住宅産業協会(以下/木住協)が取得している国土交通大臣認定工法を用いるか、国土交通省告示を用いて実現する方法が現実的です。

関連記事:木造の耐火建築物は「木を見せる」にこだわらず大臣認定工法や告示を使うべき理由

 

大規模木造で建設できる木造軸組工法による1時間耐火建築物

SE構法、木造耐火の認定こども園の事例紹介「七里ふたばこども園」

2000年に改正された建築基準法及び2019年に改正された建築基準法の規定に基づき、次のような木造軸組工法による1時間耐火建築物(屋根・階段は30分耐火構造)が建設できるようになりました。

  • 防火地域内の延べ面積が100㎡を超えるか、階数が3以上の建築物(法第61条)
  • 準防火地域内の延べ面積が1,500㎡を超えるか、地階を除く階数が4以上の建築物(法第61条)
  • 高さが16ⅿを超えるか、地階を除く階数が4以上の建築物(法第21条)
  • 延べ面積が3,000㎡を超える建築物(法第21条)
  • 地階を除く階数が3以上の特殊建築物(法第27条)
  • 建築基準法以外の関係法令により耐火建築物が求められる保育所や老人福祉施設等

非木造の範疇であった物件の木造化が建築基準法等の改正により促進されています。

 

<関連情報:大規模木造で建設できる木造軸組工法による2時間耐火建築物>

木造軸組工法による2時間耐火構造については、国土交通省告示が公布されていませんので、国土交通大臣認定を使って建築することになります。木住協は、2時間耐火構造の大臣認定を取得しています。

2時間耐火構造では、外壁・間仕切壁及び床については階数の規制はなく、柱及びはりについては、最上階から数えた階数が14階以下の範囲で設計が可能となりました。14階以上の木造を実現するためには、3時間耐火構造以上を求められますので、より実現のハードルが高くなります。

関連記事:木造で耐火建築物を実現するために必須な大臣認定とは?

 

大規模木造で耐火建築物を実現しやすいのは大臣認定工法

木造4階建ての事務所ビルにおける木造耐火のポイント

木造耐火の国土交通大臣認定の耐火構造仕様で選択肢が広がれば、設計の自由度も増します。木住協取得の国土交通大臣認定では、木造でも1時間耐火構造、2時間耐火構造の建築物が建てられます。

 

<1時間耐火構造>

木住協の仕様では、外壁(耐力壁)はサイディング張り、木質系ボード張り、金属板張り、軽量モルタル塗りの各仕様を、間仕切壁(耐力壁)は断熱材や補強面材有無毎に、床は床下天井の張り位置に応じた認定を取得しています。また、独立柱や独立はりの認定も取得しています。屋根、階段は30分耐火構造ですが、屋根は勾配屋根・陸屋根別、及び直下の天井張り位置に応じた認定を取得しています。

 

<2時間耐火構造>

木住協の仕様では、防耐火上の主要構造部における2時間耐火構造の国土交通大臣認定を取得をしています。外壁(耐力壁)は軽量モルタル塗りで鉄網下地材や内装下地材の有無による各仕様を、間仕切壁(耐力壁)は断熱材の有無及び補強面材の有無、面材取付け位置に応じた各仕様を、床は断熱材の有無及び床下天井の張り位置に応じた認定を取得しています。独立柱や独立はりの認定も取得しています。

木住協の仕様で計画する場合には、間違いのない設計・施工を実行するために、木住協が主催する講習会を受講する必要があります。

講習会終了登録者からの大臣認定書発行申請に応じて、木住協が設計・施工、確認申請に活用できる書類一式を物件1棟ごとに発行されます。

 

大規模木造における耐火建築物の規定(防火地域・準防火地域)

大規模木造における耐火建築物の規定(防火地域・準防火地域)

建築の主要構造部(壁、柱、梁、床、屋根、階段)に必要な防耐火構造は、「建築地の防火地域」「建物の用途」「建物の高さ」の3つの規制による構造制限のうち、もっとも厳しい規制が適用されます。

2019年の建築基準法改正後は、準防火地域に計画される耐火建築物および準耐火建築物について、建ぺい率を10%加算できるようになりました。木造で計画する場合でも耐火建築物で実現すれば建ぺい率を10%加算できますので、今までよりも有効な設計提案が可能になります。

大規模木造を計画する際は、耐火建築物と準耐火建築物で求められる性能や建設コスト等を理解した上で、適切に選択することが重要なポイントです。

関連記事:広がる木造準耐火の可能性!大規模木造における準耐火建築物まとめ

 

大規模木造における耐火建築物のメリット1(コストパフォーマンス)

 

木造4階建ての事務所ビル「ヤマサ製菓ビルハピア豊橋」の構造設計の特徴

大規模木造のコストを検討する際に、まずおさえることが「防火・耐火」です。鉄骨やコンクリートに比べて燃えやすい木材(木は火に弱いということではない)という材料を使って、法規の基準を満たした火災に強い建築をつくることが求められます。

大規模木造は、規模や建築基準法、各種基準により、耐火建築物や準耐火建築物の仕様が求められることが多くなります。このため、防火・耐火のコストをできるだけ上げないように、建築計画を慎重に検討する必要があります。

木造の耐火建築物では、木造の構造体に耐火の被覆が必要となります。木造の耐火建築物を現実的に計画し、デザインとコストを両立させるには、「構造躯体の木(柱や梁)を見せること」にこだわらない設計が重要となります。

木造の耐火建築物は、鉄骨造や鉄筋コンクリート造として「建物重量が軽い」ことが、大きなコストダウンのポイントとなります。特に地盤改良工事、基礎工事、構造躯体工事のコストを抑えることができます。

関連記事:中大規模木造の建設費の概要とコストを抑えるポイント」

 

大規模木造における耐火建築物のメリット2(福祉施設に最適)

大規模木造における耐火建築物のメリット2(福祉施設に最適)

福祉施設ではこれまで鉄骨造で計画されていた建物が、徐々に木造へと転換する動きが活性化しています。鉄骨造から木造への転換では、大スパンや短工期などの課題に対応する必要がありますが、大規模木造でも対応は可能です。

福祉施設の多くは、建築基準法27条による特殊建築物です。福祉施設を計画する際に注意すべきことは、建築基準法以外に定められる各施設ごとの設置基準によって規定されている項目を遵守することです。その設置基準により耐火建築物が求められることも多いため、下記のような木造のメリットを活用することで、発注者の事業に貢献できる設計が可能となります。

<福祉施設を木造で建てるメリット>

1.木の持つ魅力と特性

2.建設コストが安い

3.(工期が短いため)補助金事業に対応しやすい

4.発注者のメリットが多い

5.耐火・準耐火も木造で対応可能

6.大空間を実現できる木構造

関連記事:高齢者施設を木造で計画するメリット」

関連記事:木造で高齢者施設を計画するための関連法規まとめ」

SE構法で実現した木造耐火建築物の認定こども園の事例は下記です。

関連記事:SE構法、木造耐火の認定こども園の事例紹介「七里ふたばこども園」

 

大規模木造における耐火建築物のメリット3(木造4階建て)

木造4階建てのSE構法の事務所ビルの事例紹介「ヤマサ製菓ビルハピア豊橋」

都市部で木造で計画する際には、まず耐火要件を確認する必要があります。木造は耐火建築物・準耐火建築物・その他建築物と要求される耐火性能によって、意匠性、コスト、工期等に大きく影響してきます。

計画の初期段階より、木造の耐火要件を押さえておくことによって、以後の計画をスムーズに進めることが可能です。

木造4階建てまでは1時間耐火構造が要求されます。木造耐火構造を計画する場合、内部を石膏ボードで覆う必要があるため、空間の確保や、耐火被覆分のコストアップについて事前によく検討をしておく必要があります。

立地条件や地盤状態等により、鉄骨造や鉄筋コンクリート造では実現が難しい場合等は、「木造4階建」は有効な選択肢となります。

SE構法で実現した木造耐火建築物の4階建て事務所ビルの事例は下記です。

関連記事:木造4階建てのSE構法の事務所ビルの事例紹介「ヤマサ製菓ビルハピア豊橋」

 

大規模木造として耐火建築物をSE構法で実現するポイント

大規模木造として耐火建築物をSE構法で実現するポイント

大規模木造として耐火建築物を実現するためには、SE構法は最適な構法です。構造設計から構造材の材料供給、施工のサポートまでワンストップサービスで提供できるからです。高齢者施設を木造(SE構法)で計画するメリットは主に下記です。

 

1.木造耐火建築物の重量アップにSE構法は対応できる(構造躯体の強さ)

木造で耐火建築物で設計する場合、せっこうボード等の使用量がかなり増えることにより建物重量が重くなります。他の木造の工法では耐震性能の確保が難しくなったり、壁や柱が増えることにより設計の自由度が損なわれることがあります。SE構法は立体解析による構造計算と構造躯体の強度が強いことから、木造の耐火建築物にも問題なく対応できます。

関連記事:耐震構法SE構法は全棟で立体解析による構造計算を実施

 

2.コストの優位性(鉄骨造と木造の比較)

構造で木造(SE構法)を選択することで、鉄骨造や鉄筋コンクリート造と比較して基礎や構造躯体のコストが安くなります。外壁仕上げには住宅用サイディング、窓は住宅用アルミサッシなどを使うことで、建材費や施工費も抑えることができます。

関連記事:「中大規模木造の建設費の概要とコストを抑えるポイント」

 

3.SE構法の構造設計(設計の自由度)

SE構法は構造用集成材の中段面部材(柱は120mm角、梁は120mm幅)が標準なため、住宅と同等の部材寸法でスパン8m程度までの空間を構成できるコストパフォーマンスをうまく活用していただければと考えております。スパンが10mを超える空間は、特注材の他にトラスや張弦梁を活用することが可能です。

関連記事:SE構法による大開口、大空間、大スパン、木造耐火の事例まとめ

 

4.木造に精通した構造設計者に依頼(SE構法は大規模木造に適している)

SE構法は単純に「剛性のある木質フレーム」というだけではなく、さまざまな利点を追求し、大規模木造で求められる大空間・大開口を可能にして、意匠設計者の創造性を活かせる設計の自由度を提供しています。SE構法は剛性のある木質フレームに囲まれた耐力壁を併用することで、耐力壁の性能を最大限生かすことが可能となり、壁量を少なくできます。SE構法は木造でも明確な構造計算に基づいているので、設計者は安心して意匠設計に集中できます。

関連記事:「中大規模木造に適した技術と自由があるSE構法の構造設計」

 

5.木造におけるワンストップサービス(SE構法は使い勝手が良い)

SE構法は「木造の構造設計」と「構造躯体材料のプレカット」そして施工というプロセスを合理化することでワンストップサービスとして実現した木造の工法です。大規模木造では工法に関わらず、「木造の構造躯体の施工の担い手」を確保する必要があります。SE構法であれば、構造躯体の施工だけをSE構法登録施工店に依頼する「建て方施工」という方法もありますので、施工会社選定の選択肢が大きく広がります。

関連記事:「SE構法はワンストップサービスが魅力!各プロセスごとに徹底解説」

 

まとめ

木造で施設を計画する際には、建築基準法に加え、関連する条例等を遵守することが求められます。

法律や条例等は常に改正されていきますし、その解釈や運用については該当の行政窓口や指定検査確認機関等により異なりますので、本コラムの内容は「記事掲載時の一般的な考え方」であることのご理解、ご了承をお願いします。

建築実務者の皆様においては、常に最新の法規等の情報をチェックしつつ、該当の行政窓口や指定検査確認機関等によく内容を確認をしてから設計や施工を進めていただくようお願い申し上げます。

大規模木造を設計するのに使い勝手がよい工法は集成材構法です。大スパン・大空間が求められる大規模案件においては、設計、供給、施工、コストパフォーマンスの良さが、高い次元で成立している工法が求められます。

集成材構法として実力・実績のある工法の一つが「耐震構法SE構法」です。SE構法は「木造の構造設計」から「構造躯体材料のプレカット」に至るプロセスを合理化することでワンストップサービスとして実現した木造の工法です。

関連:「耐震構法SE構法」へのご相談はこちらです。

 

また構法を問わず、木造の構造設計から構造躯体材料のプレカットに至るスキームづくりに取り組む目的で「株式会社木構造デザイン」が設立されました。構造設計事務所として、「⾮住宅⽊造専⾨の構造設計」、「構造設計と連動したプレカットCADデータの提供」をメイン事業とし、構造設計と⽣産設計を同時に提供することで、設計から加工までのワンストップサービスで木造建築物の普及に貢献する会社です。

関連:「木構造デザイン」へのご相談はこちらです。

 

株式会社エヌ・シー・エヌ、株式会社木構造デザインへのご相談は無料となっておりますので、お気軽にお問い合わせください。