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大規模木造の防耐火設計まとめ!耐火建築物と耐火同等建築物の解説

  • 大規模木造の防耐火設計まとめ!耐火建築物と耐火同等建築物の解説 -

建築基準法の防耐火規制においては、これまで建築物を「耐火建築物」「準耐火建築物」「その他の建築物」の3つに分類してきました。近年の建築基準法改正後は耐火建築物と同等の性能をもつ「準耐火建築物+α」(本記事では「耐火同等建築物」と表現)という概念が登場しました。従来の準耐火建築物を上回る性能をもつ建築物です。

耐火要件を満たす建築物の種類としては、「耐火建築物」と「耐火同等建築物」が存在することになります。耐火同等建築物という防耐火上の新しい分類が加わったわけではなく、耐火建築物と同等に扱える新しい性能レベルとして位置付けられています。

このコラムでは、大規模木造の防耐火設計まとめとして、耐火建築物と耐火同等建築物についてお伝えします。

 

<このコラムでわかること>

大規模木造における建築基準法の要点と耐火建築物の考え方

耐火同等建築物準耐火構造+α」で性能担保

大規模木造で実現できる耐火建築物仕様規定性能設計を選択

大規模木造における耐火同等建築物の基本は性能設計の3種類

大規模木造で活用できる耐火同等建築物仕様規定の5種類

・まとめ

 

大規模木造における建築基準法の要点と耐火建築物の考え方

大規模木造における建築基準法の要点と耐火建築物の考え方

建築基準法の規定の多くは、床面積などの「規模」、建築物の「用途」、建てられる「地域」によって決まります。

関連記事:大規模木造で知っておくべき建築基準法のポイント

建築物を建てる際には、規模・用途・地域の規定の全てをクリアすることが必要となります。それぞれの規定の目的は以下のとおりです。

 

<規模の規定(法21条)の目的>

大規模な木造建築物等は、火災によって倒壊した場合に周囲の建築物を傷つけたり破壊したりするおそれがあります。法21条は、建築物の倒壊と、倒壊に繋がる内部延焼の防止を目的としています。

 

<用途の規定(法27条)の目的>

避難経路に不案内な不特定の者や一斉避難に支障があるような多数の者が利用する用途の建築物においては、火災が発生した場合に在館者の避難が難しくなるおそれがあります。法27条は、避難終了以前に建築物が倒壊することや、避難に影響を及ぼすような内部延焼の防止を目的としています。

 

<地域の規定(法61条)の目的>

市街地の建築物については、一棟の建築物の火災から周囲の建築物へ延焼し、市街地全体の大規模火災へと拡大するおそれがあります。法61条は、防火・準防火地域において隣接する建築物との関係について被害を受ける側、被害を加える側ともに外部延焼を防止することを目的としています。

 

従来から、上記3つの観点を達成できる十分条件として、耐火建築物(主要構造部は耐火構造)を位置づけてきました。

耐火建築物では、外壁開口部に防火設備を設置することで一定の延焼防止性能を確保しつつ、主要構造部を耐火構造とすることで放任火災(消火活動ができず、自然沈火まで火災が続く状態をいいます。)であっても、火災が終了するまで、建築物を倒壊には至らせない性能が担保されます。

関連記事:木造でも耐火建築物は可能!大規模木造における耐火建築物まとめ

 

耐火同等建築物は「準耐火構造+α」で性能担保

耐火同等建築物は「準耐火構造+α」で性能担保

建築基準法における防耐火上の建物の分類は、「耐火建築物」と「準耐火建築物」、「その他建築物」という3つしかありません。

そのことは建築基準法改正後も変わっていませんが、項目がいくつにも枝分かれしたので、全体像を理解しづらくなっていることも事実です。

耐火要件を満たす建築物の種類としては、「耐火建築物」と「耐火同等建築物」があります。

耐火同等建築物という防耐火上の新しい分類が加わったわけではなく、耐火建築物と同等に扱える新しい性能レベルとして位置付けられています。

耐火同等建築物は準耐火構造を用いるもので、さらに「+αの措置」が定められています。

耐火同等建築物は、主要構造部の耐火性能を、耐火構造から準耐火構造に下げる代わりに、+αの措置を定めて、耐火建築物が備えるべき防耐火性能を担保する考え方です。

「火災時倒壊防止建築物」の場合は「+消火上の措置」を定めており、スプリンクラーや自動火災報知設備の設置などが求められます。

関連記事:木造の準耐火建築物の可能性が広がる!改正建築基準法の解説

 

大規模木造における耐火同等建築物は仕様規定か性能設計を選択

大規模木造における耐火同等建築物は仕様規定か性能設計を選択

建築基準法の個々の観点に着目すれば、それぞれに必要条件が設定可能であり、目的を達成するための最適な基準が明らかになります。

法21条の観点からは、地震後等の場合を除けば消防活動の効果が期待できるため、放任火災に耐えられる程の性能は必要ないといえます。

法27条の観点からは、避難が終了した後も建築物が建ち続けられる程の性能は必要ないといえます。

同じように、法61条の観点からは、延焼しにくい建築物は、耐火建築物でなくても実現が可能です。

そこで建築基準法改正により、耐火建築物・耐火構造以外の方法が選択できるようになりました。それが耐火同等建築物の考え方です。

選択できる設計方法には、「仕様規定」によるものと「性能規定」によるものがあります。

仕様規定のポイントは主に下記です。

・従来から規定されている30分間の加熱に耐える措置(法21条)

・1時間準耐火の措置(法21条)

・木三共の措置(法27条)

・木三学の措置(法27条)

技術的基準適合建築物(法61条)は整理され各告示に位置づけられ、その他に75分間準耐火の措置(法21条)、特定小規模施設(法27条)、外殻強化型の延焼防止建築物(法61条)が新たに加わりました。

性能設計のポイントは主に下記です。

・火災時倒壊防止建築物(法21条)

・避難時倒壊防止建築物(法27条)

が新たに加わりました。

防火地域内の4階建て特殊建築物では、3つ全ての規定が適用されます。そして、個別の条文の要求を満足する設計解が、必ずしも、他の条文の規定を満足するものではないので、3つの観点からの要求について、それぞれ基準を満足するように建築物を設計する必要があります。

すなわち、主要構造部や建築物の部分、区画面積などについて、各基準のうち建築物の部分毎に最も厳しい基準を適用することが必要になります。

なお、先述したとおり耐火建築物は3つの観点の要求を満たすため、法改正後も従来と同様に適合解として位置づけられています。

従来どおり、どの規定においても防・耐火上の性能を求められない場合には、主要構造部を木造にできるのは変わりません。

また、現在ではどのような規模・用途・地域であったとしても、主要構造部を木造とすることは可能です。

建築実務者の中には、「準耐火構造で設計できる建物は、準耐火建築物に限られるのではないか?」といった疑問や戸惑いを抱く人がいるかもしれません。

しかし、一定の条件を満たせば、主要構造部が「準耐火構造」の木造耐火建築物をつくることができます。

厳密には耐火建築物とは言い切れず、「耐火建築物と同等性能の建築物(耐火同等建築物)」という位置付けになります。

耐火建築物としなければならない建物のうち、一定の用途や規模であれば木造の準耐火構造でもつくれる設計手法が複数定められたことになります。

耐火建築物と同じ耐火性能を持つものと見なすが、所定の設計方法に基づく耐火建築物ではないため、耐火同等建築物という新しい概念で、それらがまとめられています。

関連記事:木造でも高さ16m以下であれば防耐火要求無し!改正建築基準法の解説

 

大規模木造における耐火同等建築物の基本は3種類の性能設計

大規模木造における耐火同等建築物の基本は3種類の性能設計

耐火同等建築物には上段の表のように8つに分類されます。耐火構造を用いずに耐火木造を設計できる選択肢が増えたことになります。

基本となる3つは、表の上段にある「性能設計」の3種類です。

(1)火災時倒壊防止建築物

(2)避難時倒壊防止建築物

(3)延焼防止建築物

これらは、それぞれ建物の耐火要件を規定する建築基準法の3つの条文(法21条、法27条、法61条)に即して設定されています。

火災時に倒壊しない耐火性能を求める法21条に関連して設けられたのが、火災時倒壊防止建築物です。

特殊建築物の避難安全に関する法27条に即して避難時倒壊防止建築物があります。

防火・準防火地域の規制に関する法61条に対して延焼防止建築物が設けられています。

耐火同等建築物の上記(1)から(3)は、いずれも性能設計が必要になります。

耐火木造に一定の経験やノウハウを持つ設計者や、設計期間などにゆとりを見込むことのできる建物でなければ、実務的なハードルは高いといえます。

 

大規模木造で活用できる耐火同等建築物は5種類の仕様規定

大規模木造で活用できる耐火同等建築物は5種類の仕様規定

木造の普及や市場ニーズなどの観点から、「仕様規定」で設計できる耐火同等建築物が設定されています。

耐火同等建築物の仕様規定は、上記表の下段にある5種類です。

(4)75分準耐火構造の措置

(5)1時間準耐火構造の措置

(6)1時間準耐火構造+木3共(木造3階建て共同住宅)の措置

(7)1時間準耐火構造+木3学(木造3階建て学校)の措置

(8)外壁軒裏75分・90分準耐火構造の措置

(1)火災時倒壊防止建築物に関連して仕様規定が定められているのが、「(4)75分準耐火構造の措置」と「(5)1時間準耐火構造の措置」の2つです。想定されるのは、防火・準防火地域以外の立地で、木造4階建ての事務所ビルを建てるケースです。

従来は耐火建築物にしなければならなかったが、新たに「(4)75分準耐火構造の措置」が加わり、どちらかを選べるようになりました。主要構造部を75分準耐火構造とし、+αで「消火上の措置」を講じています。

(2)避難時倒壊防止建築物に関連して「(6)1時間準耐火構造+木3共(木造3階建て共同住宅)の措置」と、「(7)1時間準耐火構造+木3学(木造3階建て学校)の措置」の2つがあります。

(3)延焼防止建築物とひも付ける形で「(8)外壁軒裏75分・90分準耐火構造の措置」があります。

 

まとめ

耐火同等建築物は、準耐火構造なのに耐火要件を満たせるという点で、理解が混乱しかねない懸念はあります。

耐火同等建築物を理解するには、「建築物」と「構造」は違うものだということを知っておくことが重要です。

 

木造で施設を計画する際には、建築基準法に加え、関連する条例等を遵守することが求められます。法律や条例等は常に改正されていきますし、その解釈や運用については該当の行政窓口や指定検査確認機関等により異なりますので、本コラムの内容は「記事掲載時の一般的な考え方」であることのご理解、ご了承をお願いします。

建築実務者の皆様においては、常に最新の法規等の情報をチェックしつつ、該当の行政窓口や指定検査確認機関等によく内容を確認をしてから設計や施工を進めていただくようお願い申し上げます。

 

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