子育て世代の多い郊外住宅地に建つ、認可保育園。南北に長い敷地にあって、建物は敷地の中央に配され、南側に園庭、北側に駐車場が確保されている。2つの大きな切妻屋根と差し掛け屋根によるデザインで、外壁には落ち着いた色が選択され、周辺環境で突出せずに馴染んでいる。外観の設計は、アメリカのシアトルを拠点とする設計事務所によるもの。この施設では、まず保育方針からプランを策定し、外観の意匠を依頼し、その意匠を重視しながらプランを調整。そのうえで構造計画を実施して、与条件を解いていくプロセスを経ている。
エントランスホールは園の中心的な空間として位置づけられ、1階の諸室はすべてこのホールに面している。このホールでは子育て支援のほか、入卒園のイベントや園内行事といった活動も行われる。さらに、このホールは未就学児童だけでなく、小学校低学年の児童も支援することが構想されている。多様な活動を叶える広々とした空間を確保するために、構造計画では標準部材の梁を密に入れて力を分散しながら、要所で梁成の大きい梁を架けて力を受け、柱に流している。柱は耐力上の必要に応じて、活動を妨げない位置で適宜配された。上下階にある保育室でも同様に広い空間が確保され、主要な梁を支えるために柱がグリッドにこだわらず配置されている。
イレギュラーな計画にも柔軟に対応するSE構法のポテンシャルが、ゆとりある日々の活動と、未来の可能性をサポートする事例である。