張弦梁の大空間で形成するこども園の遊戯室。隣接する大学やクリニック・デイケアセンターと連携し、地域社会に貢献する一連の施設群の空間的ハブとなりつつある。
「愛知医療学院短期大学附属ゆうあいこども園」は、学校法人佑愛学園が運営するこども園である。佑愛学園は1982年に法人化し、愛知医療学院短期大学の前身である専門学校愛知医療学園を開校する。理学療法士と作業療法士を養成する3年制の専門学校である。2008年に短期大学となり、2014年には臨床実習の場となる大学附属の「ゆうあいリハビリクリニック・デイケアセンター」を、2020年4月に「ゆうあいこども園」を開設し、現在に至っている。高齢者、学生、子どもの3世代が、日常生活のなかで交流する場をつくる、という理念のもとに、クリニックとデイケアセンター、こども園が、学生の実習の場という実践性を伴って関連付けられている。こども園は、その三位一体の最後のピースである。
敷地は、JR東海道本線清洲駅から南東に600mほどのところに位置し、道路を挟んで西側に愛知医療学院短期大学とクリニック・デイケアセンターが隣接する。南側には高架の環状自動車道が通っている。建物はその自動車道に向かって開かれたU字形平面をしており、西側に外部利用も想定した遊戯室と子育て支援を主用途とする多目的室、園児の送迎スペースを挟んで職員室、保育室などが円弧状に並んでいる。U字形は、子どもたちが園庭に平等に向き合えるかたちに、という法人側からの要望から実現した。そしてこの形状は、将来、受け入れる子どもの数が増えた場合にも建物の拡張がしやすいという。現在は定員135人で、保育園が120人、幼稚園が15人である。
建物は12,700mm幅で湾曲し、内側に1,820mm幅の廊下が取り付く。当初はすべて外部廊下で計画していたが、厨房からの配膳過程で食事が屋外を通過することへの懸念から内部化された。屋根勾配は1/20。矩形の4,5歳児保育室では短辺方向に梁を架け、円弧状の0~3歳児保育室では放射状に架けている。防火区画や水回りなど、将来的に変更される可能性が少ない箇所に耐力壁を集中させ、それに準じて合理的な方向に梁を架けている。架構でもっとも特徴的なのは遊戯室で、12,740mm×13,560mmの矩形平面に梁成500mmの張弦梁を架けて無柱空間を形成している。束材は150mm角の木材、下弦材は16mm×44mmのフラットバーを木材で被覆している。張弦梁を支える両端の柱は150mm×360mmの平角柱で、準耐火構造物に対応して燃えしろ設計としている。保育室も梁材は燃えしろ設計で現しにしている。架構の表現は、建築設計にとって重要なテーマのひとつである。単純梁では梁成が大きくなりすぎる場合、張弦梁は意匠的にも構造的にも有効な選択肢である。