信仰の架構
「嘉手納バプテスト教会 大湾東チャペル」は、沖縄県中頭郡読谷村に新しく建てられた教会と児童デイサービスからなる建物である。当初は、沖縄という土地柄、RC造で検討されたが、地盤の問題、RC造の旧教会が温熱環境的に快適ではなかったこと、視覚的にも温かみのある建物を、などの意見・条件から木造で建てたいという方針となり、礼拝堂と児童デイサービスの空間は無柱空間にしたいという要望を検討する中で、設計社である株式会社Atelier Kuu Designの羽生氏がSE構法と出会い、具体的な計画に至ることとなった。
敷地形状はL字形で東側接道である。南側はすべて駐車場にあて、建物は北東側に寄せている。建物形状も同様にL字形で、東側に教会ホールと礼拝堂、西側に事務室と児童デイサービス関連の諸室を配して、北西側に子どもたちのための囲われた広場を設けた。アプローチは、南側のエントランスポーチにそれぞれ専用の入口を設け、教会ホール部分の南側壁面はガラスにして、親しみやすく開放感のある空間とした。礼拝堂は10m角の天井の高い空間である。礼拝堂部分が北側に飛び出した形状なので、柱材と外周部の耐力壁で水平力を受け止める必要がある。沖縄は本土より高い耐風性能(関東地方の1.5倍程度)が求められるので、大きな壁面にはより高強度な架構設計が求められる。そこで講壇背後の北面に平角柱を5本、中央部に集中させて1,000mmピッチで入れた。東西方向にはそれぞれ4本の平角柱に登梁を架け、接合強度を高めるために方杖を加えた。これらの架構は意匠的に現しとされ、温かみのある、そしてあたかもバットレスが内壁に現れたかのような礼拝堂らしい宗教空間をかたちづくっている。