【大規模木造】SE構法による店舗のデザイン解説
低層の非住宅用途の建築物は木造での提案が求められる時代を迎えています。現在、低層の非住宅用途は鉄骨造の割合が多いですが、規制緩和や技術力、コストパフォーマンスの向上等の理由により、より多くの建築が木造化できるようになっています。
そこで重要となるのが、木造の強みを活かした建築デザインです。木造のメリットを活かすことで、各用途で魅力的な建築が生まれます。
このコラムではSE構法を採用した店舗のデザインについて解説します。
<このコラムでわかること>
・SE構法による店舗のデザイン(飲食店)
・SE構法による店舗のデザイン(物販店)
・SE構法による店舗のデザイン(物販店・事務所)
・SE構法による店舗のデザイン(温浴施設)
・SE構法による店舗のデザイン(自動車ショールーム)
・大規模木造をSE構法で実現するポイント
・まとめ
SE構法による店舗のデザイン(飲食店)
ベーカリーとレストランを併設した商業施設の事例です。
南側にベーカリーとカフェ、北側にレストランの棟があり、間にパンやペイストリーの売り場が配されています。
1階外側にはプラザやパティオといった屋外の飲食スペースが設けられるほか、外の回廊が建物に巻き付くように2階部分で巡り、来訪者は敷地内の多様な樹木や植栽を楽しめる構成になっています。
レストランの平面寸法は約20m×約9.5mで、中心にバーカウンター、その両側にテーブル席が配置されています。
中央部には2層分の吹き抜けがあり、梁が出ないことで、外周部に巡らされた窓を通じて外の季節感が強く感じられる開放的な空間が生まれています。
表に出るシャープな構造体は黒く塗られ、周辺の自然環境と溶け合う特別な空間体験をもたらします。
SE構法による店舗のデザイン(物販店)
土産物屋、菓子店とその工場、カフェ、住宅からなる3階建ての複合建築の事例です。
東、南面に設けられた大きな庇の深い軒と軒裏の垂木が印象的な外観で、木造建築でありながら大きな開口部が特徴的です。
建物は東側に開いており、西側は隣接建物の壁を隠すように白い漆喰塗りの壁を立てて背景をつくり、その手前に開放的なスケルトンを置く、という構成となっています。
普遍的で飽きのこないデザインとなっており、開放的な木造軸組架構により、モダンなテイストを実現しています。
1階は土産物屋として観光客が入りやすい開放的な店構えを実現しています。
2階は松島の美しい景観を望むカフェとして快適な眺望の確保を実現しています。
SE構法による店舗のデザイン(物販店・事務所)
木造3階建で、1.2階に物販店舗、3階に事務所が入る事例です。
ガラスのファサードを通じて、街中にも開放的な木質空間の雰囲気が伝わる建築デザインとなっています。
東側のファサードでは、金属板の外壁によるシャープな外観デザインを実現しています。
店舗の開放的な空間を実現すべく、SE構法の構造用集成材の柱・梁で形づくる門型フレームが連なる空間構成となっています。
階段室を介して事務所がある3階まで空間は連続しています。
関連記事:SE構法の店舗、事務所の事例紹介「ANNEX TSUTENKAKU TOWER」
SE構法による店舗のデザイン(温浴施設)
温浴施設の事例です。
これまではS造やRC造、大断面集成材でしかなし得なかった温浴施設の空間のスケールを、SE構法が切り拓いた木造建築です。
この温浴施設は19,110mm×38,220mmの矩形平面となっており、SE構法の構造スペックを活かして、矩形平面のなかに多様な空間を持つ建築を実現しています。
5,460mmスパンを主とした空間に居場所をつくり込んでいますので、空間の広がりが感じられる設計となっています。
居室部分に耐力壁をまとめて配置して耐震性を確保することで、2つの中庭に面した部分には大開口を実現しています。
関連記事:SE構法の温浴施設の事例紹介「おふろcafeかりんの湯」
SE構法による店舗のデザイン(自動車ショールーム)
自動車ショールームの事例です。
敷地形状に合わせて建物の一部の外壁を平面斜辺として敷地を有効に利用できています。
SE構法の平面斜辺の場合には、梁受け金物をその平面斜辺の角度に合わせて特注で製作します。
柱の面に梁受け金物を取り付けるディテールは同じですが、梁を受けるプレートが平面斜辺の角度に合わせて曲げられています。
自動車ショールームという用途から、前面道路に面してアルミサッシによる大きな開口部が連続する外観デザインとなっています。
大規模木造に最適なSE構法の実務ポイントまとめ
大規模木造に最適なSE構法の実務ポイントは主に下記です。
<システム>
耐震構法SE構法は大規模な木造建築物の技術を基に開発された技術です。耐震構法SE構法は耐震性の高さ、設計の自由度、コストパフォーマンスの良さ、ワンストップサービス等で高い評価を受けており、さまざまな木造建築の実績が増えています。
関連記事:大規模木造から生まれたSE構法を徹底解説(システム編)
<事例>
SE構法は特に低層建築物である店舗、事務所、倉庫、幼児施設、高齢者施設等の非住宅建築を中心に、さまざまな木造建築の実績が増えています。耐火建築物や準耐火建築物への対応も可能です。
関連記事:【解説】大規模木造の可能性が大きく広がるSE構法の事例紹介
<構造設計>
SE構法の構造設計プロセスは、「構造計画」「構造設計」「構造計算」の3ステップで進めていきます。
関連記事:【解説】SE構法の構造設計が大規模木造で評価される理由
<プレカット>
SE構法は大スパン・大空間が求められる大規模木造において、構造設計、材料加工、施工、コストパフォーマンスの良さを高い次元で成立している工法です。SE構法は徹底した品質管理と、構造計算から部材加工まで一貫したCADシステムにより高精度のプレカット加工を実現しています。
関連記事:【解説】大規模木造で構造設計とプレカット加工が連動するSE構法
<施工>
SE構法は、基礎構造から構造体施工に至るまで厳しい品質を追求しています。SE構法は独自の施工管理技術が必要なため、どの建設会社でも施工できるわけではありません。試験に合格したSE構法施工管理技士が在籍し、一定の技術水準を有すると認められた「SE構法登録施工店」がSE構法の建物を施工します。
関連記事:【解説】大規模木造で使いやすいSE構法の施工ポイント
<構造用集成材>
構造用集成材は「科学された木材」と言われ、製造過程でひき板一枚一枚の節の大きさや曲げヤング係数を計測・選別して集成材化しており、表示通りの性能が発揮されるので構造材として安定しています。構造の安全性を保証するSE構法は部材の信頼性を重視し、全て構造用集成材を使用しています。
関連記事:【解説】大規模木造に適した構造用集成材をSE構法が採用する理由
<SE金物>
SE構法は独自のSE金物により、集成材、耐力壁、床合板それぞれの強さを活かしています。一般的な木造は、接合部に柱や梁をホゾ継ぎするため、地震時に断面欠損をまねき、構造材本来の強度を低下させてしまいます。そこでSE構法は、大きな揺れに対して接合部が破損しない技術を追求し、独自にSE金物を開発しています。
関連記事:【解説】大規模木造で様々な設計に対応できるSE構法の強さの理由はSE金物
まとめ
都市部を中心に、大規模木造の計画が活性化しています。
木造はもはや都市建築の選択肢の一つとなっています。発注者は環境重視の姿勢を強めています。
設計者には、木の材料特性を引き出し、流通する製材を活用して、都市部の建築の木造・木質化の実現が求められています。
SE構法の構造スペックをうまく活用すると、木造では実現が難しい高層化、木造耐火などを実現することができます。
都市部の厳しい敷地条件の中、鉄骨造ではコストや施工に問題がある場合においても、木造(SE構法)が有効な選択肢となります。
NCNは構造設計から生産設計(プレカット)までのワンストップサービスが強みです。
計画段階からご相談いただくことで、構造設計から材料調達までを考慮した合理的な計画が可能です。
集成材構法として実力・実績のある工法の一つが「耐震構法SE構法」です。
SE構法は「木造の構造設計」から「構造躯体材料のプレカット」に至るプロセスを合理化することでワンストップサービスとして実現した木造の工法です。
また構法を問わず、木造の構造設計から構造躯体材料のプレカットに至るスキームづくりに取り組む目的で「株式会社木構造デザイン」が設立されました。
構造設計事務所として、「⾮住宅⽊造専⾨の構造設計」、「構造設計と連動したプレカットCADデータの提供」をメイン事業とし、構造設計と⽣産設計を同時に提供することで、設計から加工までのワンストップサービスで木造建築物の普及に貢献する会社です。
株式会社エヌ・シー・エヌ、株式会社木構造デザインへのご相談は無料となっておりますので、ウッドショックでお困りの方もお気軽にお問い合わせください。