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SE構法の店舗の事例紹介「松華堂菓子店」

  • SE構法の店舗の事例紹介「松華堂菓子店」 -

「持続可能な開発目標(SDGs)」への対応、「環境社会、企業統治の要素を考慮する(ESG投資)」への対応が求められる時代になりました。SDGsやESG投資の視点からも木造建築は注目されています。店舗は地域で求められる施設でもあり、多くの人が集う空間でもありますので、愛着を感じやすい木造建築は適していると言えます。特に、高品質で低コスト、短工期が求められる店舗を、確実に設計・施工するために有効な工法が「システム化された木造」であるSE構法です。このコラムでは木造の構造躯体にSE構法を採用した店舗の事例紹介をしながら、意匠計画やSE構法の構造設計等のポイントについてお伝えします。

 

<このコラムでわかること>

SE構法店舗の事例紹介「松華堂菓子店」の概要

東日本大震災に耐えたSE構法店舗

・SE構法地震に強い理由

SE構法店舗の事例紹介「松華堂菓子店」意匠設計の特徴

SE構法店舗の事例紹介「松華堂菓子店」構造設計の特徴

SE構法店舗に適している理由

大規模木造として店舗SE構法で実現するポイント

・まとめ

 

SE構法の店舗の事例紹介「松華堂菓子店」の概要

SE構法の店舗の事例紹介「松華堂菓子店」の概要

「松華堂菓子店」は、宮城県宮城郡松島町に建つ土産物屋、菓子店とその工場、カフェ、住宅からなる3階建ての複合建築です。

この建物の前には日本三景の一つである松島湾が広がり、側道は国宝「瑞巌寺」への参道に当たります。敷地は南東の角地で、国道45号線を挟んで五大堂の向かいに位置します。周辺は観光地であり瑞巌寺の門前町でもあります。

発注者は、創業当時の伝統的な建築群がつくり出していた家並みに対する敬意がありました。そうした想いから、日本を意識した木造建築とすること、そして地震に強い建築を造りたい要望がありました。そして松島の美しい景観に対する建物の構えとして、日本的な建築の精神を継承したものにしたいと考えておられました。

<「松華堂菓子店」の概要>

・用途:店舗併用住宅

・構造:木造(SE構法)

・階数:3階建て

・延床面積:442.34㎡

店舗は、法27条による特殊建築物です。3階建て以上は耐火建築物、2階建てで床面積の合計が500m2以上の場合は準耐火建築物とする必要があります。店舗における建築基準法の規定の詳細については下記の記事をご参照ください。

関連記事:木造で店舗を計画するための関連法規まとめ

 

東日本大震災に耐えたSE構法の店舗

東日本大震災に耐えたSE構法の店舗

2010年にこの建物が竣工した約半年後、2011年3月11日に東日本大震災が発生しました。震度6弱の地震がしばらく続き、その後、津波がやってきました。地震の揺れではガラスは割れませんでしたが、津波の漂流物が当たって破損し、内部に水が流入しました。

津波の高さは、1階の被害状況から120~130cm程度と推察されました。構造体にダメージはなく、ガラスも構造フレームの内側に納めずに外側に木製の押縁で取り付けていたため、揺れによる躯体の変形の影響を直接受けずに済みました。結果として、津波の被害は受けましたが、地震の揺れには耐えたことになります。

東日本大震災は、その規模と比較すると、一般的な木造建築の倒壊が少なかった地震でした。一方で瓦の落下や塀の転倒などは各地で大量に発生しました。これらの結果は揺れ方の特性によるものだと推察されます。東日本大震災では、揺れ始めの際に強い振動が発生したものの、その揺れの周期は短く、建物が結果的に倒れにくかったのだと考えられています。

SE構法で建てた建築物は、2011年3月11日に発生した東日本大震災の本震の際、大きな地震動で建物が変形した影響により内外装などに多少の損壊を受けた建物はありましたが、主要構造部には地震動による被害を受けた建物はなかったことが確認されています。

関連記事:耐震構法SE構法はより耐震性能を高める構造計算が可能な理由

 

SE構法が地震に強い理由

SE構法が地震に強い理由

立体解析による構造計算を実施しているSE構法の場合、地面が同じように揺れても、建物の揺れ方は在来工法などと比較して小さく安定した動き方になると考えられます。

さらにSE構法では構造計算どおりの性能を発揮できるよう、接合部の技術や工場加工、施工管理まで一貫した供給システムにより、耐震性の向上を突き詰めています。

 

SE構法が地震に強い理由のポイントは下記です。

 

1.「立体解析」による構造計算

建築物の安定度を高めることで、建築物の地震応答(揺れ)が最小に抑えられます。

関連記事:耐震構法SE構法は全棟で立体解析による構造計算を実施

 

2.木質半剛接ラーメンフレーム+構造用面材の耐力壁

自由設計を実現しつつ、耐震性を確保できます。

関連記事:耐震構法SE構法が「強くて、安い」のは構造フレームと耐力壁にワケがある

 

3.基礎に直結する柱脚金物

柱のしなりを引き出し、木材の性能を十二分に引き出すことができます。

関連記事:耐震構法SE構法の柱脚や接合部が強い理由はSE金物とSボルト

 

4.剛強な床構面

厚さ28mmの構造用合板により、地震時に発生する荷重が建物全体に分散されます。

関連記事:耐震構法SE構法のプランニングがうまくいく設計の考え方を徹底解説

 

5.徹底した品質管理

構造計算から部材加工まで一貫したCADシステムにより高精度の加工を実現しています。SE構法登録施工店制度により施工水準を高く維持しています。

関連記事:【動画で解説】SE構法の工事監理のポイント(木工事:上棟)

 

SE構法の店舗の事例紹介「松華堂菓子店」の意匠設計の特徴

SE構法の店舗の事例紹介「松華堂菓子店」

「松華堂菓子店」は、東、南面に設けられた大きな庇の深い軒と軒裏の垂木が印象的な外観です。木造建築でありながら大きな開口部が特徴的です。

観光客は瑞巌寺に向かって国道沿いに東側から歩いてくるので、建物を東側に開いています。西側は隣接建物の壁を隠すように白い漆喰塗りの壁を立てて背景をつくり、その手前に開放的なスケルトンを置く、という構成となっています。

意匠設計のポイントは下記です。

・発注者はシンプルな建物にしたいという希望を持っていたことから、木造による普遍的で飽きのこないデザインです。開放的な木造軸組架構による、モダンなテイストを実現しています。

・1階は土産物屋として観光客が入りやすい開放的な店構えを実現しています。2階は松島の美しい景観を望むカフェとして快適な眺望の確保を実現しています。

・開放的な建築にしたいという要望に対して、店舗としての機能面を充足させつつ、SE構法の基本的なモジュールを最大限活用して大きなスパンを架ける方法を提案しています。

関連記事:耐震構法SE構法のプランニングがうまくいく設計の考え方を徹底解説

 

SE構法の店舗の事例紹介「松華堂菓子店」の構造設計の特徴

SE構法の店舗の事例紹介「松華堂菓子店」の構造設計の特徴

SE構法の構造スペックをうまく活用すると、木造では実現が難しい大空間、大開口などを実現することができます。

SE構法であれば、認定こども園で求められるスパンの大きい空間にも対応できますし、架構をシンプルにすることが可能です。

SE構法は、許容応力度計算に加えて偏心率のバランスを考慮した構造設計を行なっておりますので、外壁(耐力壁)の位置も意匠のデザインに合わせて決定することができます。

SE構法は、独自のSE金物を使用した断面欠損の少ない構造によって柱と梁とを接合し、優れた耐震性能を実現しています。SE構法は表面にネジ切り加工を施した通常のボルトの約2倍の強さを持つSボルトを木材にねじ込み、高強度のSE金物との組み合わせにより、耐震性の高いラーメン構造を実現しています。

今回の店舗におけるSE構法の構造設計の主なポイントは下記です。

1.SE構法で実現する木造の門型フレーム

1.SE構法で実現する木造の門型フレーム

店舗部分の基本的な架構は、5,460mmスパンの門形フレームを1,820mmピッチでY方向に連続させ、X方向は西側の壁と階段部分の耐力壁を耐震要素としています。

特徴的なのはその門形フレームのメンバーで、170mm角の柱をダブルに抱き合わせて用い、2階の床梁は成500mm、3階の床梁は成450mmで組んでいる点です。

 

SE構法の構造合理性を発揮できる170mm角の柱

2.SE構法の構造合理性を発揮できる170mm角の柱

柱の170mm角は、SE構法が開発されたときから存在する柱の断面寸法のため、標準デイテールです。在来工法の尺寸モデュールに慣れた人にはなじみが薄いかもしれませんが、SE構法は阪神淡路大震災の惨劇を繰り返さないために開発された構法でもあります。

170mm角とは、在来工法のモデュールではなく大断面集成材の流れを汲み、安全な木造軸組構法を追求する過程で編み出された断面寸法です。

 

.SE構法は偏心率をチェックしながら耐力壁配置が可能

3.SE構法は偏心率をチェックしながら耐力壁配置が可能

この店舗では、西側の短辺方向の壁に耐力壁を集中させ、内部の壁を極力減らすという空間構成を実現しています。

SE構法は偏心率を考慮しながら耐力壁の位置を決定できますので、このような構造計画が実現可能です。

 

店舗に木造が適している理由

店舗、事務所、倉庫を木造で計画するメリット

木造店舗に適している理由は下記です。

1.木造は減価償却期間が短い

木造は減価償却期間が鉄骨造より短く設定(鉄骨造34年、木造22年)されており、建物を所有する事業者にとっては、年間の経費をより多く計上することができ、節税効果を得ることも可能です。

店舗ではライフサイクルコストが特に重要であり、計画から解体工事までをトータルで考える必要があります。

木造の22年という減価償却期間は、税法上の法定耐用年数をもとに設定されており、必ずしも実際の建物の寿命とイコールではありません。現代の木造建築ではメンテナンスを適切に行うことで更に長期に使用することも可能です。

関連記事:店舗、事務所、倉庫を木造で計画するメリット

 

2.木造はSDGsやESG投資に対応しやすい

近年、企業経営のトレンドとして「持続可能な開発目標(SDGs)」への対応、「環境社会、企業統治の要素を考慮する(ESG投資)」が強く意識されるようになりました。

民間で建設する建築物で木造化、木質化を図ることは、今後この二つの流れにそうものとして評価されていくことが予想されます。木造化・木質化には、地球温暖化防止と持続可能な森林経営の下支えという二重の意味を持ちます。

SDGsやESG投資などは経営面からも木材利用は注目されていますし、その建築物を利用する人の健康面や精神面にもプラスの影響が期待できます。

関連記事:木造建築は「SDGs」や「ESG投資」でも企業価値を高められる理由

 

3.木造は建設コストが安い

木造は、鉄筋コンクリート造や鉄骨造の構造より建設コストが安く、事業者もしくはテナント契約者の双方にコストメリットが働く可能性もあります。

木造で使用する一般流通材の木材、建材は、戸建住宅市場で大量に流通しているため、相場の変動が少なく、価格が安定していることが特徴です。木造と鉄骨造で使用する建材を部材ごとに比較しても、規格寸法があるアルミサッシなど、ほとんどの建材が木造のほうが安くなります。

基礎の断面寸法が鉄骨造と比較してとても小さいことから、基礎工事の材料費、施工費、残土処分費なども大幅に軽減できます。建物重量がとても軽くなることから、地盤改良コストも抑えることができます。

設計に関しては、木造のモジュールを意識した設計とすることで、材料の歩留まりがよくなり、施工手間が軽減されることで、結果として建設コストが安くなります。

関連記事:中大規模木造の建設費の概要とコストを抑えるポイント

関連記事:中大規模木造でコストダウンできる構造計画、構造躯体の考え方

 

SE構法が店舗に適している理由

SE構法が店舗に適している理由

SE構法店舗に適している理由は下記です。

1.工期が短いため事業に対応しやすい

店舗の事業を実現するには、短工期に対応する必要があり、そのために最も適した工法が「木造」になります。

NCNが提供するSE構法は、一般に流通している構造用集成材を採用している工法のため、原則構造材発注後45〜60日間で構造材を現場に搬入することが可能です。構造躯体の加工も全て提携するプレカット工場で加工後に現場に搬入しますので、工事着工から建て方まで短期間にスムーズに進められます。

関連記事:補助金事業には木造がベスト!木造がRC造やS造より工期短縮できる理由

 

2.耐火建築物・準耐火建築物に対応しやすい

店舗を木造で計画する際には、まず耐火要件を確認する必要があります。木造は耐火建築物・準耐火建築物・その他建築物と要求される耐火性能によって、意匠性、コスト、工期等に大きく影響してきます。計画の初期段階より、木造の耐火要件を押さえておくことによって、以後の計画をスムーズに進めることが可能です。

店舗では、階数や規模により建築基準法で「耐火建築物」とすることが求められることがあります。「木造耐火」の仕様を満たす必要がありますが、木造(SE構法)でも「耐火建築物」の対応は可能です。

関連記事:木造でも耐火建築物は可能!大規模木造における耐火建築物まとめ

関連記事:広がる木造準耐火の可能性!大規模木造における準耐火建築物まとめ

店舗のように低層の建築は、計画内容を整理し、可能ならば準耐火建築物の仕様で設計することができると、耐火建築物と比較してコストパフォーマンスの高い木造建築が実現できます。

関連記事:木造の準耐火建築物の可能性が広がる!改正建築基準法の解説

 

3.木造建築は人や環境に優しい

木の温かみ、香りは人の気分を和らげてくれる沈静作用があります。木はやすらぎと心地よさをもたらしてくれる優しい材料です。

教育施設の調査において木材利用は、子ども達のストレス緩和、集中力の向上、インフルエンザや怪我の抑制効果などの報告があり、木造の建物は健康にも優しい建築物です。

関連記事:中大規模木造は人や環境に優しい理由

 

大規模木造として店舗をSE構法で実現するポイント

大規模木造として店舗をSE構法で実現するポイント

店舗をSE構法で計画する場合のポイントは下記です。

1.低層建築における木造の優位性

木造の持つ規格化、標準化された設計・施工技術は、多様な建物や空間を低コストで実現することができます。特に、高品質で低コスト、短工期が求められる施設等を、確実に設計・施工するために有効な工法が「システム化された木造」であるSE構法です。

関連記事:「店舗、事務所、倉庫には鉄骨造より木造が「安い、早い、うまい」理由」

 

2.コストの優位性(鉄骨造と木造の比較)

構造で木造(SE構法)を選択することで、基礎や構造躯体のコストが安くなります。外壁仕上げには住宅用サイディング、窓は住宅用アルミサッシなどを使うことで、建材費や施工費も抑えることができます。

関連記事:「中大規模木造の建設費の概要とコストを抑えるポイント」

 

3.木造でよりコストパフォーマンスを高める(木造の構法による比較)

大規模木造の計画において、木造建築を慣れていないと過大にコストや工期が膨らんでしまうことがあります。それを避けるためには、構造躯体は一般用流通材を使うことを前提に構造計画を行うことが基本です。

関連記事:「中大規模木造でコストダウンできる構造計画、構造躯体の考え方」

 

4.木造に精通した構造設計者に依頼(SE構法は大規模木造に適している)

SE構法は単純に「剛性のある木質フレーム」というだけではなく、さまざまな利点を追求し、大規模木造で求められる大空間・大開口を可能にして、意匠設計者の創造性を活かせる設計の自由度を提供しています。SE構法は剛性のある木質フレームに囲まれた耐力壁を併用することで、耐力壁の性能を最大限生かすことが可能となり、壁量を少なくできます。SE構法は木造でも明確な構造計算に基づいているので、設計者は安心して意匠設計に集中できます。

関連記事:「中大規模木造に適した技術と自由があるSE構法の構造設計」

 

5.木造におけるワンストップサービス(SE構法は使い勝手が良い)

SE構法は「木造の構造設計」と「構造躯体材料のプレカット」そして施工というプロセスを合理化することでワンストップサービスとして実現した木造の工法です。大規模木造建築では工法に関わらず、「木造の構造躯体の施工の担い手」を確保する必要があります。SE構法であれば、構造躯体の施工だけをSE構法登録施工店に依頼する「建て方施工」という方法もありますので、施工会社選定の選択肢が大きく広がります。

関連記事:「SE構法はワンストップサービスが魅力!各プロセスごとに徹底解説」

 

まとめ

店舗のような用途の建築においては、SE構法の構造躯体の強みを活かした構造設計により、コスト減、納期短縮、施工性向上を実現することができます。

SE構法は構造用集成材の中断面部材(柱は120mm角、梁は120mm幅)が標準なため、住宅と同等の部材寸法でスパン8m程度までの空間を構成できるコストパフォーマンスをうまく活用していただければと考えております。スパンが10mを超える空間は、特注材やトラス、張弦梁などを活用することも可能です。

計画段階からNCNの特建事業部に相談することで、木造建築に関する知見をうまく利用していただき、ファーストプランの段階から構造計画を相談することで、合理的に設計実務を進めることが可能です。

 

集成材構法として実力・実績のある工法の一つが「耐震構法SE構法」です。SE構法は「木造の構造設計」から「構造躯体材料のプレカット」に至るプロセスを合理化することでワンストップサービスとして実現した木造の工法です。

「耐震構法SE構法」へのご相談はこちらです。

 

また構法を問わず、木造の構造設計から構造躯体材料のプレカットに至るスキームづくりに取り組む目的で「株式会社木構造デザイン」が設立されました。構造設計事務所として、「⾮住宅⽊造専⾨の構造設計」、「構造設計と連動したプレカットCADデータの提供」をメイン事業とし、構造設計と⽣産設計を同時に提供することで、設計から加工までのワンストップサービスで木造建築物の普及に貢献する会社です。

「木構造デザイン」へのご相談はこちらです。

 

株式会社エヌ・シー・エヌ、株式会社木構造デザインへのご相談は無料となっておりますので、お気軽にお問い合わせください。