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SE構法(混構造)の事務所の事例紹介「日新設計社屋」

  • SE構法(混構造)の事務所の事例紹介「日新設計社屋」 -

発注者はSDGsやESG投資など環境重視の姿勢を強めています。非住宅の建築物においても都市部を中心に大規模木造の計画が増えています。事務所建築においては、SE構法の構造スペックをうまく活用することで、木造では実現が難しい大空間や大開口がある建築を実現することができます。木造の可能性を広げる設計手法として、木造と鉄筋コンクリート造(RC造)との「混構造」があります。このコラムでは木造の構造躯体にSE構法を採用したRC造との混構造による事務所建築の事例紹介をしながら、意匠計画やSE構法の構造設計等のポイントについてお伝えします。

 

<このコラムでわかること>

SE構法(混構造)事務所事例「日新設計社屋」の概要

SE構法(混構造)事務所事例「日新設計社屋」の意匠設計の特徴

SE構法(混構造)事務所事例「日新設計社屋」構造設計の特徴

大規模木造として事務所SE構法で実現するポイント

・まとめ

 

SE構法(混構造)の事務所事例「日新設計社屋」の概要

SE構法(混構造)の事務所事例「日新設計社屋」の概要

日新設計社屋」は、三重県津市に拠点を構える日新設計株式会社の新社屋です。建築設計事務所が発注者であり設計者でもある事務所建築です。

<「日新設計社屋」の概要>

・用途:事務所

・構造:混構造 1階:壁式鉄筋コンクリート造、2階:木造(SE構法)

・延床面積:194.08㎡

敷地が古くからの木造家屋が建ち並ぶ住宅地にあること、そして設計者が敬愛する建築家:アントニン・レーモンドの建築を意識して、当初は木造平屋での計画というアイデアもありました。

最終的には敷地面積とのバランス等を考慮して2階建ての計画となりました。木造切妻という伝統的な形式を、木造(SE構法)とRC造の混構造というかたちで進化させた事務所建築です。

日新設計株式会社

日新設計株式会社は、1966年に故・國分忠郎氏が創業した半世紀の歴史を持つ建築設計事務所です。現在は3代目の社長である出口基樹氏が代表を務め、自らが設計者として今回の新社屋の建設が実現しました。

設計においては、勾配の緩い屋根に深い軒、構造体現しという初期のレーモンド建築の特徴を現代的に表現することが、新オフィスにおけるデザインのテーマとなりました。

事務所建築は鉄骨造で計画されることが多かった用途の建築ですが、木造で計画することでコストを抑えつつ、温かみを感じる建築を実現することができます。

事務所は、法27条による特殊建築物に該当しません。そのため、高さ13m以下、軒の高さが9m以下および延べ床面積が3,000m2以下の場合は、耐火・準耐火建築物以外の建築物として建設できます。

関連記事:「木造で事務所を計画するための関連法規まとめ」

都市部の事務所建築においては、4階建て以上の中層化や、耐火建築物もしくは準耐火建築物が求められることがありますが、木造(SE構法)でも「4階建て」や「耐火建築物」の対応は可能です。

関連記事:木造4階建てのSE構法の事務所ビルの事例紹介「ヤマサ製菓ビルハピア豊橋」

 

SE構法(混構造)の事務所事例「日新設計社屋」の意匠設計の特徴

SE構法(混構造)の事務所事例「日新設計社屋」の意匠設計の特徴

日新設計社屋」は、平面はシンプルな長方形で、外観は屋根形状を切妻屋根とした端正なデザインの建築です。建物全体の間口は16,000mmで、奥行は8,500mm(バルコニー端部までの寸法)です。意匠設計のポイントは下記です。

・1階の平面計画は中央部の駐車場を挟んで、道路側にギャラリー、奥にエントランスと階段室、応接室と書庫を配しています。

・1階のギャラリーは、地域の人たちに使ってもらうことを前提としたコミュニティスペースです。奥の応接室と2階の水回りまではギャラリーを借りた人たちが利用可能なセキュリティ計画となっています。

・階段踊り場を2FL-800mmに設定してそこに上下足の切り替えを設け、水回りまでは下足のままアクセス可能です。水回りのレベルを下げたのは、その上部に小屋裏収納を設けたためですが、RCの梁の構面は2階諸室と同一です。

・2階には応接室と事務室と前述の水回りを配し、メーターモジュールの木造(SE構法)で構築しています。

・外壁は1階部分はコンクリート打放し仕上げです。2階部分の横長の連窓がデザインのアクセントになっています。切妻屋根には軒樋を設けず、雨水はベランダ端部の砂利敷きの雨落としで処理しています。

 

SE構法(混構造)の事務所事例「日新設計社屋」の構造設計の特徴

SE構法(混構造)の事務所事例「日新設計社屋」の構造設計の特徴

SE構法の構造スペックをうまく活用すると、木造では実現が難しい大空間、大開口などを実現することができます。

SE構法であれば、事務所建築で求められるスパンの大きい空間にも対応できますし、架構をシンプルにすることが可能です。

SE構法は、許容応力度計算に加えて偏心率のバランスを考慮した構造設計を行なっておりますので、外壁(耐力壁)の位置も意匠のデザインに合わせて決定することができます。

SE構法は、独自のSE金物を使用した断面欠損の少ない構造によって柱と梁とを接合し、優れた耐震性能を実現しています。SE構法は表面にネジ切り加工を施した通常のボルトの約2倍の強さを持つSボルトを木材にねじ込み、高強度のSE金物との組み合わせにより、耐震性の高いラーメン構造を実現しています。

今回の事務所建築におけるSE構法の構造設計の主なポイントは下記です。

木造と鉄筋コンクリート造の混構造

1.木造と鉄筋コンクリート造の混構造

当初の木造平屋への憧憬を実現すべく、1階部分をRC造でつくって「高基礎」とみなし、その上に木造を載せるという構成でこの建物を実現させています。

混構造は、木造と非木造を構造的に一体化して設計する手法です。混構造は、単一の構造の利点を活かし、弱点を補うことができます。

一方で、構造的に難しい点が多いです。特に、異種構造間の応力伝達や剛性の評価などに注意が必要です。

建築基準法の運用に関しては念のため行政や審査機関に確認しながら計画を進めてください。

関連記事:木造と鉄筋コンクリート造の混構造を徹底解説」

 

SE構法の構造ディテールで実現した無柱空間

2.SE構法の構造ディテールで実現した無柱空間

2階の事務室は6,000mm×10,000mmの無柱空間です。成360mmの登り梁で合掌を形成し、タイバーを用いてスラストを抑え、120mm×360mmの平角柱を2,000mmピッチで並べて受けています。

平角柱を内側に120mmセットバックさせているのは、外観の横連窓を重視したからで、外壁は柱の外側に土台を回して組み立てています。

木造(SE構法)で事務所建築で求められる大空間の屋根を構成する設計手法としては「張弦梁」や「トラス」もあります。

関連記事:耐震構法SE構法では張弦梁を採用して軽快な印象の大空間を実現できる」

関連記事:耐震構法SE構法によるトラスで大空間を実現する」

 

長方形の平面形状において水平方向の連続性と高い耐震性を両立

3.長方形の平面形状において水平方向の連続性と高い耐震性を両立

設計者は当初在来工法でできるかを検討していましたが、事務室の東西両面を横連窓にしたことで長手方向で耐力壁の入る場所が役員室周辺に偏ってしまうことに不安を感じ、構造計算で安全性が保障されるSE構法を採用しています。

2階の東側には2,000mm幅のベランダを設けて、軒を1,800mm出しています。軒は鋼製垂木の上に構造用合板28mmを並べてエッジの効いた軒先をつくり出しています。

関連記事:耐震構法SE構法はより耐震性能を高める構造計算が可能な理由」

関連記事:「耐震構法SE構法のプランニングがうまくいく設計の考え方を徹底解説」

 

大規模木造として事務所をSE構法で実現するポイント

大規模木造として事務所をSE構法で実現するポイント

事務所建築を木造(SE構法)で計画する場合のポイントは下記です。

1.低層建築における木造の優位性

木造の持つ規格化、標準化された設計・施工技術は、多様な建物や空間を低コストで実現することができます。特に、高品質で低コスト、短工期が求められる店舗、事務所、倉庫、宗教施設等を、確実に設計・施工するために有効な工法が「システム化された木造」であるSE構法です。

関連記事:「店舗、事務所、倉庫には鉄骨造より木造が「安い、早い、うまい」理由」

 

2.コストの優位性(鉄骨造と木造の比較)

構造で木造(SE構法)を選択することで、基礎や構造躯体のコストが安くなります。外壁仕上げには住宅用サイディング、窓は住宅用アルミサッシなどを使うことで、建材費や施工費も抑えることができます。

関連記事:「中大規模木造の建設費の概要とコストを抑えるポイント」

 

3.木造でよりコストパフォーマンスを高める(木造の構法による比較)

中大規模木造の計画において、木造建築を慣れていないと過大にコストや工期が膨らんでしまうことがあります。それを避けるためには、構造躯体は一般用流通材を使うことを前提に構造計画を行うことが基本です。

関連記事:「中大規模木造でコストダウンできる構造計画、構造躯体の考え方」

 

4.木造に精通した構造設計者に依頼(SE構法は大規模木造に適している)

SE構法は単純に「剛性のある木質フレーム」というだけではなく、さまざまな利点を追求し、大規模木造で求められる大空間・大開口を可能にして、意匠設計者の創造性を活かせる設計の自由度を提供しています。SE構法は剛性のある木質フレームに囲まれた耐力壁を併用することで、耐力壁の性能を最大限生かすことが可能となり、壁量を少なくできます。SE構法は木造でも明確な構造計算に基づいているので、設計者は安心して意匠設計に集中できます。

関連記事:「中大規模木造に適した技術と自由があるSE構法の構造設計」

 

5.木造におけるワンストップサービス(SE構法は使い勝手が良い)

SE構法は「木造の構造設計」と「構造躯体材料のプレカット」そして施工というプロセスを合理化することでワンストップサービスとして実現した木造の工法です。大規模木造建築では工法に関わらず、「木造の構造躯体の施工の担い手」を確保する必要があります。SE構法であれば、構造躯体の施工だけをSE構法登録施工店に依頼する「建て方施工」という方法もありますので、施工会社選定の選択肢が大きく広がります。

関連記事:「SE構法はワンストップサービスが魅力!各プロセスごとに徹底解説」

 

まとめ

事務所のような用途の建築においては、SE構法の構造躯体の強みを活かした構造設計により、コスト減、納期短縮、施工性向上を実現することができます。

SE構法は構造用集成材の中段面部材(柱は120mm角、梁は120mm幅)が標準なため、住宅と同等の部材寸法でスパン8m程度までの空間を構成できるコストパフォーマンスをうまく活用していただければと考えております。スパンが10mを超える空間は、特注材やトラス、張弦梁などを活用することも可能です。

計画段階からNCNの特建事業部に相談することで、木造建築に関する知見をうまく利用していただき、ファーストプランの段階から構造計画を相談することで、合理的に設計実務を進めることが可能です。

 

集成材構法として実力・実績のある工法の一つが「耐震構法SE構法」です。SE構法は「木造の構造設計」から「構造躯体材料のプレカット」に至るプロセスを合理化することでワンストップサービスとして実現した木造の工法です。

「耐震構法SE構法」へのご相談はこちらです。

 

また構法を問わず、木造の構造設計から構造躯体材料のプレカットに至るスキームづくりに取り組む目的で「株式会社木構造デザイン」が設立されました。構造設計事務所として、「⾮住宅⽊造専⾨の構造設計」、「構造設計と連動したプレカットCADデータの提供」をメイン事業とし、構造設計と⽣産設計を同時に提供することで、設計から加工までのワンストップサービスで木造建築物の普及に貢献する会社です。

「木構造デザイン」へのご相談はこちらです。

 

株式会社エヌ・シー・エヌ、株式会社木構造デザインへのご相談は無料となっておりますので、お気軽にお問い合わせください。