【島根県】中大規模木造の実務ポイントとSE構法事例まとめ
脱炭素社会への移行に向けて、木造化・木質化への流れが加速しています。日本国内においても、各都道府県で県産材の活用などの取り組みを進めています。
島根県では、県産木材の県内需要拡大に向け、工務店や建築士による県産木材の積極的な利用を後押しする制度を創設し、「しまねの木」活用建築士及び「しまねの木」活用工務店として認定しています。県産木材を納材する製材所とグループ化をすることで、県産木材の安定的な供給体制の構築を図っています。
また、県産木材を積極的に利用する建築士及び工務店を県産木材の使用量に応じて助成することにより、住宅及び民間建築物における県産木材利用の促進を進めています。
この記事では、島根県における中大規模木造の実務ポイントとSE構法事例についてお伝えします。
<このコラムでわかること>
・中大規模木造の普及が進む島根県の特徴
・しまね県産木材の利用促進に関する基本方針
・島根県における公共建築物等の木材利用
・島根県の中大規模木造に最適なSE構法の概要
・【島根県のSE構法事例】福祉施設「L.C.Cういんぐ」
・SE構法へのお問合せ、ご相談について
・まとめ
中大規模木造の普及が進む島根県の特徴
島根県は、県内全域が日本海側気候ですが、日本海側気候の地域としては最西南端にあるため、比較的温和な気候で沿岸部に豪雪地帯はありません。
年間を通じて湿度が高く、降雨回数も多く、曇り・雨の日が晴れの日より多い気候です。
島根県は、日本海に面しているため漁業が盛んに行われており、総漁獲量は中国・四国地方でトップクラスです。
「縁結びの神様」として有名な出雲大社は、「因幡のしろうさぎ神話」で有名な、大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)をお祀りしています。
世界遺産に登録された「石見銀山」は、今も当時の採掘坑道である間歩(まぶ)や銀により栄えた町並みを観光することができます。
しまね県産木材の利用促進に関する基本方針
島根県では「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」の規定に基づき、「しまね県産木材の利用促進に関する基本方針」を定めています。
「しまね県産木材の利用促進に関する基本方針」は、建築物等における木材の利用の促進の意義、建築物等における県産木材利用の目標、県産木材の利用を推進すべき建築物等、県産木材の利用促進に向けた取り組み、その他県産木材の利用を推進する上で必要な事項を定めています。
主な内容は下記です。
<建築物等における県産木材利用の目標>
次に掲げる目標に沿って県産木材の利用促進を図るものとする。
(1) 公共建築物の新築・増築又は改築を行う場合、高さ16m以下かつ3階以下で、延べ面 積3,000㎡以下の施設は、原則、県産木材を使った木造化を図るとともに、平成27年6月1 日に施行された建築基準法の一部を改正する法律(平成26年法律第54号)により、3階建ての木造 の学校や延べ面積3,000㎡を超える木造建築物等について、一定の防火措置を行うことで主要構造 部の木材を防火被覆せずに見せながら使える準耐火構造等での建築が可能となったことから、当該 基準の見直しに係る公共建築物についても、原則、木造化を図る。 また、全ての施設において、内装等に積極的に県産木材を使った木質化を図る。
(2) 公共土木工事においては、木の持つ特性に留意し、積極的に県産木材を活用する。
(3) その他、調達する物品については、木製品が環境にやさしい自然素材であることから、 県産木材を使った物品を積極的に利用する。
(4) 民間事業者が整備する公共建築物に準ずる施設、住宅、店舗、事務所等の施設におい ても、県産木材の積極的な利用を促進する。
<県産木材の利用を推進すべき建築物等>
県産木材の利用を推進すべき具体的な建築物等は、以下のような建築物等とし、あらゆる 分野での県産木材の利用に努める。
1 県及び市町村が整備する公共の用又は公用に供する建築物
2 民間事業者が整備する次の建築物
(1) 学校
(2) 老人ホーム、保育所、福祉ホームその他これらに類する社会福祉施設
(3) 病院又は診療所
(4) 体育館、水泳場その他これらに類する運動施設
(5) 図書館、青年の家その他これらに類する社会教育施設
(6) 車両の停車場、船舶・航空機の発着場で旅客の乗降・待合いの用に供する施設
(7) 住宅、店舗、事務所等の一般建築物
(8) 上記の施設等に付随する外構工事、工作物等
3 県及び市町村が整備する道路、河川、砂防、治山、公園、土地改良、漁場の公共工事に おける土木構造物
4 机や書棚等の備品、消耗品
島根県における公共建築物等の木材利用
公共建築物は、広く国民一般の利用に供するものであることから、木材を用いることにより、木と触れ合い、木の良さを実感する機会を幅広く提供することができます。
このため、建築物木材利用促進基本方針では、公共建築物について、積極的に木造化を促進することとしています。
林野庁の資料「森林・林業白書」によると、島根県では下記のように木造率が推移しています。
・2017年度:建築物全体(60.8%)、公共建築物(31.0%)、うち低層の公共建築物(46.1%)
・2019年度:建築物全体(57.7%)、公共建築物(24.5%)、うち低層の公共建築物(31.0%)
・2021年度:建築物全体(57.3%)、公共建築物(28.3%)、うち低層の公共建築物(45.0%)
2022年度以降に整備に着手する国の公共建築物については、建築物木材利用促進基本方針に基づき、計画時点においてコストや技術の面で木造化が困難であるものを除き、原則として全て木造化を図ることになっています。
島根県の中大規模木造に最適なSE構法の概要
耐震構法SE構法(以下、SE構法)は、大規模木造建築物の技術を基に開発された技術です。
SE構法は構造計算された耐震性の高い木造建築を実現する、独自の建築システムです。
SE構法は耐震性の高さ、設計の自由度、コストパフォーマンスの良さ、ワンストップサービス等で高い評価を受けており、さまざまな大規模木造の実績が増えています。
SE構法は、単純に「剛性のある木質フレーム」というだけではなく、さまざまな利点を追求し、大規模木造で求められる大空間・大開口を可能にして、意匠設計者の創造性を活かせる設計の自由度を提供しています。
関連記事:耐震構法SE構法は全棟で立体解析による構造計算を実施
SE構法は「木造の構造設計」と「構造躯体材料のプレカット」そして施工というプロセスを合理化することでワンストップサービスとして実現した木造の工法です。その合理的なシステムが、設計・施工のプロセスにおいて納期や工期の短縮につながります。
関連記事:「ウッドショック等のリスクにSE構法のワンストップサービスが強い理由」
【島根県のSE構法事例】福祉施設「L.C.Cういんぐ」
島根県松江市で建てられた福祉施設・ケアセンターです。
SE構法が採用され、勾配天井の大空間や大開口を実現しています。
<「L.C.Cういんぐ」の概要>
・用途:福祉施設・ケアセンター
・構造:木造(SE構法)
・階数:2階建
・延床面積:1.318㎡
・耐火要件:準耐火構造
SE構法へのお問合せ、ご相談について
大規模木造をSE構法で実現するための流れは下記となります。
1.構造設計
SE構法を活用した構造提案を行います。企画段階の無料の構造提案・見積りから、実施設計での伏図・計算書作成、確認申請の指摘対応等を行っております。また、BIMにも対応可能です。
2.概算見積り
SE構法は構造設計と同時に積算・見積りが可能です。そのため躯体費用をリアルタイムで確認可能で、大規模木造の設計において気になる躯体予算を押さえつつ設計を進めることが可能です。
3.調達
物件規模、用途、使用材料を適切に判断して、条件に応じた最短納期で現場にお届けします。また、地域産材の手配にも対応しております。
4.加工
構造設計と直結したCAD/CAMシステムにより、高精度なプレカットが可能です。また、多角形状、曲面形状などの複雑な加工形状にも対応可能です。
5.施工
SE構法の登録施工店ネットワークを活用し、計画に最適な施工店を紹介します。(元請け・建方施工等)
6.非住宅版SE構法構造性能保証
業界初の非住宅木造建築に対応した構造性能保証により安心安全を担保し、中大規模木造建築の計画の実現を後押しします。
↓SE構法へのお問合せ、ご相談は下記よりお願いします。
https://www.ncn-se.co.jp/large/contact/
まとめ
非住宅木造においては、SE構法の構造躯体の強みを活かした構造設計により、コスト減、施工性向上を実現することができます。
SE構法は構造用集成材の中断面部材(柱は120mm角、梁は120mm幅)が標準なため、住宅と同等の部材寸法でスパン8m程度までの空間を構成できるコストパフォーマンスをうまく活用していただければと考えております。
スパンが10mを超える空間は、特注材やトラス、張弦梁などを活用することも可能です。
計画段階からNCNの特建事業部に相談することで、木造建築に関する知見をうまく利用していただき、ファーストプランの段階から構造計画を相談することで、合理的に設計実務を進めることが可能です。
集成材構法として実力・実績のある工法の一つが「耐震構法SE構法」です。SE構法は「木造の構造設計」から「構造躯体材料のプレカット」に至るプロセスを合理化することでワンストップサービスとして実現した木造の工法です。
また構法を問わず、木造の構造設計から構造躯体材料のプレカットに至るスキームづくりに取り組む目的で「株式会社木構造デザイン」が設立されました。構造設計事務所として、「⾮住宅⽊造専⾨の構造設計」、「構造設計と連動したプレカットCADデータの提供」をメイン事業とし、構造設計と⽣産設計を同時に提供することで、設計から加工までのワンストップサービスで木造建築物の普及に貢献する会社です。
株式会社エヌ・シー・エヌ、株式会社木構造デザインへのご相談は無料となっておりますので、お気軽にお問い合わせください。