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WOODEN STRUCTURE中大規模木造

契約書の重みが大きく増す改正民法で建築実務者が守るべきポイント

  • 契約書の重みが大きく増す改正民法で建築実務者が守るべきポイント -

改正民法により「契約社会」を志向する枠組みとなります。全体的に消費者保護の色合いが強くなります。改正民法の「契約不適合」という言葉が示すとおり、従来よりも当事者間の「契約内容」が重視されるようになります。契約内容には、契約書や契約約款だけではなく、設計図書や仕様書なども含みます。トラブルを引き起こさないためには、どんな契約なのかという記録をきちんと残しておく意識が重要になってきます。このコラムでは改正民法における建築実務者が守るべきポイントについてお伝えします。

 

<このコラムでわかること>

改正民法の施工前の契約は旧法適用

改正民法で時効ルールが整理され責任期間は延びる

改正民法で設計業務に求められる実務ポイント

改正民法で施工業務に求められる実務ポイント

・まとめ

 

改正民法の施工前の契約は旧法適用

改正民法が施行された202041日以降に締結された契約には、すべて改正民法が適用されます。ただし経過措置として、施行後に契約不適合が発見されるなどしても、契約自体を施行前に締結していれば、適用される前の民法となります。

改正民法で仕事の内容がそれほど変わるということはありませんが、消費者保護の意味合いが強い法改正ですので契約内容を追及される場面が多くなる可能性はあります。その対策は、「契約内容や記録をなるべく残す工夫」です。

契約とは「法的な約束」です。仕事上の約束は何かを明確にして、きちんと証拠に残すようにすることがこれまでよりも大切になります。契約内容は、契約書や契約約款、そして設計図書などの業務仕様書が含まれます。

今回の改正民法では、契約約款の存在は大きく、トラブルが生じた場合の解決の基準とはなりますが、契約内容に違反したかどうかまでは処理できません。書類、図面に限らず、何らかの形で契約内容を残しておく工夫が必要です。

 

改正民法で時効ルールが整理され責任期間は延びる

発注者が施工者に責任追及できる期間について改正民法には2つの規定があります。

・契約不適合責任期間について

「契約不適合を知った時から1年以内に通知しない時は、不適合を理由とした請求はできない」

旧民法では、「知ったときから1年以内の権利行使が必要」と規定しており、損害賠償などは発覚後1年以内に行う必要があります。改正民放では通知をすればよいため、発注者側に有利な改正となります。

・権利の存続期間について

「発注者が権利行使できることを知った時から5年、権利行使できる時から10年のいずれか早く到来した時」

債務不履行責任の消滅時効ルールです。

消滅時効のルールには債権の規定もあります。未払い工事代金の請求権は従来3年で時効を迎えるとされましたが、改正民法で5年に伸び、延長も可能になりました。

改正民法の規定とは別に、責任期間は契約で短縮できます。国の中央建設業審議会による工事標準請負契約約款と、民間連合請負契約約款は、「契約不適合責任請求期間は引き渡しから2年」と定めています。

これらの約款は、引き渡しから2年以内に限定する代わりに、期限切れ直前に契約不適合が判明した場合は、「通知から1年以内の請求」を認めています。改正民法前、期間は「木造は1年、非木造は2年」だったので、木造については2倍に延びたことになります。

 

改正民法で設計業務に求められる実務ポイント

設計契約においては、以前より「準委任契約」か「請負契約」かという議論がありました。

改正民法は、設計者が契約上の義務とは何かを改めて考える契機になるとも言われています。

一般的な設計契約は、発注者に設計図書などの成果品を納品し、設計監理料の支払いを受けることで完了します。発注者には中止権がありますが、旧民法では契約解除できるのは設計者側に帰責事由(責めに帰すべき事由)がある場合に限られます。

改正民法は契約解除について帰責性要件を外しました。契約当事者間同士が任意に契約関係の拘束を解くルールと位置付けました。

建築設計の実務においては、建築主の要求に従う、法令制限をクリアする、当初の要望からの変更に対応するなどが求められます。

設計監理のプロセスの中で、発注者の要望を実現可能な形にまとめ上げていく能力が求められています。設計者が善良な管理者の注意義務(善管注意義務)を負って行うべき重要な契約内容の一つです。

改正民法を考える時には、改めて建築士法を守る義務を考える必要もあります。

建築士法の規定には、業務内容の重要事項説明書内容や契約書というフォーマットに、当事者の合意内容を組み入れることで、建築紛争を回避する目的もあります。

 

改正民法で施工業務に求められる実務ポイント

改正民法においては、請負契約も売買契約に準じた契約類型と再定義しています。このため売買のルールが建築行為にも登場してきます。その最も象徴的な言葉が「契約不適合」です。

改正民法はさらにこの契約不適合責任を「債務不履行責任」の一種と位置付けています。

改正民法は、契約解除について帰責性用件(帰責事由:責めに帰すべき事由)を外しています。契約者同士が任意に契約関係の拘束を解くルールと位置づけられました。

施工契約で最も大きな影響は、完成後に重大な契約不適合が発覚した際です。発注者は、契約不適合(債務不履行)が重大なら、建物の引き渡し後でも契約を解除できます。

施工契約では、「債権譲渡の原則自由化」も影響を及ぼします。売掛金などの債権譲渡を禁ずる契約上の特約を無効とし、事業体の資金調達を円滑化するための改正もあります。建設工事の場合、発注者が工事途中で支払う予定の前払金などが該当します。

 

まとめ

改正民法は運用が始まったばかりなので、判断や解釈がまだ揺れている条項も少なくありません。そうした点も今後の裁判で明らかになってくると予測されます。

本コラムの内容は「記事掲載時に発表されている情報」であることのご理解、ご了承をお願いします。建築実務者の皆様においては、改正民法の実務に関しては弁護士などの法律の専門家に確認、相談していただきながら進めていただきますようお願い申し上げます。

改正民法には「あるべき姿」を定めた強行な規定は少ないです。契約自由の原則があるので、スタンダードな契約約款には様々な立場からの議論の余地があります。

改正民法による環境変化により、契約行為の重要性が注意喚起されるという波及効果は期待されます。

 

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【次回のコラム→「中大規模木造の構造材の特性やメリット・デメリット

木造で建築を設計する際に求められる構造材の基礎知識について解説します。】