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WOODEN STRUCTURE中大規模木造

木造で高齢者施設を計画するための関連法規まとめ

  • 木造で高齢者施設を計画するための関連法規まとめ -

高齢者施設は、社会福祉施設に含まれることから木材の利用促進の対象です。発注者の視点で高齢者施設の運営を考えると、建設費を抑えることで、事業性が大きく向上します。その際の有効な方法は、工法に「木造」を選択することです。

高齢者施設の多くは、建築基準法27条による特殊建築物です。高齢者施設を計画する際に注意すべきことは、建築基準法以外に定められる各施設ごとの設置基準によって規定されている項目を遵守することです。高齢者施設は、運営主体、目的や入居条件によりさまざまな種類があります。その各施設ごとに設置基準等の規定が異なります。

このコラムでは、主に要介護状態の方を対象とした高齢者施設である「特別養護老人ホーム」と、主に自立状態の方を対象とした高齢者施設である「ケアハウス」を例に、木造で高齢者施設を実現するための関連法規の規定についてそのポイントをお伝えします。

 

<このコラムでわかること>

木造高齢者施設(特別養護老人ホーム)における耐火上の要件

木造特別養護老人ホームにおける内装制限防火区画立地制限

木造特別養護老人ホーム建築基準法以外に注意すべき規定

木造高齢者施設(ケアハウス)における耐火上の要件

木造ケアハウスにおける内装制限防火区画立地制限

木造ケアハウス建築基準法以外に注意すべき規定

特別養護老人ホームの2階建準耐火建築物で可能となる条件

・まとめ

 

木造の高齢者施設(特別養護老人ホーム)における耐火上の要件

特別養護老人ホームは、建築基準法27条による特殊建築物です。建築基準法施行令19条により児童福祉施設等に含まれます。建築基準法では、階数や床面積の規模に応じた耐火性能が求められています。

特別養護老人ホームを計画する際に注意すべきことは、「特別養護老人ホームの設備および運営に関する設置基準」に規定があることです。その規定では2階建て以上の場合は「耐火建築物」、平屋建ての場合は「準耐火建築物」が基本となります。

参考ページ:「中大規模木造に関連する防耐火構造の考え方と関連法規」はこちらです。

ただ、安全性の確保の措置をした上で、都道府県知事等が認めた平屋建ての場合は、耐火建築物・準耐火建築物以外の建築物として木造で計画することができます。

下記の表で、階数別、高さ別、規模別に耐火上の要件をまとめます。

木造の高齢者施設(特別養護老人ホーム)における耐火上の要件

<備考>

・「その他の建築物」とは、耐火建築物・準耐火建築物以外の建築物のことです。

・複合用途の建築物とする場合は、上表だけとは限りません。

・本記事は2020年9月末段階の法規の情報となりますのでご注意ください。

・建築基準法や「特別養護老人ホームの設備および運営に関する設置基準」の改正により、本記事の内容が変更になることがあります。

 

木造の特別養護老人ホームにおける内装制限、防火区画、立地制限

木造の特別養護老人ホームにおける内装制限、防火区画、立地制限

木造の特別養護老人ホームにおける内装制限に関しては、建築基準法の内装制限を確認する以外に、「特別養護老人ホームの設備および運営に関する設置基準」においても内装制限に関わる規定があるので注意が必要です。

居室等およびこれから地上に通ずる廊下その他の通路の壁および天井の室内に面する部分の仕上げを不燃材料でしていることにより、居室、静養室、食堂、浴室および機能訓練室を3階に設けることが可能です。ただしその際は、避難計画、防火区画設置も必要となります。

木造の特別養護老人ホームにおける防火区画に関しては、「特別養護老人ホームの設備および運営に関する設置基準」で、医務室の設置を義務づけており、これを医療法上の診療所とすることになっています。

異種用途区画の規定により、この診療所とその他の部分とを防火区画する必要があるかについては、確認申請時に特定行政庁と相談する必要があります。

木造平屋建てとする場合でも、調理室等に防火区画を設置する必要があります。

3階以上の階に居室、静養室等を設ける場合は、防火区画の設置が要件となり、その際、避難計画、内装制限も必要となります。詳細は「特別養護老人ホームの設備および運営に関する設置基準」で確認が必要です。

木造の特別養護老人ホームにおける立地条件に関しては、都市計画用途地域のうち工業専用地域に建てることができませんので注意が必要です。

 

木造の特別養護老人ホームで建築基準法以外に注意すべき規定

木造の特別養護老人ホームで建築基準法以外に注意すべき規定

木造で特別養護老人ホームを計画する際は、建築基準法以外で注意すべき規定があります。特にポイントとなるのは、「特別養護老人ホームの設備および運営に関する設置基準」です。

 

1.老人福祉法(厚生労働省管轄)

「特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準」

老人福祉法には、特別養護老人ホームは「特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準」を守ることが規定されています。

主な規定は下記です。(他にも細かい規定がありますので、計画時に必ず確認をお願いします。)

■施設の設置

居室、静養室、食堂、浴室および機能訓練室(以下「居室、静養室等」という。)は、 階以上の階に設けてはならない。ただし、次の各号のいずれにも該当する建物に設けられる居室、静養室等については、この限りでない。

一 . 居室、静養室等のある3階以上の各階に通ずる特別避難階段を二以上(防災上有効な傾斜路を有する場合または車いす若しくはストレッチャーで通行するために必要な幅を有するバルコニーおよび屋外に設ける避難階段を有する場合は、一以上)有すること。

二. 3階以上の階にある居室、静養室等およびこれから地上に通ずる廊下その他の通路の壁および天井の室内に面する部分の仕上げを不燃材料でしていること。

三 . 居室、静養室等のある3階以上の各階が耐火構造の壁または建築基準法施行令112条1項に規定する特定防火設備(以下「特定防火設備」という。)により防災上有効に区画されていること。

■設備の基準

<居室>

・一の居室の定員は、 4人以下とすること。地階に設けてはならないこと。

・入所者一人当たりの床面積は、10.65m2以上とすること。

・一以上の出入口は、避難上有効な空地、廊下または広間に直接面して設けること。

・床面積の1/ 14以上に相当する面積を直接外気に面して開放できるようにすること。

<食堂および機能訓練室>

・合計した面積が3m2 ×入所定員以上とすること。

・ただし、食事の提供または機能訓練を行う場合において、当該食事の提供または機能訓練に支障がない広さを確保することができるときは、同一の場所とすることができる。

<廊下・階段・斜路の基準>

・廊下の幅は、1.8m以上とすること。ただし、中廊下の幅は、2.7m以上とすること。

・居室、静養室等が2階以上の階にある場合は、一以上の傾斜路を設けること。ただし、エレベーターを設ける場合は、この限りでない。

 

2.消防法(消防庁管轄)

特定防火対象物(消令別表第1(六)ロ)

消火栓設備やスプリンクラー設備の設置が求められる規模についても考慮し計画する必要があります。

 

3.医療法(厚生労働省管轄)

施設内の医務室については、法律に規定する診療所とすることが定められています。

 

木造の高齢者施設(ケアハウス)における耐火上の要件

ケアハウスは、建築基準法27条による特殊建築物です。建築基準法施行令19条により児童福祉施設等に含まれます。建築基準法では、階数や床面積の規模に応じた耐火性能が求められています。

ケアハウスを計画する際に注意すべきことは、社会福祉法による「軽費老人ホームの設備および運営に関する設置基準」に耐火性能に関する規定があることです。原則として、準耐火建築物以上とする必要があります。3階建て以上の場合や3,000m2を超える場合は耐火建築物としなければなりません。

ただ平屋建てで、安全性の確保の措置をした上で、都道府県知事等が認めた場合は、耐火建築物・準耐火建築物以外の建築物として木造で計画することができます。

下記の表で、階数別、高さ別、規模別に耐火上の要件をまとめます。

木造の高齢者施設(ケアハウス)における耐火上の要件

<備考>

・「その他の建築物」とは、耐火建築物・準耐火建築物以外の建築物のことです。

・複合用途の建築物とする場合は、上表だけとは限りません。

・本記事は2020年9月末段階の法規の情報となりますのでご注意ください。

・建築基準法や「軽費老人ホームの設備および運営に関する設置基準」の改正により、本記事の内容が変更になることがあります。

 

木造のケアハウスにおける内装制限、防火区画、立地制限

木造のケアハウスにおける内装制限、防火区画、立地制限

木造のケアハウスにおける内装制限に関しては、建築基準法の内装制限を確認する以外に、「軽費老人ホームの設備および運営に関する設置基準」においても内装制限に関わる規定があるので注意しましょう。

木造平屋建てとする場合でも、天井等の内装材等には難燃剤の材料を使用します。また調理室等の火気を使用する部分には、不燃材料を使用します。

木造平屋建てとする場合でも、調理室等に防火区画を設置する必要があります。

木造のケアハウスにおける立地条件に関しては、都市計画用途地域のうち工業専用地域に建てることができませんので注意が必要です。

 

木造のケアハウスで建築基準法以外に注意すべき規定

木造のケアハウスで建築基準法以外に注意すべき規定

木造でケアハウスを計画する際は、建築基準法以外で注意すべき規定があります。特にポイントとなるのは、「軽費老人ホームの設備および運営に関する設置基準」です。

1.社会福祉法(厚生労働省管轄)

「軽費老人ホームの設備及び運営に関する基準」

老人福祉法には、ケアハウスは「軽費老人ホームの設備及び運営に関する基準」を守ることが規定されています。

主な規定は下記です。(他にも細かい規定がありますので、計画時に必ず確認をお願いします。)

■設備の基準

<居室>

・一の居室の定員は、一人とすること。ただし、入所者へのサービスの提供上必要と認められる場合は、二人とすることができる。

・地階に設けてはならないこと。

・一の居室の床面積は、21.6m2(洗面所、便所、収納設備および簡易な調理設備を除いた有効面積は14.85m2)以上とすること。ただし、前出ただし書の定員二人とする場合にあっては、31.9m2以上とすること。

・洗面所、便所、収納設備および簡易な調理設備を設けること。

<共同生活室により区画される居室>

・一の居室の定員は、一人とすること。ただし、入所者へのサービスの提供上必要と認められる場合は、二人とすることができる。

・地階に設けてはならないこと。

・一の居室の床面積は、15.63m2(洗面所、便所、収納設備および簡易な調理設備を除いた有効面積は13.2m2)以上とすること。ただし、前出ただし書の定員二人とする場合にあっては、23.45m2以上とすること。

・洗面所、便所、収納設備および簡易な調理設備を設けること。ただし、共同生活室ごとに便所および調理設備を適当数設ける場合にあっては、居室ごとの便所および簡易な調理設備を設けないことができる。

<設備>

・居室が2階以上の階にある場合にあっては、エレベーターを設けること。

 

特別養護老人ホームの2階建が準耐火建築物で可能となる条件

特別養護老人ホームの2階建が準耐火建築物で可能となる条件

国は高齢者施設に関する規制改革を進めており、厚生労働省から「構造改革特別区域における特別養護老人ホーム等の2階建て準耐火建築物設置事業の全国展開について」という通達が発表されています。全国の特別養護老人ホーム等において条件付きで準耐火建築物で建設することが可能になっています。その内容は下記です。

特別養護老人ホーム、介護老人保健施設,指定短期入所生活介護事業所および指定介護予防短期入所生活介護事業所(「特別養護老人ホーム等」といいます。)については、原則として耐火建築物であるが、2階および地階に居室(療養室)その他利用者の日常生活に充てられる場所(「居室等」という。)を設けていない準耐火建築物であることが求められます。この要件の特例として,2階または地階に居室等を設ける場合等であっても,一定の要件を満たした場合,準耐火建築物とすることが認められています。

<準耐火建築物の2階または地階に居室等を設ける場合の3要件>

1  所在地を管轄する消防長又は消防署長と相談の上,非常災害に関する具体的計画に入所者の円滑かつ迅速な避難を確保するために必要な事項を定めること。

2  避難,救出等の訓練については,計画に従い昼間および夜間において行うこと。

3  火災時における避難,消火等の協力を得ることができるよう,地域住民等との連携体制を整備すること。 

※具体的な確認方法については地方自治体等が発表している要綱をご確認ください。

 

まとめ

木造の高齢者施設を計画する際のキーワードは「準耐火建築物」です。木造の場合、耐火建築物と準耐火建築物では、建設コスト・工期・デザイン等に大きな差が生じるからです。準耐火建築物となることで、木造の優位性を発揮できるとも言えます。

参考ページ:「木造の準耐火建築物の可能性が広がる!改正建築基準法の解説」はこちらです。

 

木材は柔らかで温かみのある感触が得られ、室内の湿度変化を緩和させ快適性を高めるということで、国は木材を活用した高齢者施設づくりを推進しています。

参考ページ:「中大規模木造が実は最適!高齢者施設の種類と特徴」はこちらです。

 

これまでの法改正直後の状況をふりかえっても、改正建築基準法の解釈や運用方法については、行政窓口が混乱していたり関連する条例等も整備されていない場合も多いので、本コラムの内容も「改正内容の要点解説」となることのご理解、ご了承をお願いします。

建築実務者の皆様においては、安易に自己判断せず、該当の行政窓口や指定検査確認機関等によく内容を確認をしてから設計や施工を進める必要がありますのでご注意ください。

 

集成材構法として実力・実績のある工法の一つが「耐震構法SE構法」です。SE構法は「木造の構造設計」から「構造躯体材料のプレカット」に至るプロセスを合理化することでワンストップサービスとして実現した木造の工法です。

「耐震構法SE構法」へのご相談はこちらです。

 

また構法を問わず、木造の構造設計から構造躯体材料のプレカットに至るスキームづくりに取り組む目的で「株式会社木構造デザイン」が設立されました。構造設計事務所として、「⾮住宅⽊造専⾨の構造設計」、「構造設計と連動したプレカットCADデータの提供」をメイン事業とし、構造設計と⽣産設計を同時に提供することで、設計から加工までのワンストップサービスで木造建築物の普及に貢献する会社です。

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