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WOODEN STRUCTURE中大規模木造

海外と日本の動向から考える大規模木造・中高層木造の展望

  • 海外と日本の動向から考える大規模木造・中高層木造の展望 -

気候変動や脱炭素、カーボンニュートラルへの対策として、建築物の木造化・木質化への移行は世界的な潮流になっています。

建築実務者においては木材利用拡大の取り組みとして、現在の日本の森林の状況や気候変動対策について理解し、対応することが求められています。

近年、より多くの個人・法人が木造化・木質化にチャレンジしやすくなるように、ルールや設計、仕様などの環境が整備されており、木材活用の推進が期待されています。

木造化・木質化には環境性能向上や環境負荷軽減のメリットだけでなく、木の空間で過ごす人々が満足する仕組みをどう実現するかも大切です。

このコラムでは、海外と日本の動向から考える大規模木造・中高層木造の展望についてお伝えします。

 

<このコラムでわかること>

木造化、木質化は「地球規模」と「地域規模」の2つの環境で考える

・海外の大規模木造、中高層木造の動向

・国内の大規模木造、中高層木造の動向

脱炭素、カーボンニュートラルの観点で考える木造化・木質化

ESG投資の観点で考える木造化・木質化

大規模木造、中高層木造に関する制度変更と需要拡大の動き

大規模木造、中高層木造の価値を正しく訴求する意義

・まとめ

 

木造化、木質化は「地球規模」と「地域規模」の2つの環境で考える

木造化、木質化は「地球規模」と「地域規模」の2つの環境で考える

なぜ世界的に木造化・木質化が注目されているのでしょうか。

その理由を考える時、現在の環境を2つのスケールで捉えることで顕在化してきます。

1つは「地球規模」の環境です。

温暖化ガスを削減し、脱炭素社会をいかに実現するかは地球全体の課題です。木材には炭素貯蔵効果があり、鉄筋コンクリート造や鉄骨造と比較して建築施工で排出する炭素を抑えられるメリットもあります。地球環境保持のため、木造建築は無視できない技術といえます。

もう1つは「地域規模」での環境です。

山林を健康的に保つことで、国土の保全、水源の涵養(かんよう)など地域全体の環境を保護できます。また林業は地域を支える成長産業となる可能性もあります。林業振興に伴う森林環境保全は、その地域を越え、都市生活や経済にも大きく貢献します。

大規模木造・中高層木造の普及・拡大は、この地球・地域の2つの環境を健全に保つ有効な施策といえます。

現代の日本においては、大規模木造・中高層木造の普及・拡大に向けて法改正や建材、工法の開発などの整備が進行中です。

特にCLT(直交集成板)、LVL(単板積層材)の技術開発が進み、今日ではより大規模な建築に適した建築材料が木で安定的に製造できます。

関連リンク:中大規模木造の構造材の特性やメリット・デメリット

大規模木造・中高層木造を建設するためのさまざまな技術が整ってきた段階を迎えています。

ビルのような多層の建築物や耐火性や安全性に優れる建物を、鉄骨造や鉄筋コンクリート造だけでなく木造でどう実現するかが問われています。

そうした大規模木造・中高層木造をどのように都市に増やしていくかは、建築実務者が前向きに取り組むべき課題でもあります。

 

海外の大規模木造、中高層木造の動向

海外の大規模木造、中高層木造の動向

欧州では、木造の普及が進んでいます。

欧州では熱波などによる自然被害が甚大なこともあり、気候変動に対する危機感が高まっています。加えて脱炭素社会への移行もあり、結果として木造化・木質化が進んでいます。

省エネや高断熱・環境対策のためのツールとして、あるいは工期短縮による財政安定・投資先確保のツールとして、木造建築を選択するケースが増えています。

森と都市をつなぐ政策で、森林利用促進に関する法律やプログラムの整備により、公共建築などの木造化が広がっており、特に教育施設(学校、幼稚園、保育園)に戦略的に木造を導入している国もあります。

木造化・木質化が普及・拡大している背景や実務ポイントは下記です。

・都市部では家賃や住宅価格が高騰し、住宅不足も深刻です。貧困層や低所得者を含め住環境の社会的安定をいかに実現するかが住宅政策の重点課題で、木造は低コスト・短工期で住宅を供給する手段となっています。

・建物のエネルギー性能評価が厳格化され、低水準の建物は売買や賃貸契約ができない国もあります。

・建て主や投資家にとって、工期の遅れは経済的にも大きな問題です。そこで工期短縮ツールとしても、軽量かつ乾式で施工できる木造が注目されています。

関連リンク:大規模木造とSDGs・脱炭素・ESG投資の相性が良い理由

 

国内の大規模木造、中高層木造の動向

国内の大規模木造、中高層木造の動向

日本は国土の約3分の2が森林で、森林率は先進国が中心の経済協力開発機構(OECD)加盟37カ国で3番目に高い国です。

森林の地球温暖化抑制効果は広く知られており、現時点で実証フェーズにあるものとしては、森林を育てる以外にCO2を固定する技術はないとも言われています。

国内で森林を充実させることに加え、「伐って、使って、植える」循環利用で森林の資源を活用し、木製品を使うことも気候変動対策に役立ちます。

林野庁では、都市の木造化に向けた取り組みを推進しています。非住宅や中高層の建築物での木材利用を拡大することで、森林資源の循環利用、CO2の固定や長期貯蔵等を推進し、2050年のカーボンニュートラル実現へ貢献する取り組みを進めています。

国産材の需要拡大は地球温暖化防止やカーボンニュートラルの観点からも重要です。

木材に触れる機会が減る一方で、森林資源の充実で素材に適した太い木が増えています。構造材として木材を使うことも大事ですが、普段生活するインテリアを木質化し、板として木材を使うことで、多くの人々に木の良さを実感してもらう環境づくりも重要です。

日本国内における近年の大規模木造、中高層木造の主なトピックスは下記です。

・横浜市で高層木造(11階建て)の「大手建設会社の自社施設の木造ビル」(木造耐火建築物)が竣工

・民間企業グループが高さ350m、70階建て木造建築実現に必要な技術開発に挑む意欲的なプロジェクト「超高層木造ビル」を発表。

・名古屋市に竣工した木造オフィスビルは、構造は鉄筋コンクリート造で、コンクリート型枠にCLT(直交集成板)を用い存置して木質化。

 

近年、建築物の所有者・利用者側には、脱炭素やカーボンニュートラル、ESG投資などへの意識、関心が大きく高まっています。

発注者側の木造化・木質化への積極的な姿勢が、木材利用の動きをさらに進めると想定されます。

 

脱炭素、カーボンニュートラルの観点で考える木造化・木質化

脱炭素、カーボンニュートラルの観点で考える木造化・木質化

パリ協定の2℃目標を守るためには、埋蔵された化石燃料の3分の2は使うことができないとされている情報もあります。

これが世界経済に影響を与え、このままでは投資家が巨大な損失を被る可能性があります。

そこから気候変動リスクを金融機関や企業が財務リスクとして開示しなければならないという流れの一因になりました。

温暖化ガス排出量における建築・不動産分野が占める割合は大きく、建築・不動産セクターは重要なファクターに位置付けられており、開示は各国で義務化されています。

建築主からは、ライフサイクルを通して建築物から排出される温暖化ガスの情報を聞かれるようになり、それを数字で示さなければならなくなりました。

金融機関が主導してCO2排出量を算定する取り組みは増えていますが、金融機関からの融資の際に排出量算定、LCA(ライフサイクルアセスメント)の評価が条件になると、建設会社や設計者はその対応が求められます。

建設工事に関わる排出量の算定方法の検討は進んでいますが、木造建築の優位性を示す上でも算出手法をいち早く整備して、木造建築や木材利用、森林への投資の優位性を社会に示す必要性が高まっています。

木材は、カーボンニュートラル実現に向け、製造エネルギー削減の観点からも炭素貯蔵の観点からも貢献できる資源です。その良さを定量的に示す方法が求められていますし、整理を進めてわかりやすく示していくことが期待されています。

関連リンク:カーボンニュートラルで求められる大規模木造の法律、制度まとめ

 

ESG投資の観点で考える木造化・木質化

ESG投資の観点で考える木造化・木質化

木造はESG(環境・社会・ガバナンス)の観点からも注目され、SDGs(持続可能な開発目標)実現にも確実に貢献します。

関連リンク:木造建築は「SDGs」や「ESG投資」でも企業価値を高められる理由

建設におけるCO2排出量削減などさまざまなインパクトを示すことが、ESG投資とライフサイクル全体のCO2排出量が小さい大規模木造、中高層木造を結び付ける鍵になります。

ESG投資の観点で木材活用を捉える考え方もあります。

投資の考え方は、これまでリスクとリターンの2軸で考えられてきましたが、これに対し環境や社会にもたらすポジティブなインパクトを評価軸に加えるESG投資の考え方が広がりつつあります

ここで中長期的に踏まえるポイントは、気候変動への対応、健康性・快適性の向上、地域社会・経済への寄与、災害への対応などで、いずれも木材活用との親和性が高いです。

環境や社会へのインパクトの不動産価値への反映が、ESGや木材活用の拡大には重要と考えられます。

ESG投資における建築物の木材利用の評価が有効に行われるよう、CO2排出削減・炭素貯蔵、資源の持続可能性、木の魅力を評価する方法も検討されています。

林野庁のホームページでは、建築物に利用した木材に係る炭素貯蔵量の表示に関するガイドラインを公表して、簡単な計算シートが掲載されています。

関連リンク:建築物に利用した木材に係る炭素貯蔵量の表示に関するガイドライン

木造建築普及にあたり、コスト高の解消と建築主の木造への不安払拭の課題があり、ESG経営・投資への対応も求められます。

自社のESG経営はもちろん、建築主のESG経営への貢献を考えることも重要です。

 

大規模木造、中高層木造に関する制度変更と需要拡大の動き

大規模木造、中高層木造に関する制度変更と需要拡大の動き

木材利用促進のための近年の法令改正で実務的にもっとも大きな印象を与えたのが、2019年施行の改正建築基準法で導入された「耐火同等準耐火建築物」です。

これまでの建築基準法では耐火建築物が求められた建築物であっても、準耐火構造と追加措置により、火災時倒壊防止構造、避難時倒壊防止構造、延焼防止建築物として「あらわし」の燃えしろ設計が可能になりました。

その結果、準防火地域・防火地域以外では木造4階建て程度はかなり設計しやすくなったといえます。

「耐火同等準耐火建築物」により、木の良さを見せるデザインの幅は広がりました。法律の合理化と実際の運用がさらに進むと、より魅力的な木造デザインが増えるのではないかという期待があります。

木造建築の需要を高めるためには、建築実務者はもちろん、発注者、投資家、金融機関をどう巻き込むかが鍵です。

特に木材利用の効果を見える化し、不動産価値の向上につなげることが重要です。そのためには下記の項目のようなことを明示していく必要があります。

・木材による炭素固定、加工・輸送時におけるCO2排出の削減

・解体時における再利用の可能性

・森林整備による水害レジリエンス(強じん性)の向上

・林業サプライチェーンの整備に伴う地域活性化

・建物入居者の健康・ウェルビーイングの向上

社会が変化する中、将来の暮らし方、働き方を考え、サステナブル(持続可能)なまちづくりをする中で木材活用をどう組み合わせたら、ポジティブなインパクトを示せるのか、明快なビジョンとともに木材活用を加速させる動きが期待されています。

 

大規模木造、中高層木造の価値を正しく訴求する意義

大規模木造、中高層木造の価値を正しく訴求する意義

木材の価値を正しく理解してもらうには、木を適切に管理して美しい状態で使い続ける取り組みが必要です。

木への正しい理解は、木の価値認識を高め、木材活用をさらに進めます。

木造化・木質化普及のポイントとして「健康に配慮できる」「気候変動対策に役立つ」「SDGsの一環になる」などが挙げられます。

木に対する理解が深い国は、木を使う意識の高さにもつながっています。木材のこうした多様な特長を丁寧に説明していくことも大切です。

木造建築への不安は、建築主や設計事務所、建設会社などが協力して課題解決することで解消に向かうはずです。

消費者も企業も、直接家計や事業活動につながる施策には注目します。

木材を強く経済につなげるカーボンプライシングは、無関心層が木材利用に興味を持つきっかけになります。

身近に木材がない環境で育つと、木に対する愛着や意識は生まれないし、材料への関心は持てません。

木材や木造に関する規格や法的な整備が進み、利用環境も整ってきました。森林資源の充実で木材製品の供給も増えています。

木材活用の意義や方法を発注者・設計者・施工者・生活者で共有し、カーボンニュートラル実現の大きな目標に向かって取り組みを進めていくことが急務です。

 

まとめ

都市部を中心に、中大規模木造の計画が活性化しています。木造はもはや都市建築の選択肢の一つとなっています。発注者は環境重視の姿勢を強めています。

設計者には、木の材料特性を引き出し、流通する製材を活用して、都市部の建築の木造・木質化の実現が求められています。

 

SE構法の構造スペックをうまく活用すると、木造では実現が難しい高層化、木造耐火などを実現することができます。都市部の厳しい敷地条件の中、鉄骨造ではコストや施工に問題がある場合においても、木造(SE構法)が有効な選択肢となります。

NCNは構造設計から生産設計(プレカット)までのワンストップサービスが強みです。計画段階からご相談いただくことで、構造設計から材料調達までを考慮した合理的な計画が可能です。

集成材構法として実力・実績のある工法の一つが「耐震構法SE構法」です。SE構法は「木造の構造設計」から「構造躯体材料のプレカット」に至るプロセスを合理化することでワンストップサービスとして実現した木造の工法です。

関連:「耐震構法SE構法」へのご相談はこちらです。

 

また構法を問わず、木造の構造設計から構造躯体材料のプレカットに至るスキームづくりに取り組む目的で「株式会社木構造デザイン」が設立されました。構造設計事務所として、「⾮住宅⽊造専⾨の構造設計」、「構造設計と連動したプレカットCADデータの提供」をメイン事業とし、構造設計と⽣産設計を同時に提供することで、設計から加工までのワンストップサービスで木造建築物の普及に貢献する会社です。

関連:「木構造デザイン」へのご相談はこちらです。

 

株式会社エヌ・シー・エヌ、株式会社木構造デザインへのご相談は無料となっておりますので、ウッドショックでお困りの方もお気軽にお問い合わせください。