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WOODEN STRUCTURE中大規模木造

JASとは「日本農林規格」。JAS構造材の基礎知識

  • JASとは「日本農林規格」。JAS構造材の基礎知識 -

国は建築物の木造化・木質化を推進しています。20196月の改正建築基準法で特に木造準耐火建築物の可能性が一気に広がりました。設計者や施工者がある規模以上の中大規模木造を建てることになると、木造でも構造計算が必須となります。構造計算の必要な中大規模木造では、品質が明確なJAS構造用製材は有利です。木材製品のなかでも製材は最も多く使われている身近な存在ですが、JAS(日本農林規格)の規格に基づくJAS製材の割合はまだ低いのが現状です。このコラムではJAS構造材の基礎知識についてお伝えします。

 

<このコラムでわかること>

JASとは「日本農林規格」の略称

JAS木質建材は11品目、JAS製材6つに分類

構造用製材には「目視等級区分」と「機械等級区分」がある

JAS集成材

構造用集成材JASの概要

・まとめ

 

JASとは「日本農林規格」の略称

JAS(ジャス)とは、 Japanese Agricultural Standardの略称で「日本農林規格」のことです。

日本農林規格とは、林物資の規格化等に関する法律JAS法)に基づく、農・林・水・畜産物およびその加工品の品質保証の規格です。この規格に適合した食品加工食品の製品には、JASマークと呼ばれる規格証票を付した出荷・販売が認められています。

集成材や合板など木材加工品にもこのJASマークを表示する制度があります。日本農林規格において集成材は、「ひき板、小角材等をその繊維方向を互いにほぼ平行にして、厚さ、幅及び長さの方向に集成接着をした一般材」と定義されています。

 

JASの木質建材は11品目、JAS製材は6つに分類

JASの木質建材は11品目、JAS製材は6つに分類

20184月にJAS法令が改正され、これまでのモノ(最終製品)に対する規格に加えて、製法や輸送方法、試験方法など、多様なJAS規格を設けることができるようになりました。現在、木質建材や飲食料品などで70を超える品目にJAS規格が定められています。

製材のJAS規格では、「構造用製材は、針葉樹を材料とするものであって、建築物の構造耐力上主要な部分に使用することを主な目的とするもの」と定義しています。

木質建材では11品目にJAS規格があり、この中に製材が含まれています。そのJAS製材は、材によって6つに分類されています。

製材品は、他の木質建材と異なり接着剤を使用して製造しておらず、無垢(むく)の木材という自然素材をそのまま生かして製造しています。一方、自然素材であるがゆえに、他の構造材料と比べ性質にばらつきがあるという課題も抱えています。

このため、JAS規格では、製品の寸法の精度や材面の品質のほか、乾燥処理を行う場合は含水率試験、機械等級区分を行う場合は曲げ試験を行って、性能を明確化しています。JAS規格はこれらの検査方法を定めています。

 

構造用製材には「目視等級区分」と「機械等級区分」がある

構造用製材には2つのものがあり、それぞれ構造的な強度を与えています。「目視等級区分」は人の目で材面の品質を等級区分しています。「機械等級区分」は非破壊的方法で機械によりヤング係数を測定して等級区分しています。

目視等級区分では、昔からの経験値によるデータに基づいて目視で節による欠損や割れ、年輪の間隔を測定して、高い曲げ性能を必要とする部分に使用するものを甲種構造材、圧縮性能を必要とする部分に使用するものを乙種構造材とし、それぞれ1級から3級までの3段階に分けています。

機械等級区分では、製材は自然素材なので1本ずつ異なりますが、曲げ試験機等を用いて得られた曲げヤング係数の測定値によってE50からE150までの6段階に分けています。機械等級は1本ごとに測定するので、より実際的な強度が示されます。

また、目視等級・機械等級ともに、製材の強度を左右する要素として重要な「含水率」についても規定しています。

目視等級や機械等級で区分されたJAS構造用製材を使うメリットは、建築物の構造計算に使用される基準強度が与えられていることが大きな利点です。目視等級区分、機械等級区分それぞれについて、樹種と等級に応じ、圧縮、引張、曲げなどの基準強度が国土交通省の告示で定められています。

 

JASと集成材

JAS規格では集成材の外面の品質だけではなく、見た目ではわかりにくい接着性能、強度性能、ホルムアルデヒド放散量などについて、試験方法と適合基準が定められています。これらの検査項目に合格する集成材にだけJASマークを表示することができ、使用者に対する集成材の品質を保証することができます。

JASは集成材に対してそれが使用される場合の最低基準を保証しています。JASマークの付いている集成材は、JASに定める基準以上の品質を持つ製品であることになります。。集成材の原材料である木材は天然物であるために、製品の品質にいくらかのばらつきがあることは避けられません。

JASはそのばらつきが一定の範囲内にあることも含めて基準化しています。集成材の使用に際しては、用途に応じた集成材の品種を接着性能・強度性能・その他の性能によって選択し、JASマークとともに、表示してある製造メーカーのマークを確認し、安心して使用できる集成材を選ぶことが大切です。

 

構造用集成材のJASの概要

日本農林規格では構造用集成材は、「集成材のうち、所要の耐力を目的として等級区分したひき板(幅方向に合わせ調整したもの、長さ 方向にスカーフジョイント又はフィンガージョイントで接合接着して調整したものを含む。)又は ラミナブロック(内層特殊構成集成材に限る。)をその繊維方向を互いに平行にして積層接着した もの(これらを二次接着したもの又はこれらの表面に集成材の保護等を目的とした塗装を施したも のを含む。)であって、主として構造物の耐力部材として用いられるもの(化粧ばり構造用集成柱 を除く。)をいう。」と定義されています。

JAS規格の構造用集成材の概要は下記となります。

JAS規格の構造用集成材

<構造用集成材は、断面の大きさにより、大断面、中断面、小断面に区分>
大断面:短辺が15cm以上、断面積が300c㎡以上のもの。
中断面:短辺が7.5cm以上、長辺が15cm以上のものであって大断面集成材以外のもの。
小断面:短辺が7.5cm未満または長辺が15cm未満のもの。

 

<構造用集成材は、同一等級構成集成材と異等級構成集成材に区分>

ラミナ(ひき板)の構成により、同じ品質のラミナを積層した同一等級構成集成材と、外側の層ほど強度の強いラミナを配置して積層した異等級構成集成材(対称構成、非対称構成、特定構成)に区分されます。

異等級構成集成材(対称構成、非対称構成、特定構成)

異等級構成集成材のうち、ラミナの品質の構成が中心軸に対して対称であるものを対称構成、より強度を要求される側のラミナの基準を強くし、その構成が中心軸に対して対称でないものを非対称構成といいます。また、対称異等級構成のうち、曲げ性能を優先したラミナ構成を特定対称構成といいます。

 

<構造用集成材の強度等級>

強度等級は、曲げヤング係数(たわみにくさの指標を表すE)と曲げ強さを表すFの組み合わせの等級区分により表示されます。 E-Fの等級は樹種やラミナの構成等により何種類もあります。

 

<構造用集成材の接着剤の要求性能の程度を示す使用環境A B Cの区分>

集成材を使用する環境条件に応じ、接着剤の要求性能の程度を示す区分として、使用環境A B Cの区分があります。(注意点として耐火構造、準耐火構造では使用環境Cは使用できません)

構造用集成材の接着剤の要求性能の程度を示す使用環境A、 B、 Cの区分

 

まとめ

JAS構造用製材に対し、製造事業者や設計者などの関心が高まっています。

JAS構造用製材の現状の比率が低いのは、製材品の多くが、木造2階建て住宅などの建築基準法の「4号特例」の対象となる木造建物で使われているためです。4号建築物は構造強度の審査が省略されているので、必ずしもJAS構造用製材を使う必要がありません。

しかし、中大規模木造などが増えれば構造計算が必須です。基準強度などの品質性能がはっきりしたJAS構造用製材の需要は今後増してきます。JAS構造用製材は性能がはっきりしているので、設計時に材料を選ぶ際、適材適所で等級を使い分けることもできます。そのことは、設計の自由度を高めることにもつながります。

全国木材組合連合会様より令和2年度の【JAS構造材個別実証事業】の第一次公募が開始されました。

JAS構造材に関する助成金についてはこちらです。

令和2年度より、対象物件・材料が追加されており、より活用し易くなっております。

NCNでは、SE構法によるJAS構造用集成材を活用した、非住宅の構造設計のご提案、構造材料の手配・プレカット、施工者のご紹介に合わせまして、本事業に関しまして、上記ご提案と申請サポートをさせていただいております。

NCNへのご相談は無料となっておりますので、お気軽にお問い合わせください。

 

【次回のコラム→店舗、事務所、倉庫、福祉施設等の非住宅木造化で期待のJAS構造材

木材の需要拡大で期待されるのは「低層非住宅」の木造化です。設計の鍵はJAS構造材」です。そのポイントついて解説します。】