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WOODEN STRUCTURE中大規模木造

大規模木造で主に使われる工法は3種類。使い勝手が良いのは集成材構法

  • 大規模木造で主に使われる工法は3種類。使い勝手が良いのは集成材構法 -

木造の架構形式にはさまざまなものがあります。架構形式で分類すると軸組構造の他に張弦梁やトラス等があります。工法や材料による構造上の分類も行われており、工法で分類すると軸組系と壁系、材料で分類すると軸材と面材です。そうした状況の中で、現在の木造で採用される主な構法は、在来軸組構法や枠組壁構法(ツーバイフォー工法)、集成材構法等があります。このコラムでは大規模木造を設計するための代表的な構法について、その特性やメリット・デメリットをお伝えします。

 

<このコラムでわかること>

・大規模木造構法選定のポイントは技術とコストのバランス

大規模木造の構法1:在来軸組構法

大規模木造の構法2:枠組壁構法(ツーバイフォー工法)

大規模木造の構法3:集成材構法

・大規模木造で使い勝手の良い集成材構法メリット

大規模木造新たに注目される構法:CLT構法

・まとめ

 

大規模木造の構法選定のポイントは技術とコストのバランス

大規模木造の構法選定のポイントは技術とコストのバランス

大規模木造で押さえるべきポイントは、「企画」「設計(申請)」「コスト」「材料」「構法」「施工」のそれぞれにあります。特に設計、生産に関することは木造独自の問題が多いので注意が必要です。

 「企画」に関しては、特に材料と耐火要件がポイントです。材料に関して、構造材は材種、樹種、強度、製造可能サイズ等様々あるため、構造材の特性を知った上で「適材適所」で使い分けることが木造のコスト管理では重要です。

木材は自然材料で、その種類や性能には限界があります。ある木材をどこでどのように使うか、どのような大きさや長さまで加工可能か、どういった加工は容易でどういった加工は大変なのかといった情報も必要です。設計はできるがコストが大幅にかさむ、あるいは調達、納期等が実現不可能という事態を避けるためです。

関連記事:中大規模木造でコストダウンできる構造計画、構造躯体の考え方

 

「設計」に関しては、特に構造設計とコスト感覚、材料・加工の知識がポイントです。

大規模木造の構造設計に関しては、現実的に以下の課題があります。

・大規模木造に対応できる構造設計者が少ない

・鉄筋コンクリート造・鉄骨造の計画を木造に変更することには性能的に限界がある

・大規模木造の構法や構造材により、性能や価格の差が大きい

・大スパンを一般流通材を組み合わせて、トラスや張弦梁を設計する技術が⼀般化されていない

関連記事:中大規模木造に適した技術と自由があるSE構法の構造設計

 

コスト感覚に関しては、木造特有の事情を把握した上で、工法や材料を選択することが基本です。木造は適切な構造計画、材料計画を行う事でコストダウンを図ることが可能になります。

材料・加工の知識に関しては、「材料調達能力・加工能力を事前に把握する」ことをテーマに、下記のような事情に対する正確な判断が求められます。

・使用する材料は手に入るのか?

・地域によって手に入る材種・手配可能な量が変わるため、大規模な計画な程、事前の調査が必要。

・構造計算時より、設計通りに対応可能なPC工場を確認する

大規模木造で採用される主な構法は、在来軸組構法や枠組壁構法(ツーバイフォー工法)、集成材構法等があります。

構法ごとの特徴、メリット・デメリット等について正確に把握し、適材適所で構法を選択することが重要です。

 

大規模木造の構法1:在来軸組構法

大規模木造の構法1:在来軸組構法

 

在来軸組構法は、日本に伝わる伝統的な工法で、基礎に土台をのせて柱を立て、梁などの水平な材を渡して骨組みをつくる工法です。壁には筋かいという斜めの材を入れる、もしくは構造用合板を張って補強するなど、木材の組み合わせで建物を支える構造です。

在来軸組構法は、柱の位置や長さをある程度は自由に設定できるため、デザインや間取りの自由度は比較的高いです。耐力要素以外の壁なら、窓やドアなど開口部を自由に設けることもできます。大壁や真壁の使い分けで、現代的な建築、和風の建築などに合わせて対応しやすいです。

昔の在来軸組構法は大工の職人技が重視されていましたが、現在では精緻に機械加工された木材や、木材同士の接合に補強金物が採用されるようになっており、個人の技量による精度のばらつきは以前に比べて少なくなっています。

大規模木造で在来軸組構法を採用しやすいのは、大スパンを必要としない建築です。福祉施設などに比較的コストメリットを得られやすい工法です。

<在来軸組構法のメリット>

・住宅建設で最も普及している一般的な工法のため、ほとんどの工務店で施工できる

・幅広い選択肢の中から施工会社を選ぶことができる

<在来軸組構法のデメリット>

・耐震性に限界がある

・構造スパンに限界がある(製材の使用を前提とするとスパン6m程度が限界)

 

大規模木造の構法2:枠組壁構法(ツーバイフォー工法)

大規模木造の構法2:枠組壁構法(ツーバイフォー工法)

 

木造の枠組壁構法は、北米から輸入されたツーバイフォー(2×4)工法が代表的です。2インチと4インチに規格化された木材を使用するため、ツーバイフォー工法と呼ばれるようになりました。

木製パネルと角材でつくったパネルで壁や床、天井という面をつくり、この面を組み立ててできる六面体の構造をベースに建築を建てる工法です。木造軸組構法との明確な違いは、床、壁、天井からなる六面体で建物を支える点です。

既成サイズの角材を組み、板を張り合わせるという単純な工法であるため、高度な技術が必要とされるわけではありません。業者によって品質にばらつきがないのも特徴です。木材を構造に使用しながら壁を多くすることで建物を建築できるため、可変性は少ないです。

<枠組壁構法(ツーバイフォー工法)のメリット>

・工場で大量生産された木材を用いて建築されるため、施工手間が比較的少ない

・細工が不要で材料も安いため、理論的には在来軸組構法よりもコストは安くなる

<枠組壁構法(ツーバイフォー工法)のデメリット>

・設計が複雑な場合やスパンが大きい場合はメリットを生かしにくい

・空間デザインの自由度は低く、増改築やリフォーム、間取りの変更などが行いにくい

 

大規模木造の構法3:集成材構法

大規模木造の構法3:集成材構法

 

集成材構法は、接合部に専用金物、構造部材に集成材を用いた構法です。専用金物は、在来軸組構法の仕口や継手加工を金物に置き換えたものです。接合部の耐力が明確であり、安定した高強度な構造体をつくることができます。

専用金物を採用することで、在来軸組工法と比べ柱の断面欠損が少なく、木材本来の強度を活かし、接合部の強度が数値化されることで、安心の構造体を作り上げることができます。

集成材構法では、柱脚金物と接合するアンカーボルトの施工精度が求められます。基礎とアンカーボルトが柱脚金物としっかりと固定されることで、構造躯体も精度よく施工でき、施工品質が向上します。

集成材構法は、梁受金物やホールダウンパイプなどをプレカット会社で取付け、現場搬入するのが一般的です。現場では躯体を組み上げ、ドリフトピン等を打つだけの作業なので、躯体施工の工期を短縮できます。

大規模木造を計画する際に、建物規模やスパンにより部材断面が大きくなると、構造材の乾燥による割れや収縮が顕著になります。そのため寸法安定性に優れた構造用集成材やLVL(単板積層材)などのエンジニアリングウッド(EW)を用いることが基本になります。

スパンを大きく飛ばす分、接合部に作用する応力も大きくなるため、ボルトやドリフトピンなどを用いて強度を向上させる必要があります。

同じく応力が大きくなる柱梁接合部や柱脚の対応については、各構造材メーカーからさまざまな金物が製品化されており、性能や施工法が確立されています。

木造でラーメン構造とする場合には、柱・梁のみでは構造が成立しないため耐力壁を併用することで、柱の応力度を分散できます。

大規模木造の建築で、基本的なグリッドが6m以上の場合や、10m以上のスパンが必要な場合には、集成材構法が最も適しています。従来は鉄骨造の計画が多かった店舗、事務所、倉庫に加えて、幼児施設や福祉施設にも使い勝手が良いです。

関連記事:店舗、事務所、倉庫には鉄骨造より木造が「安い、早い、うまい」理由

 

<集成材構法のメリット>

・接合部が金物、部材が構造用集成材等のため、性能の根拠が明確

・木材内部に納まる金物が安定した強度を発揮し、仕口強度の数値も明確で構造計算にものせやすい

・構造計算の結果を、構造躯体に正しく反映させやすい

<集成材構法のデメリット>

・構造用集成材の一般的な流通材(6m以下)を超える特注材が増えるとコストアップにつながる

・基礎の施工が在来軸組構法や枠組壁構法より高い施工精度が求められる

 

大規模木造で使い勝手の良い集成材構法のメリット

 大規模木造で使い勝手の良い集成材構法のメリット

大規模木造で使い勝手の良い集成材構法メリットは下記です。

1.構造計算により設計の自由度と構造強度を両立できる

大規模木造の実務で重要となるのは、建築の構造の安全性を計る「構造計算」です。延べ面積が500平方メートル以上の木造建築には、鉄筋コンクリート造・鉄骨造と同様に「構造計算」を行い、すべての項目で基準値以上の安全性の検証が求められています。

大規模木造の構造設計においては、意匠計画と並行して構造計画を検討することが重要です。構造計画には、工学・技術的な側面と法令上の基準をクリアすることの両立が求められます。

材料を上⼿に組み合わせ、価値ある空間を提供することが意匠設計者の仕事で、構造設計者は安⼼と安全、⽊質の雰囲気を楽しめる形態を⽬指しています。

集成材構法として実力・実績のある工法の一つが「耐震構法SE構法」です。SE構法は「木造の構造設計」から「構造躯体材料のプレカット」に至るプロセスを合理化することでワンストップサービスとして実現した木造の工法です。

関連記事:SE構法はワンストップサービスが魅力!各プロセスごとに徹底解説

 

2.JAS構造材の活用により設計の選択肢が広がる

ある規模以上の大規模木造を建てることになると、木造でも構造計算が必須となります。構造計算の必要な中大規模木造では、品質が明確なJAS構造用製材は有利です。木材製品のなかでも製材は最も多く使われている身近な存在ですが、JAS(日本農林規格)の規格に基づくJAS製材の割合はまだ低いのが現状です。

基準強度などの品質性能がはっきりしたJAS構造用製材の需要は今後増してきます。JAS構造用製材は性能がはっきりしているので、設計時に材料を選ぶ際、適材適所で等級を使い分けることもできます。そのことは、設計の自由度を高めることにもつながります。

関連記事:JASとは「日本農林規格」。JAS構造材の基礎知識

 

3.構造用集成材を用いた構法なら大スパン、大空間が可能

大スパン・大空間が求められる大規模案件(500㎡~)では、固定荷重や積載荷重も大きくなり、住宅規模の応力とは異なる部材寸法を選択する必要があることから、集成材構法等でないと構造的に対応できないケースが増えます。

大規模木造を設計するのに使い勝手がよい(コストと強度のバランスがよい)のは、構造用集成材を用いた構法です。大スパン・大空間が求められる大規模案件においては、設計、供給、施工、コストパフォーマンスの良さが、高い次元で成立している工法が求められます。

10mを超える大スパンが必要な場合は、一般用流通材によるトラスを活用する方法があります。また別の方法として、一般的に流通している中断面の構造用集成材と鋼材ロッドを用いて張弦梁を構成することで、大断面の特注材を用いるよりもコストダウンを実現し、軽快な印象の空間を実現することもできます。

関連記事:中大規模木造の構造材の特性やメリット・デメリット

 

大規模木造で新たに注目される構法:CLT構法

CLTとはCross Laminated Timber(クロス・ラミネイテッド・ティンバー)の略称で、ひき板(ラミナ)を並べた後、繊維方向が直交するように積層接着した木質系材料です。特徴として、工場内で一部の材料を組み立ててから現場に搬入するプレファブ化により、施工の工期短縮が期待でき、接合具がシンプルなので熟練工でなくとも施工が可能です。

CLTは、施工性の良さと、構造的に高性能であることから、海外では木造の高層建築にCLTが活用されています。高耐力の壁として利用されるとともに、床、屋根なども高耐力とし、梁の省略による施工性の良さも評価されています。注意点として日本で建築する場合は、耐火のハードルをクリアする必要があります。

CLTを計画する際に注意すべき点は「搬入」です。CLTは大判で使えることにメリットがありますので、そのメリットを活かすためには、パネルを運べる回転半径やクレーンでの吊り込みや立て込みの効率を考慮して、敷地周囲がCLTを施工できるかどうかを設計段階から検証する必要があります。

<CLT構法のメリット>

・強度が強く、施工も合理的なため、多層化に対応しやすい

・構造面以外にも、断熱性や遮熱性、遮音性などの複合的な効果も期待できる

<CLT構法のデメリット>

・他構法と比較して使用材積が多いためコストが高い

・使用できる空間や用途がまだ限定的である

・構造設計者や生産可能なプレカット工場が限定的である

 

まとめ

中大規模木造の構造躯体のコストダウン1:構法

大規模木造においては、求められる用途によって、適する構法は異なります。住宅に近い小中規模案件の場合(~300㎡程度)であれば在来軸組構法や枠組壁構法(ツーバイフォー工法)でも対応できることもあります。一方で大スパン・大空間が求められる大規模案件(500㎡~)では、固定荷重や積載荷重も大きくなり、住宅規模の応力とは異なる部材寸法を選択する必要があることから、集成材構法等でないと構造的に対応できないケースや、コストパフォーマンスが著しく悪くなるケースがあります。

大規模木造においては、住宅よりも大きな空間を構成することが多くなるため、接合部の耐力が明確であり、断面欠損も少なく高強度な構造躯体を実現することが前提となります。大工の減少や高齢化により、安全でスピーディな施工も求められていますので、生産性の向上も大きな課題です。

大規模木造(特に店舗、事務所、倉庫等)を設計するのに使い勝手がよい工法は集成材構法です。大スパン・大空間が求められる大規模案件においては、設計、供給、施工、コストパフォーマンスの良さが、高い次元で成立している工法が求められます。

集成材構法として実力・実績のある工法の一つが「耐震構法SE構法」です。SE構法は「木造の構造設計」から「構造躯体材料のプレカット」に至るプロセスを合理化することでワンストップサービスとして実現した木造の工法です。

「耐震構法SE構法」へのご相談はこちらです。

 

また構法を問わず、木造の構造設計から構造躯体材料のプレカットに至るスキームづくりに取り組む目的で「株式会社木構造デザイン」が設立されました。構造設計事務所として、「⾮住宅⽊造専⾨の構造設計」、「構造設計と連動したプレカットCADデータの提供」をメイン事業とし、構造設計と⽣産設計を同時に提供することで、設計から加工までのワンストップサービスで木造建築物の普及に貢献する会社です。

「木構造デザイン」へのご相談はこちらです。

 

株式会社エヌ・シー・エヌ、株式会社木構造デザインへのご相談は無料となっておりますので、お気軽にお問い合わせください。