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WOODEN STRUCTURE中大規模木造

脱炭素社会の非住宅建築は「木造ZEB」が主役になる理由

  • 脱炭素社会の非住宅建築は「木造ZEB」が主役になる理由 -

脱炭素社会の実現に向けて省エネ基準の強化が段階的に進んでいます。改正建築物省エネ法や改正建築基準法の全面施行は2025年です。2024年には大規模非住宅建築物の省エネ基準が引き上げられます。

2025年には省エネ基準適合を全ての新築住宅に対して義務化、2030年にはZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)水準の省エネ性能を新築建築物で普及、2050年にはZEH・ZEB水準の確保をストックの平均に拡大することが大きな流れです。

このコラムでは脱炭素社会の非住宅建築は「木造ZEB」が主役になる理由について解説します。

 

<このコラムでわかること>

脱炭素、カーボンニュートラルを推進する鍵となるZEB

大規模木造(非住宅建築物)の基準は2024年から3段階に

非住宅建築木造ZEBを実現するメリット

大規模木造ZEBを実現する技術ポイント

大規模木造ZEBを実現するポイントは省エネ計算

非住宅分野における木造ZEBを普及するための課題

木造ZEBに最適なSE構法の実務ポイントまとめ

・まとめ

 

脱炭素、カーボンニュートラルを推進する鍵となるZEB

脱炭素、カーボンニュートラルを推進する鍵となるZEB

脱炭素化において「木造化・木質化」が重要だと捉えられています。

もう一方で重要視すべきなのが「省エネ対策」です。そこで注目されるのが「ZEB(ゼブ)」です。

「ZEB」は「Net Zero Energy Building」(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の略称です。

快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物のことです。

地球温暖化対策やエネルギー需給の安定化のため、エネルギー消費量を減らすことが必要とされています。

特に、業務部門(事務所、商業施設などの建物)において、建物でのエネルギー消費量を大きく減らすことができるZEBの普及が求められています。

建物では様々なエネルギーが使われています。

発電所などから送られてきた電気やガス、熱といったエネルギーを、空調、換気、照明、給湯、エレベーター、OA機器などの形で消費しています。

建物で使うエネルギーをできるだけ減らし、できるだけ自分の建物でエネルギーをつくることで、ZEBに近づけていくことができます。

関連記事:脱炭素・カーボンニュートラルで木造化・木質化が注目される理由

 

大規模木造(非住宅建築物)の基準は2024年から3段階に

大規模木造(非住宅建築物)の基準は2024年から3段階に

2024年の省エネ基準引き上げの対象となるのは、延べ面積2,000m2以上の大規模非住宅建築物(事務所や学校、ホテル、病院、工場など)です。

それぞれの用途の建築物における省エネ基準への適合率の現状を踏まえ、BEI(1次エネルギー消費量削減率)の基準値を3段階に設定しています。

改正後のBEI(1次エネルギー消費量削減率)の水準

・工場等:0.75

・事務所等・学校等・ホテル等・百貨店等:0.8

・病院等・飲食店等・集会所等:0.85

ZEB基準(誘導水準)が「0.6」に設定されている事務所や学校、工場などのうち、現状でも適合率の高い工場等の基準値を事務所などよりも厳しい「0.75」に設定しています。

同様に適合率の比較的高いホテルや百貨店(ZEB基準は0.7)の基準値を事務所や学校と同等の水準「0.8」に格上げしています。

基準が引き上げられても手続きはこれまでと変わりません。

所管行政庁または登録省エネ判定機関による省エネ基準への適合性判定を受け、建築確認の際に適合性判定通知書を提出する必要があります。

関連記事:脱炭素が法律になる時代に!改正建築物省エネ法に関する動向

 

非住宅建築で木造ZEBを実現するメリット

非住宅建築で木造ZEBを実現するメリット

脱炭素社会を目指していく上で、木造建築の意匠性等の良さを維持しつつ、次世代の省エネ建築を身近に感じてもらえる建物を実現すべく、非住宅分野での「木造ZEB」が注目されています。

近年、木のぬくもりや香りが、人の五感にもたらす健康影響について研究が進み、その優位性についてエビデンスが証明されつつあります。

また、地域木材の使用や木造建築物の高い省エネ性能は、環境保全にも繋がることから注目を集めています。

自然のぬくもりが創り出す空間は、そこで働く人達の五感に働きかけ、創造性を育み、心を豊かにし、健康的に育んでくれます。

加えて、地域木材を使うことは、豊かな森を守り育てることへと繋がります。

さらに、屋根いっぱいの太陽光発電を搭載し、断熱性と省エネ、創エネを組み合わせて、すぐれた快適性と省エネを実現するネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)を実現することができます。

木造施設建築は、持続可能な社会の実現に向けたSDGsへ繋がっているとも言えます。

木造ZEBには、エネルギー消費量が削減できること以外にも様々なメリットがあります。

具体的には、大きく下記の4点が木造ZEBのメリットとして挙げられます。

・光熱費の削減

・快適性・生産性の向上

・不動産価値の向上

・事業継続性の向上

関連記事:大規模木造とSDGs・脱炭素・ESG投資の相性が良い理由

 

大規模木造でZEBを実現する技術ポイント

大規模木造でZEBを実現する技術ポイント

大規模木造でZEBを実現する技術ポイントは主に下記です。

■断熱をしっかり施す

・屋根、外壁等の断熱性能を上げる:断熱材の選定、厚さ、施工精度

 

■設備機器を高効率な製品に置き換える

・空調、換気、照明などの設備機器を高効率な製品に置き換える。(断熱だけでは足りない分をカバーする。)

 

■太陽光発電などの創エネで補う

さらに足りない部分を太陽光発電などの創エネで補う

 

■開口部の性能を上げる

・アイデア1:一般のビル用サッシに比べて断熱性能の高い住宅用の樹脂サッシを用いる

・アイデア2:ガラスはアルゴンガス入りのLow-Eトリプルガラス(一部複層ガラス )

 

■耐震性を確保する

・ZEBの仕様を実現すると建物重量が重くなるため、耐震性の確保が必須になる

 

建物の関係者には、オーナー、働く人、訪れる人など、さまざまな立場の人がいます。

その立場によって得られるメリットは異なるものの全ての人々に対してZEBのメリットは存在しています。

そのため、ZEBを実現・普及させるためには、各立場の人々が自らのメリットを理解した上で協力していくことが必要です。

 

大規模木造でZEBを実現するポイントは省エネ計算

大規模木造でZEBを実現するポイントは省エネ計算

ZEBを実現するための技術は、

・消費するエネルギーを減らすための技術(省エネ技術)

・エネルギーを創るための技術(創エネ技術)

に分けられます。

実際にZEBを実現する場合には、

①パッシブ技術によってエネルギーの需要を減らす

②必要となる需要についてはアクティブ技術によってエネルギーを無駄なく使用する

③そのエネルギーを創エネ技術によって賄う

といったステップで検討することが重要です。

また、建物の運用段階では、どこにエネルギーの無駄が発生しているか、どのように効率的に設備を運用するかなど、エネルギーをマネジメントする技術も重要です。

この技術によって継続的なエネルギー消費量の削減を図ることができます。

ZEBの性能を計算するWEBプログラムは「建築物省エネ法」に基づく省エネ計算がベースとなっています。

ZEBの実現には、国の定めたWEBプログラムを用いて、ZEBの基準を満たすことが求められます。

NCNでは非住宅建築の省エネ計算にも対応できます。

関連記事:NCNの省エネルギー計算サービス

 

非住宅分野における木造ZEBを普及するための課題

非住宅分野における木造ZEBを普及するための課題

近年は大手企業を中心に、自社施設は原則ZEBとする方針を掲げる企業も出始めています。

非住宅分野における木造ZEBを普及するための課題は主に下記です。

 

■ZEBの認知を広げる

ZEBを提案する事業者、提案される建築主、双方で省エネ性能を向上させてZEBにする意義を共有する。

 

■建築主側の意識・行動の変化

ESG投資の拡大やSDGsへの取組みが広がっており、企業においては、株主や投資家、取引先や従業員からも「脱炭素」の取組みを要請されるケースが増えている。

 

■仕様を統一するのが難しい

戸建住宅と異なるのは、あらゆる用途の建築物が対象であり、その規模も大小様々であり、原則一棟ごとに仕様が異なる点。

 

■制度の黎明期でありZEBを実現できる会社が限られる

設計手法や技術、コスト等に関する情報やノウハウを共有することが難しく、ZEBを実現できる会社が限られる。

 

■ZEBの間接的なメリットも訴求

快適な室内環境、災害時の事業継続といった、ZEBの間接的なメリットについても認知を広げる。

 

■ZEBの付加価値を明確化

現在はグリーンビルディング認証の取得などが評価基準の一つとされているが、今後はZEBか否かといった性能水準にまで深堀されることは想像に難くない。

 

建築主、建築事業者、いずれの立場においても、事業機会獲得の観点から、ZEBの開発、設計、施工ノウハウを蓄積していくことが重要となっています。

 

木造ZEBに最適なSE構法の実務ポイントまとめ

大規模木造(SE構法)の耐久性に関するまとめ

木造ZEBに最適なSE構法の実務ポイントは主に下記です。

 

<システム>

耐震構法SE構法は大規模な木造建築物の技術を基に開発された技術です。耐震構法SE構法は耐震性の高さ、設計の自由度、コストパフォーマンスの良さ、ワンストップサービス等で高い評価を受けており、さまざまな木造建築の実績が増えています。

関連記事:大規模木造から生まれたSE構法を徹底解説(システム編)

 

<事例>

SE構法は特に低層建築物である店舗、事務所、倉庫、幼児施設、高齢者施設等の非住宅建築を中心に、さまざまな木造建築の実績が増えています。耐火建築物や準耐火建築物への対応も可能です。

関連記事:【解説】大規模木造の可能性が大きく広がるSE構法の事例紹介

 

<構造設計>

SE構法の構造設計プロセスは、「構造計画」「構造設計」「構造計算」の3ステップで進めていきます。

関連記事:【解説】SE構法の構造設計が大規模木造で評価される理由

 

<プレカット>

SE構法は大スパン・大空間が求められる大規模木造において、構造設計、材料加工、施工、コストパフォーマンスの良さを高い次元で成立している工法です。SE構法は徹底した品質管理と、構造計算から部材加工まで一貫したCADシステムにより高精度のプレカット加工を実現しています。

関連記事:【解説】大規模木造で構造設計とプレカット加工が連動するSE構法

 

<施工>

SE構法は、基礎構造から構造体施工に至るまで厳しい品質を追求しています。SE構法は独自の施工管理技術が必要なため、どの建設会社でも施工できるわけではありません。試験に合格したSE構法施工管理技士が在籍し、一定の技術水準を有すると認められた「SE構法登録施工店」がSE構法の建物を施工します。

関連記事:【解説】大規模木造で使いやすいSE構法の施工ポイント

 

<構造用集成材>

構造用集成材は「科学された木材」と言われ、製造過程でひき板一枚一枚の節の大きさや曲げヤング係数を計測・選別して集成材化しており、表示通りの性能が発揮されるので構造材として安定しています。構造の安全性を保証するSE構法は部材の信頼性を重視し、全て構造用集成材を使用しています。

関連記事:【解説】大規模木造に適した構造用集成材をSE構法が採用する理由

 

<SE金物>

SE構法は独自のSE金物により、集成材、耐力壁、床合板それぞれの強さを活かしています。一般的な木造は、接合部に柱や梁をホゾ継ぎするため、地震時に断面欠損をまねき、構造材本来の強度を低下させてしまいます。そこでSE構法は、大きな揺れに対して接合部が破損しない技術を追求し、独自にSE金物を開発しています。

関連記事:【解説】大規模木造で様々な設計に対応できるSE構法の強さの理由はSE金物

 

まとめ

SDGs、脱炭素社会、ESG投資への対応が求められる時代になり、木造化・木質化が急速に進んでいます。

大規模木造(SE構法)の構造躯体の強みを活かした構造設計により、コスト減、納期短縮、施工性向上を実現することができます。

SE構法は構造用集成材の中断面部材(柱は120mm角、梁は120mm幅)が標準なため、住宅と同等の部材寸法でスパン8m程度までの空間を構成できるコストパフォーマンスをうまく活用していただければと考えております。

スパンが10mを超える空間は、特注材やトラス、張弦梁などを活用することも可能です。

計画段階からNCNの特建事業部に相談することで、木造建築に関する知見をうまく利用していただき、ファーストプランの段階から構造計画を相談することで、合理的に設計実務を進めることが可能です。

 

 

集成材構法として実力・実績のある工法の一つが「耐震構法SE構法」です。

SE構法は「木造の構造設計」から「構造躯体材料のプレカット」に至るプロセスを合理化することでワンストップサービスとして実現した木造の工法です。

「耐震構法SE構法」へのご相談はこちらです。

 

また構法を問わず、木造の構造設計から構造躯体材料のプレカットに至るスキームづくりに取り組む目的で「株式会社木構造デザイン」が設立されました。

 

構造設計事務所として、「⾮住宅⽊造専⾨の構造設計」、「構造設計と連動したプレカットCADデータの提供」をメイン事業とし、構造設計と⽣産設計を同時に提供することで、設計から加工までのワンストップサービスで木造建築物の普及に貢献する会社です。

「木構造デザイン」へのご相談はこちらです。

 

株式会社エヌ・シー・エヌ、株式会社木構造デザインへのご相談は無料となっておりますので、お気軽にお問い合わせください。