やまなみこども園は熊本県の企業主導型保育施設だ。運営しているのはNPO法人ひかるつめくさ。1976年に認可外保育園である「やまなみこども園」を開園、1984年には認可保育園小規模保育所である「やまなみこども園 ころぼっくる」を開設し、当園は3つめの保育施設となる。
これまで多くの父母の共感とサポートを集めてきた教育理念は「遊びを通して子どもたちをのびのび育て、何でも自主的に取り組ませる」。ひかるつめくさ代表の山並さんによると、ポランのひろばは「大きなおうちで暮らすたくさんのきょうだい」だという。つまり学校ではなく家、という概念だ。
設計を担当したブランカアーキテクツの田畑さんは上記のコンセプトをうけ、園の様子をヒアリングし、さらに熊本県下の他の保育所を10か所まわって視察したという。こうして打ち出されたのが、スクール方式とはことなる廊下のない現在のプランだった。
実際に園生活が始まると、園児たちは学年をこえてまじわり、回遊魚のように遊びまわっている。この園にはあてがわれた部屋で遊ぶという概念は存在していない。
また、1階の調理室は、隣接した5歳児クラス兼食堂とガラスで仕切られており、さながら台所と食卓の関係のよう。食堂からは調理風景が見え、おいしそうなにおいもただよってくる……ここではそれも教育の一環なのだ。
ポランの家はまさに、のびのびと暮らすきょうだいたちの大きな家。保育施設の理念が忠実に形になった建築である。