東京都杉並区の住宅街に建つ「ベストライフ杉並」は介護付有料老人ホームである。施主のIさんは一級建築士であるが、設計は友人に依頼し、自らは事業計画や助成金の申請など、多岐にわたるマネジメントに徹した。
最近は老人ホームなどの福祉施設でSE構法の採用が増えている。IさんがSE構法を選んだ理由は、鉄筋コンクリートに比べて撤退しやすいこと、コストが安く抑えられることだった。
なぜ撤退を視野にいれたのか。現在、65歳以上の高齢者人口は増え続けており、そのピークは2042年頃とされている(人口問題研究所のデータより)。つまり今から26年後にピークを迎え、その後縮小傾向になる。現在、老人福祉施設も高齢者人口とともに増え続けているため、ピークを過ぎれば過剰供給になるおそれがあるためだ。
今回のプランニングにあたって、課題は法規制の厳しさだった。床面積、高さともに、いわば目いっぱいで成り立っているため、設計面からもSE構法ならではの無柱空間が不可欠になっている。1階には事務室ほか管理諸室と浴室、食堂、厨房などをおさめ、2、3階にはそれぞれ15床ずつ居室を設けることができた。
余分のない空間設計的だが、エレベーターホール周辺の壁面は、左官仕上げを取り入れており、室内のところどころに木を感じさせる手仕事が目に留まる。外観もぐるりとスギ板による壁面仕上げにし、住む人、訪れる人がホッとする温かみのある建物に仕上がった。
設計
戸塚アーキテクツ / https://www.tots-archi.com/
SE施工
相羽建設株式会社 / https://aibaeco.co.jp