施主である塩見光子さんは、人気のお好み焼き店「キリンヤ」の代表取締役だ。幼いころ、建設業に携わっていた父が住宅を改装して店舗に変え、当店は面積の拡張と共に成長してきた。だが、子どもの頃から手伝っていた光子さんにとって、その間取りはロスが多く、満足のいくものではなかったという。
そこで光子はさんは厨房内の導線をはじめ、器具や客席の配置、電機や空調・給排水設備の効率化などをはかるため、今回の新築にいたった。
新店舗の平面図は、ほぼ光子さんの手によるものだ。設計の心臓部である厨房は、これまでの機器を使うため、開閉方向をふまえてすべての寸法を測り、調理工程にあわせて的確に配列した。
客席は75 席、キッチンを囲むようにL 字形とし、2 階の席数を少なく調整。昨今は働き手を探すことも厳しくなっているため、いかに少人数で効率よく回せるような導線にするかも課題なのだ。2階のベランダには客席用の鉄板を温めるために1.5トンのキュービクル式高圧受電設備を置き、そのため重みを分散させる構造を採用している。
「寝ていても思い立ったらプランを描き始める」くらい徹底的にスタディを続けたという光子さん。それは、これまでお好み焼き店の中心となって時間と戦いながら現場で動いてきたからこそ描ける合理的な計画だったのだ。
キリンヤは効率性を第一義とし、設備機器を構造がフォローする形態となった。近隣に多いという常連客も新店舗を歓迎していることだろう。
設計・監理
ひろみ設計
施工
株式会社西峰工務店 / https://www.nisimine.com/