済納寺は、兵庫県丹波市にある天台宗の寺院だ。約150人の檀家に支えられている地域に根付いた存在である。そんな済納寺は今から遡ること9年、2011年に前住職が退山することをきっかけに、長年の懸案であった寺院の耐震化を実現するため、建て替えをすることになった。
寺院の存続に欠かせない檀家を交えて、新しい本堂の在り方が検討され、改めて「地域コミュニティの核として集会所のような使い方ができる空間を持つ寺院」というコンセプトが共有された。
寺を中心とした地縁社会を大切にし、その共同体で冠婚葬祭も行える伝統的な場。済納寺は建て替えにより、原点回帰した役割を再び期待されたのである。完成した間取りは、仏をまつる内陣より信徒が集まる外陣のスペースを広い形で、床の仕上げは、高齢の檀家へ配慮した椅子座に対応するため、カーペットを張りとなった。
これらの造形を実現化するために選ばれた構法は、耐震に優れたSE構法だった。鉄骨造や伝統構法での建築も検討されたが、工事が比較的簡易であり、コストや工期の面でもすぐれていたという。
内部の構造は現代的だが、設計の基本となるモジュール(単位)は伝統的な京間が採用され、日本建築らしくヒノキ材で仕上げられた。屋根も寺院建築らしく6寸勾配にするため、和小屋の架構に似た形式が用いられた。済納寺はいわば、伝統と革新の技術を融合した事例であり、SE構法は伝統的な建築物を建てられるという証左となった。
設計
アトリエミューズ 吉見設計
SE施工
株式会社吉住工務店 / https://www.yoshizumi.com/