「共立薬局」は村上記念病院に隣接して建つ調剤薬局だ。薬局はかつて病院の一部門であったが、病院の建て替え計画と医薬分業の流れを受けて移設され、土地建物を含めて完全に独立した経営となった。
敷地は海沿いであり、埋立地のため地盤が弱い。さらに1階の薬局の上に住宅が載った複合施設として計画されたため、空間構成に融通が利き、木造でも構造計算をするため地震に強くなるSE構法が採用された。
外観は上部をアルミの有孔折板で化粧し、1階部分には庇を設置。薬局として印象付けることに成功している。薬局のエントランスを入ると、SE構法ならではの柱のない待合室が広がる。その向かいに受付があり、その奥へ調剤室、事務室、薬品庫、処方箋の保管庫と直線的に並んでおり、それらは作業動線に必要な開口でつながっている。更衣室とミーティングスペースは2階へと配置した。
この薬局部分は全体の半分程度でおさまる計算だったので、余剰床分は収益物件、つまり賃貸住宅としたという。住宅部分は、薬局とは完全に仕切る形で1階に専用階段があり、2階が玄関だ。
玄関を入ると、風呂、化粧室、トイレの水回りと家事室、2つの個室と納戸。室内階段から3階へと上がればLDKとトイレ、2つの個室がある構成。リモートワークや多様な住まい方に対応するため、個室の多い間取りとなった。
地盤が弱い土地に建てる多目的建築物であってもSE構法が適しているという好例がまた誕生した。
設計・監理
クウェスト株式会社一級建築士事務所
施工
クウェスト株式会社 / https://www.quest-kk.jp/