関東地方の約1.5倍程度の耐風性能が求められる沖縄県。そのため、柱のない大空間を要する公共施設は、鉄骨やRC造で作られることが多かった。しかし、地盤の問題や温熱問題を解消するため、そして視覚的に温かみのある建物が求められた結果、沖縄県中頭郡読谷村に木造SE構法による教会と児童デイサービスを内包した複合施設が完成した。
建物正面は南側にあり、中央にガラス面のある教会の玄関が、左側に児童デイサービスの玄関がある。教会は高齢の信徒のためにバリアフリーとなっており、玄関から入るとホール、その奥の礼拝堂へと続く。礼拝堂は約10m×10mの真四角な空間で、教会らしい高い三角天井。唯一の2階の部屋は、畳敷きの母子室で礼拝堂を見下ろせるようになっている。
講壇の背景にあたる壁は、耐風性能を高めるために1mごとに平角柱を入れ、屋根から両側の壁に至るまで意図的に構造体を見せる「現し」のデザインに。結果的に中世ヨーロッパの建造物にあるバットレスが内壁に表れたような意匠となって礼拝堂らしい趣が加わった。
この建物は、戦後に伝道活動が活発となったキリスト教プロテスタント系であるバプテストの教派、そして信徒であり高齢者介護と児童デイサービスに関連した事業を運営する有限会社ケアセンターきらめきの代表者、および米軍から変換された土地を管理する区画整理組合の総意が10年の年月をかけて結実したものだ。沖縄独自の歴史が形になり、新しい交流を生み出している。
設計
株式会社 Atelier Kuu Design
施工
株式会社新洋 / https://www.shinyo21.co.jp/