わく歯科医院は、現在3代目の理事長を務める和久さんの祖父が1927年に開業して以来、地元に根付いてきた。その密着性を生かして本院は、患者の治療や予防という医療行為を超え、高齢化する町の地域活性化にチャレンジしている。地元にいる若者や優秀な医師や歯科衛生士がいきいきと働けるよう、建物と組織の体制を一新したのである。
まず、院長を筆頭にしたツリー状の組織体制を、スタッフが主体的に活動できるよう整えた。次に患者でもある地元の人たちに自分たちの医療行為を評価してもらう「サポーター制度」を創設して彼らの声をフィードバックさせ、スタッフがリアルな患者の声とともに育っていける環境を整備した。いわば医院を地域コミュニティの一部として仕立て直したのだ。
新医院の設計に際しては、スタッフとサポーター患者の意見を両側面から取り入れ、医療行為の効率性よりも、患者の視点の快適性を重視した。例えば受付とバックヤードを医療ゾーンの反対側に設けることで、少しでもスタッフと患者に交流が生まれるよう考えられている。
待合室の窓からは農村風景が広がり、窓先にはウッドデッキが備わっている。今ではここでサポーターや近隣の人たちと花見やバーベキューなどが行われており、わく歯科医院は目的どおりコミュニティを形作ることに成功している。
スタッフや患者を巻き込んでプランニングが行われ、コミュニティ化していったプロセスは、今後の医療施設に注目されていくだろう。