看護小規模多機能型居宅介護施設(略称「かんたき」)は、「訪問看護・リハビリ」、「通い(デイサービス)」、「泊まり(ショートステイ)」、「訪問介護」を一体化した介護サービスである。利用者は登録後、上記のサービスを必要に応じて使うことができる。
静岡県を拠点とする株式会社訪問看護ステーション・ナースの森は、「かんたき」事業を始めるにあたり、「将来自分が入りたいと思えるか」という基準をもって施設の建設を進めたという。利用する高齢者のなかには、家族に迷惑をかけたくないと施設には来るが、本当は行きたくないという声があるからだ。こうして、利用者が進んで毎日来たくなる心地よい空間づくりが始まった。
トップライトから陽光が降り注ぐエントランスを進むと、左手の事務室越しに無柱の大空間である居間・食堂が見通せる。北側には海に向かってデッキテラスが広がり、南側の中庭からも陽が入る。隣接する事務室との間にも壁がないため、広がりの体感は実際の寸法以上だ。
9室ある個室は、利用者が部屋を選ぶ楽しみを持てるようすべてインテリアを変えており、浴室は海に向けて大きく開口されている。職員はフリーアドレス制により自席がないため、事務室のほか隣接する相談室と畳コーナーを使うこともある。だから自然に利用者との距離が近くなって目が行き届くのだ。
当施設は、利用者と職員の日常に自然が重なり、第二の家のような穏やかな空間となっている。
設計
株式会社梅原建設一級建築士事務所
施工
株式会社梅原建設 / https://ume-ken.com/