「道の駅 発酵の里こうざき」は、千葉県神崎町の国道356線と圏央道の交点に設けられた神崎ICに近接して建つ。
国土交通省の「重点『道の駅』」に選ばれた注目の施設であり、成田国際空港から千葉県内の観光地を結ぶ無料高速バスの経由地であったりもすることから、外国人観光客の集客も視野に入れた、多方面から集客が見込まれる施設である。
この施設で特徴的なのは「発酵市場棟」なのだが、神崎町の文化遺産でもある発酵文化を世間に広くアピールするために設けられたそう。
確かに千葉県は江戸時代から醤油などの発酵食品の産地として有名で、道の駅の周辺にも酒蔵や醤油屋が散見される。
この道の駅のデザインのアイデアは、そういった文化や歴史が背景にあることから、スタートしている。設計者であるランドアートラボの長嶋さんと清水さんは、この地域の歴史と文化のモチーフとして、大屋根をデザインのメインとして採用した。
歴史と地域性を感じるデザインで大屋根を用いるという事で考えられたのは木造だが、規模的には鉄骨造も候補に上がっていた。しかし、利根川沿いという立地もあり、地盤が強固ではない土地において、鉄骨造はどうしても重量化してしまい、杭の本数が増えてコストアップにつながる。
そこで、軽量である木造でありながら大規模建築も可能、鉄骨よりもコストバリュー感のあるSE構法を採用するという事になった。さらに、建築の用途としては飲食店や物販店であり、スパンを飛ばすという必要性からもSE構法は申し分のないスペックであったのである。
施設群の構成は、発酵市場棟、新鮮市場棟、コンビニエンスストア棟、レストラン棟、トイレ棟という5つの建物からなる。
トイレ棟以外は9寸勾配の大屋根で、内部から見てもその架構の美しさがよく分かる。SE構法としては梁のピッチはこれほど必要ではなかったが、デザインとしてこのピッチが決まったそうだ。木造である必然性はこういった個所にも表れた。
写真を見て頂ければ分かるがこれだけの大屋根を支えるのに柱はほとんどなく、棟木の成を大きくし、妻側の柱を扁平にしてその加重を支えているという事だ。
今事例は、構造性、経済性、意匠性というすべての面でパーフェクトにSE構法の良さを取り入れることが出来た例だと言える。
設計
株式会社ハウマックス / http://www.howmax.co.jp/
株式会社ランドアートラボ / http://www.lal.jp/
SE施工
株式会社第三商行 / http://www.daisan-net.co.jp/